大都市圏を中心にスーパーからコメが消えるなど全国的にコメ不足の影響が出ています。コメを生産する岩手の状況はどうでしょうか?取材をすると岩手県内でもコメの生産現場や生産者に近い産直では異変が起きていました。


(都南乙部産直組合 藤原仁巳組合長)
「いつもだと、こういう感じで銘柄が・・・
(記者:もち米、ひとめぼれ)はい。ひとめぼれとか。
(すっかり今はない?)全くないですね」

盛岡市手代森にある都南乙部産直組合が運営する産直花山野は、果樹に加えてコメも主力商品ですが、2024年は5月の後半からコメの入荷量が落ちてきて、6月には例年の半分以下、7月には1/4以下になり、お盆期間中にはついに入荷がなくなりました。

この産直の組合員で果樹やコメを生産している藤原拓也さんは、関東方面の客からこんな問い合わせを受けたといいます。

(組合員・藤原拓也さん)
「おコメが足りないっていうお問い合わせいただいて、出してくれませんかって言われるんですけど。近所というか親戚とかに声かけて、おコメ余ってたら売ってくれないっていう話もして、何とか集めている感じですね」

生産者に最も近いはずの産直にコメがない。
花山野の藤原仁巳組合長は一つの可能性として、次のように述べました。

(藤原仁巳組合長)
「全国的には一等米比率が非常に落ちたというようなこともあって、
噂では他県に流れたんじゃないかとか。そういったことはあるようですが」

雫石町のコメ農家砂壁純也さんです。
農作業小屋には4トン弱の銀河のしずくの玄米が保管されていました。

(砂壁純也さん)
「これはもう全部、ここに書いてある通り、契約先に行くおコメですね」

砂壁さんが生産する銀河のしずくは、9割以上が観光ホテルや飲食店などとの契約で栽培されているもので、手元に在庫はありません。
それでも7月頃から岩手県外を中心に、契約先とは別のホテルや飲食店から大量にコメを買いたいという問い合わせが相次いでいるといいます。


生産者の中には想定以上のコメの県外流出があると考える人もいるようです。
それにはコメの品質が関係しているとみられています。
2024年9月末時点の令和5年産うるち米の一等米比率です。
岩手県は92.5%と全国でも2番目に高かったものの、全国平均は59.6%と前の年より15ポイントも下がりました。
特に西日本を中心に低い値となっています。
コメが不作だった地域でコメが不足するため、一時的に需給バランスが崩れているとみられています。


この影響で岩手のスーパーなどでもコメは不足してるのかというと、そうとばかりはいえません。

盛岡市内のスーパーでは18日、特売品のひとめぼれを多くの買い物客が手に取っていました。
コメ不足を背景に価格は10キロ3580円、去年の同じ月と比べおよそ10%上がっています。
それでも…

(買い物に来た女性は)
「ウチで食べ放題の孫がいるのでね。私はおコメが大好きなので。パンよりもおコメ、ご飯がいいです」

(買い物にきた女性は)
「おコメは子ども達もすごく食べるので。スーパーとかで安売り、特売のおコメを買うようにしてるので」
値段が上がっても、安定的な入荷を追い風に販売量は去年の1.5倍に伸びています。

(ユニバース盛岡南店 上山健一店長)
「一部でひっ迫している商品もございますが、岩手県産等については今のところ順調に入っております」



1日60トン前後の玄米を精米し、主に県内の米穀店やスーパーなどに卸している純情米いわてです。

純情米いわては秋のうちに、年間で結んだ取引契約を優先することで、新米が出るまで乗り切ることにしています。

(純情米いわて 営業部 半田部長)
「今年の在庫に関してはもちろん、9月までの新米切り替え時期まである程度販売の計画。あとは各取引先様が使うであろう量、数量であったりその辺ももちろん加味した上で、在庫の方は確保はしております。ただスポット的に話が来るところに関しては大変申し訳ないんですけどもお断りをしてるところもあります」

一方で精米を通して去年産のコメのある特徴を指摘します。

(営業部・半田隆之部長)
「いわゆる削る部分が多い。 要は暑すぎて、皮が厚いって言ったらいいんですか、要は削られる部分が多くてその歩留まりに影響してると」

保管していたコメを精米してみると、思ったほど製品にならない。
産直でのコメ不足の背景にはこんな事情も関係してると考えられます。

(スタジオに下りて、記者とキャスターのやりとり)
(キャスター)「盛岡市内のスーパーの売り場にはコメが潤沢にありましたね?」
(記者)「私が取材したスーパーではコメ不足の実態は見られませんでした。長期
   で取引契約を結んだところでは安定的な入荷を確保しているようです。
   また価格が上がっても販売量が伸びている背景には、先ほどお伝えした産直
   などでの入荷が滞っていることや、1食当たりの単価がパンや麺と比べてコメ 
   の方が割安だということがあるようです。
   岩手県内でも一部でコメ不足の影響が見られますが、新米が出回るまでの
   間、私たち消費者も冷静な対応をしたいですね」

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