家族みんなで集まる「お盆」。

沖縄の不動産専門のファイナンシャルプランナー、友利真由美さんは、家族・親戚が集まるお盆にぜひ話してほしいことがある、と言います。それは「相続」についての事前確認です。

「相続」でもめないために

友利)私は不動産相続の専門家として色んな相談を受けていますけど、もめてしまう相続の特徴は、家族間で相続について話す機会が少なかった、確認が取れていなかったということ。これが本当に大きな部分を占めるんです。もめて兄弟でも連絡も取り合わない仲になってしまった、という方も本当に多い。

資料 旧盆に集まった親族

でも、そんなことのためにご先祖様は財産を残していないわけです。「みんな仲良く」「何かあったら使いなさい」という気持ちで残している。それをちゃんと私たちが受け継ぐ、もめないことは非常に大事。そこでもめないために今やってほしいこと、家族が集まってるタイミングでやってほしいことを3つご紹介します。

まず「相続人の確認」。2つ目に「相続財産の内容の確認」。3つ目に「どう分けたいか」という確認。この3つです。

協議後に「相続人」が出てきたら“やり直し”

まず「相続人の確認」は、一般的な家庭でいうと、配偶者、夫、妻、子が相続人、民法で決められた相続人となります。ただ家庭によって色々な事情がありますので、複雑な家もあります。よくあるのが「再婚」。前の結婚でそこにも子どもがいたというご家族だと、前の結婚で産まれた子も相続人になるんです。

例えば夫側が1回目の結婚で子どもが2人いて、2回目(今)の結婚で子どもが2人いますという場合。その夫の相続人は1回目の結婚の子ども2人と、今の結婚の配偶者と今の子ども2人、の5人になります。

離婚したからといって、子どもを自分が引き取る・引き取らないに限らず、子は相続人に入りますので、相続の現場で色々考えるときに、前の結婚の子どもを相続人に入れないで、今の自分たちの家族だけが相続人だよね、と考えてしまうと、後々で相続の遺産分割協議がまとまったあとに、「私たちも実は相続人なんですよ」と出てきたら、遺産分割協議をまたやり直ししないといけなくなるんですよ。

ー何か月もかけて協議しても?

そう。だから事前に分かっているほうがいいので、集まったタイミングで、前妻・前夫がいる場合は、どういった人で、今連絡が取れるのか、今どこに住んでいる?などが確認できれば…

ー聞きづらいですね!

でもこれを聞いておかないと、後でもめます。当事者の方は本当に、確認してください。お盆以外の時期でもいいですが、(聞いておかないと)そういうトラブルになる可能性があることは認識していただきたいです。

にぎやかなお盆中には聞きにくいかもしれないが…

あとは「養子縁組」です。戦後の色々な状況で、ご家族・身内で、養子縁組をカジュアルにしている時期がありまして、知らないうちに自分のお父さんが誰々の養子になっていたとか、逆に誰々さんを養子に入れていた、といったこともあるんです。なので、養子縁組を確認してほしい。戸籍謄本とかで確認できる。これも、相続がいざ発生したときに、「もう1人いたよ」、となったら協議がやり直しになるんですよ。この人を無視して物事を進めることはできません。

養子縁組をしていて名前や連絡先が分かるのであれば、事前にメモしておいて、いざとなったらすぐに連絡できるようにしておいていただけたらと思います。

ー皆集まっているときは確認しやすいですね

「そういえば(相続人になる人が)いたよね」という話、できるよね?皆大人だから(笑)。もめないために聞く、という大前提で、確認するようお願いします。

財産の確認は“ざっくり”でもいい

次が2個目。相続財産の内容。「いくらある?」という具体的な確認でなくてもいいです。口座はどこにある?とか、保険には入っていた?とか。あとは不動産はどういうものがある?とかですね。

大体、固定資産税の納税通知書で確認ができたりするんですけども、まれに共有名義になっている不動産の場合は、別の共有の人のところに固定資産税の納税通知書がいっていて、自分で把握してないというパターンもあったりしますので、こういうのも聞いてみる。「ほかにある?」と聞いたら、「そういえば離島にもあったかも」「おじいの名義のままの土地があるかも」といったことになってくるので、そこから確認できるので、まずは聞いてみる。

どう分けたいかは「共通認識づくり」が大切

3つ目は、一番大事。「どう分けたいか」。よくあるパターンが、親は、例えば子どもが3人いたら皆かわいくて、それぞれに「あなたに全部あげる」と皆に言ってしまっているパターン。そしていざ亡くなって相続が発生したときに、「えっ、お父さん、自分に全部あげると言っていたけど」と皆が言う。そして混乱することがあります。親は子どもが皆かわいいから、あげたい気持ちがあるかもしれませんが、そう言ってしまうともめ事のタネになってしまいます。

亡くなった人が「あなたにあげる」と皆に言っていることも…

なので家族ができるだけ集まっているタイミングで、「この家(家屋)をどうしたいと思ってる?」などと聞く。もらう側も、自分はいらないとか欲しいなどあると思うので、この家は誰に、あの土地は誰に、預金はどうする、残りは…と共通認識を持つことがとても大事です。

ー子どものライフプランもあるから、話しておくことは大事ですね

なかなか話しづらい、ハードルが高いということはあると思いますが、「ラジオで聞いたんだけどさ」とでも話のきっかけを作ってもらいたいです。もめることが一番のデメリットなんです、相続というのは。

もめたら家族・兄弟の縁すら切れてしまう。本当に悲しいなと思う。そうならないために、「相続人の確認」「相続財産の内容の確認」「どう分けたいか」、この3点の確認は、必要最低限大事なこととして、ぜひ集まるタイミングで話題にしてもらえたら。「うちは大丈夫だと思うんだけど、一応聞いておこうね」という感じで!

この3つのポイントは、ファーストステップです。一番いいのは遺言書を書いてもらうことですけど、なかなかハードルが高いので。その前の段階の確認をしてみてください。

友利真由美さん(不動産専門FP/ 株式会社エレファントライフ代表)



談:友利真由美さん(不動産専門FP/ 株式会社エレファントライフ代表)
(RBC iラジオ「アップ」8月12日放送 より)

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