北海道の演劇界の「レジェンド」として知られている舞台俳優・斎藤歩(あゆむ)さん。
ステージ4のガンを患いながらも、舞台に立ち続けています。彼の「演劇人」としての生きざまが、そこにありました。
斎藤歩さん
「最近、報道で『余命宣告』って言葉がすごく先走り始めて、お医者からは半年ごとに言われてるんですよ、『余命半年です』って」
自身の余命を笑う男性。斎藤歩さん。59歳の舞台俳優です。
斎藤歩さん
「ご存じのように『末期がん』ということを言われてまして、今4種類目の抗がん剤の投与を毎月やっていて」
ステージ4の「がん」と診断されたのは、3年前。
「このままだと余命半年」と宣告を受けたのは、去年の1月です。
それでも舞台に立ち続ける斎藤さん。
この日は、朗読劇のシリーズ企画『「百年」を爪弾く』のリハーサルです。
出演するのは、斎藤さんの妻であり、同じく俳優の西田薫さん。
斎藤さんは、演出を担当します。
妻の西田薫さん
「(ちょっと音楽聞かせて)それから数日後に、『一緒に死のう』と榊さんに言われた」
斎藤歩さん
「人間性っていうかなんて言うか、もう少し(読み方に)余裕があると良いんだけどね」
妻であっても役者として。
どんなことにも手を抜かない、それが彼の「演劇人」としての流儀です。
大学時代に演劇の世界に足を踏み入れてから40年。
映画やドラマにも多数出演し、北海道の演劇界の「レジェンド」と呼ばれてきました。
舞台が終わった翌月、斎藤さんの姿は、病院にありました。
斎藤歩さん
「(前取材した時は)こんなに生えてないよね、や、そうなんだよ、あれから急激にさ、毛も生えてくるし、抗がん剤ってすごいね、急激に解き放たれた感じ」
舞台の前は中止していた抗がん剤治療。また、治療が始まります。
斎藤歩さん
「これはまだ抗がん剤じゃないんだよね、ひどい抗がん剤だとここに「毒」って書いてあるんだよね。ほんとだよ」
当初、「尿管がん」と診断されましたが、詳しい検査で、ステージ4の「尿路上皮がん」とわかりました。
治療に専念したいところですが…退院後には、すでに2本の舞台出演が決まっていました。
斎藤歩さん
「6月にやる方(舞台)は全然大丈夫だと思ってるの。もう一本がね、出たことがない再演なの。演出だけをずっとやっていて、もう20年くらいやってるんだけど、主役がいるんだわ、それを俺がやらなきゃいけないなって話をして」
7月に控えていたのは、札幌市電の停車場を舞台にした「西線11条のアリア」。
斎藤さんが演じるのは、停車場に留まる若者たちと「不思議な」体験をする、サラリーマン役です。
斎藤歩さん
「次から次にやってくる若い、おかしな相手しないといけない、そういうお芝居、俺がやってるのを観たいって仰るからさ、もうしょうがない、やるんだけどさ…」
先月、札幌で8日間にわたって行われた「西線11条のアリア」。
舞台は、まだ市電がループ化する前の札幌です。
斎藤さんが演出を手掛けた作品に、今回初めて本人も出演します。
この舞台のテーマの一つは「死」。
事故や病気などで亡くなった若者たちが、真冬の停車場に炊飯器を持ち込み、「最後の晩餐」としてご飯を食べるちょっと変わった物語です。
斎藤さん
「偉い人とか有名な人が死ぬと『わ~』となるけど、偉くない人が死んでも別に、中には家族も誰もいない人がいて、そういう人が死んでもお葬式もされない訳でしょ、そういう人もいて、でも生き死にがあって、そういうのを書きたかったのかな」
19年前、人の生き死にを描いた作品。
病を患いながらも、自身の運命を受け入れて歩き続ける斎藤さんが演じます。
しかし…世間は、このまま逝かせてくれません。
すでに11月までスケジュールが埋まっています。
斎藤歩さん
「酷いよね、病人にさ『(舞台を)やれやれ』ってさ、残酷な街だよ札幌は」
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