宅配最大手ヤマト運輸の兵庫県尼崎市内の倉庫で勤務している男性従業員(55)が19日、熱中症対策が不十分だとしてストライキを行い、東京都港区の同社本社前で街宣活動した。勤務中には、倉庫内の気温計の針が40度を超えて振り切れた日もあったという。男性は加入する労働組合「総合サポートユニオン」とともに同日会見し、労働環境の改善や、ファン付き作業服の支給などを求めた。

◆熱中症疑いで倒れたドライバーに「不摂生」だと…

 男性と労組によると、倉庫内に空調設備はあるが、外気と区切るドアが全開の上、配達車は倉庫内でエンジンをかけたままのため、室温35度を上回る日がほとんど。6月には、あるドライバーが熱中症の疑いで倒れたが、適切な応急処置がされず、社側は原因を「本人の不摂生」と説明したという。男性も8月に熱中症の疑いと診断され、頭痛を抑えるために解熱鎮痛剤を飲みながら働いている。

ヤマト運輸本社前で街宣活動をする男性(左から2人目)。熱中症対策を求めてストライキを行った=19日、東京都港区西新橋で(七森祐也撮影)

 男性らは7月23日に会社側に団体交渉を申し入れたところ、翌日には気温計が取り外された。会社側は気温計は故障していて室温は最高でも36度だったと説明したという。団交の中で、室温のチェックや記録がなかったことも明らかになっている。

◆佐川急便は導入している「ファン付き作業服」を要求

 ストライキの通告書では、倉庫内で配達車のエンジンを切ることや、気温や熱中症の危険度を示す暑さ指数「WBGT」の記録、ファン付き作業服や首に巻く扇風機の支給などを求めている。男性は会見後の街宣活動で「身体を壊し、だましだまし働いている。社員の命にかかわる熱中症対策を少しでいいからまじめに考えてほしい」と訴えた。  ヤマト運輸広報は「コメントを差し控える」としている。  厚生労働省によると、昨年、職場での熱中症により31人が亡くなり、近年増加傾向にある。同省は、暑さ指数の把握とそれに応じた熱中症予防対策を実施することや、ファン付き作業服の使用などを推奨している。宅配大手の佐川急便は、ファン付き作業服を導入している。(竹谷直子) 

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