シリーズでお伝えする「戦後79年」。終戦と共に始まった苦難の歴史があります。
旧ソ連軍によって57万人以上の日本人が連行され、強制的に働かされた「シベリア抑留」。抑留者となった父親の体験を本に記した女性と、その記憶を後世につなぐ高校生を取材しました。

<清水南高校 多田つむぎさん>
「セロハンで色を変えてやってみたんですけど、表紙はあんまり使わなくてもいいかなと思っているんですよ」

放課後、美術室で実験を行っているのは、清水南高校の多田つむぎさんです。多田さんの影絵は、ある物語の挿絵になります。

<玉音放送>
「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び…」

79年前の8月15日、日本は終戦を迎えました。終戦と共に始まったのが「シベリア抑留」です。

57万人の日本兵らが、シベリアの極寒の中、旧ソ連軍によって強制労働を強いられ、およそ6万人が命を落としました。

シベリア抑留を題材にして描かれたのが「シベリアのバイオリン」。主人公は、静岡市に住む窪田由佳子さんの父親です。窪田一郎さんは、17歳で満州に渡ったのち、戦後3年間、シベリアで抑留生活を送りました。

<窪田由佳子さん>
「父が書いたものです。亡くなるちょっと前だったと思います」

『腹が空きすぎて、みんな理性を失っていく』。一郎さんは、劣悪な環境の中で働かされた抑留生活を綴っていました。

<窪田由佳子さん>
「ロシア兵に捕らえられて、何日も何日も歩かされた。そのときにそこで体力が尽きて倒れていくとそこで死んでいくしかないんだよ。その人たちが助けてくれとか、お水くれと言っても誰も助ける余裕がなかったよと」

しかし、希望を捨てず電気のコードや馬の毛などの廃材を利用し、こっそりと大好きなバイオリンをつくり、やがて楽団が生まれたのです。

<窪田由佳子さん>
「これはバイオリンを弾いて聞かせているところでしょ?馬がいるのは多田さんにとって馬が聞いているという設定にしたいのかな」

<清水南高校 多田つむぎさん>
「物語に馬のしっぽから弓の毛を取るというシーンがあって、そこを入れるのは重要なことだったのかな」

<窪田由佳子さん>
「食器は空き缶なんです。皆さん、想像してみてください。空き缶でご飯を食べる。そんな状況を強いられたわけですね」

窪田さんは、父の体験と記憶を多くの人に知ってほしいとピアノ講師の傍ら、講演活動も行っています。

<窪田由佳子さん>
「お邪魔します。こんにちは」

父・一郎さんの体験を絵本にすることが決まり、清水南高校の多田つむぎさんが挿絵を担当することになりました。

美術部のメンバーも手伝います。

<清水南高校 平松美沙希さん>
「絵本なので、文字だけじゃなくて絵からも情報が得られるようなわかりやすい絵にしたいなと思います。なので細かい作業も頑張ろうかなって思っています」

16枚の挿絵が完成し、撮影会が行われました。表紙を飾るのは、シベリアの世界に浮かぶ希望のバイオリンです。


<清水南高校 多田つむぎさん>
「バイオリンは今も昔も形が変わらないという話が出て、シベリアに出てくる風景を出していって、主人公が成長して時が経ってもこのバイオリンは形が変わらない1つなんだ」

<出版社地湧社 植松明子社長>
「直に体験した人が語る言葉は強いんですけれども、それをどう受け止めてどう伝えていくか、これからはそこが大事になってくるので、その役割をものすごく果たしてくださっていると思います」

<清水南高校 多田つむぎさん>
「テレビとかで違う国で戦争・内戦が起こっているというのを聞いて、聞き流しているのかな。今日本にとっては非日常かもしれないんですけど、必ずしもそうじゃないということを感じています」

<カメラマン>
「良いかも。良い良い良い!すばらしい。これだ」

<窪田由佳子さん>
「すごく読み込んで思いを熟成させて作品として発表してくれた。若い人が戦争と向き合ってくれたんだなという感じがしてすごくよかったなと思います」

戦後79年。平和のバトンが、受け継がれていきます。

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