同性カップルだと、賃貸物件を借りるのに“ハードル”があるといいます。なぜ、同性カップルを断るのか、都内の不動産管理会社を取材しました。

同性カップルはルームシェア扱いで拒否…

東京・新宿の不動産会社にやってきたのは、付き合い始めて5年の同性カップル、健太さん(27)と大輔さん(30)です。

健太さん
「ほぼ毎日料理を作っているので、キッチンまわりはやっぱり気になりますね」

家賃が2人で1か月13万円以下で、1LDKの物件を狙っています。

2人は、2年前に東京・北区で「パートナーシップ」を宣誓。日本では同性カップルの「結婚」が認められていないため、自治体が独自に認める制度です。

健太さん
「日本だとまだ同性同士の結婚というのが認められていないので、結婚に準ずる形のパートナーシップを(宣誓)させていただきました」

大輔さん
「やっぱりなにか形になるものがほしいなって」

ただ、自治体独自の制度には限界も…

気に入った物件があったものの、管理会社に“契約したい”と電話で確認してみると…

GAMO不動産 松本 悠葵さん
「お客様なんですけれども、男性お2人でお付き合いをされてる方でして、パートナーシップを結ばれてる方なんですけれども」
管理会社
ルームシェアだとNGなんですよね~」

GAMO不動産 松本さん
「それは『同棲』にはならないんですか」
管理会社
「難しいところなんですよね」

同性カップルが一緒に住むことは他人同士の“ルームシェア”という認識になり、この物件は契約できないというのです。

GAMO不動産 松本さん
「それって、男女カップルならOKなんですか」
管理会社
婚約者(ならOK)ですね」

GAMO不動産 松本さん
「パートナーシップは婚約しているみたいな判定にはならない?」
管理会社
「ちょっと取り扱いが難しいので」

健太さん
「やっぱりどこもそうですよね」

なぜ?「別の夫婦で決まった」

同性カップルにつきまとう“部屋探しの壁”。
東京・世田谷区に住む29歳の同性カップルは、入居の審査すら受けさせてもらえなかったうえ、“ある言葉”に絶望したといいます。

東京・世田谷区在住 29歳
「同性カップル、特に男性同士は『イレギュラーで受け入れた経験がない』ということで、何件かお断りをされてしまったという状況です」

「同性カップルっていうだけで、そもそも審査の土俵に乗れないっていう厳しい現実をそこで初めて知りまして、すごくちょっと絶望というか…」

さらに、こんなケースも…

気に入った物件の審査は通過。不動産会社から「数日で契約に進めます」と連絡を受けていたのですが、その後、まさかの事態に!

東京・世田谷区在住 29歳
「自分たちの場合は2、3週間くらい連絡が全くこなくて、こっちから催促した時に『実は別の夫婦の入居決まったそうです』と言われました」

物件のオーナーは、後に申し込んだ男女の夫婦を入居者に選んでいたというのです。

こうした“部屋探しの壁”に直面し、1人で住む契約を交わしたうえで、大家に内緒で2人で住んでいる同性カップルもいます。

なぜ断る?管理会社を直撃

なぜ、同性カップルを断るのか。Nスタは、都内の不動産管理会社を直撃。

取材した会社では、過去の経験から“ネガティブ”に捉えているといいます。

都内の管理会社
「同性同士、友達同士ってなってくると、すぐどっちかが出て行ってしまうケースがあるので、それを良しとしないオーナーさんも結構まだいらっしゃるので」

――オーナーが(判断する)っていうことですか?

「オーナーさんもそうですし」

実は、仲介する管理会社の事情も大きいようで…

都内の管理会社
「個人的な感情を持ち込んで後々トラブルになったら、自分が苦労しなきゃいけないっていうのがあるので」

――同性カップルでパートナーシップ結んでいますって関係ないんですかね?

都内の管理会社
「そう言われたって、ウチが嫌だったら他を借りればいいじゃんっていうスタンスをもつ人間もいるんですね」

同性カップルに立ちはだかる大きな壁。なかなか理解が進まない現状に、大輔さんは…

大輔さん
「婚姻制度ってなると、法的な拘束力っていうのが出てきてパートナーシップとは格段に(部屋探しのしやすさが)違うと思うので、やっぱりそういうハードルがなくなって…男女の異性カップルと変わらない扱いになるのかなっていうのは感じましたね」

利用しづらかった人と“不動産会社をマッチング”

山内あゆキャスター:
今回取材した不動産会社では、二人が入居可能な物件の場合、家族・兄弟・夫婦など、法的な関係性のある人の方が契約に結びつきやすく、同性カップルの場合は審査に通らないこともあったということでした。

そして、パートナーシップ、つまり結婚に準ずる宣誓をしていたとしても、オーナーの意向で断られてしまうケースもあるということです。

ただ、こうした中、同性カップルでも部屋を借りやすく、という動きは増えてきています。

不動産情報サービス「ライフルホームズ」が運営している「FRIENDLY DOOR」というサービスがあります。

ホームページでは「外国籍フレンドリー」、「高齢者フレンドリー」、「シングルマザー・ファザーフレンドリー」などが選択でき、「探す」というボタンがあります。

つまり、今までいろんな理由で賃貸が利用しづらかった人を不動産会社とマッチングするものです。

この中の一つに「LGBTQフレンドリー」というものがあり、情報掲載数は全国で約3700店舗です。

「探す」ボタンをクリックすると、全国の地域が出てきます。地域をさらに選択すると、LGBTQフレンドリーな不動産会社を見つけられるというシステムになっています。

さらに、不動産会社「IRIS」は、首都圏や関西を中心に、過去5年で2300名以上のLGBTQ当事者が相談に訪れ、契約にも結びついているそうです。

不動産会社「IRIS」 代表取締役CEO 須藤啓光さん
「不動産業者の中でも、現状を知らない人がまだまだ多い…」

前提として「属性で人を見ない」

井上貴博キャスター:
民間企業も、自治体も、確実に取り組みが進んでいて、とてもいいことだと思います。

ただ、どうしても法律などを考えると、「結婚」というものが異性間でしか認められていない。そこで多くの方々が不自由な思いをされる。でも、何か特別なことを求めているのかというと、全然そんなことない。求めているのは、住まいも、相続も、各種サービスも、当然の権利です。当然の権利があって当たり前なのでは、と思います。

田中ウルヴェ京さん:
そう思います。婚姻制度においては、それこそ「異性カップルと何が違うんですか」、としっかり冷静に論じてみようとすれば、何も変わらないことになるわけですよね。そこは議論の対象に絶対にしなければいけない。

やはり気をつけたいことは、属性で人を見ないということですよね。「女ってこうだよね」、「日本人ってこうだよね」と一緒で、例えば、「LGBTQの人ってこういう人でしょ」じゃない。1人1人が違う。行動で違う人もいるかもしれないけれども、同じ属性でいるわけで、やはり属性で見ないを前提として、何ができるか考えたいですよね。

ホラン千秋キャスター:
部屋を貸す側も、LGBTQの方、高齢者の方、外国人の方がリスクと言ってるわけではないんですけれども、様々なトラブルを避けたい、安定的に部屋を貸したいなどがある。なので、オーナーとして決めなければいけないところは決めない、という現実もあると思います。

どうしたら、トラブルやオーナーが感じているリスクを気持ち的に減らしていけるのかシステムを作らなければいけない。

いろんな調整がまだまだ必要だと思いますけど、最終的にはそれぞれが自分たちらしく生きられるような世の中を整備してほしいです。そういう整備を国に求めたいですね。

<出演者プロフィール>
田中ウルヴェ京 スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶応義塾大学特任准教授
アスリートの学び場「iMiA(イミア)」主宰

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