パリオリンピック™に出場する、男子マラソン赤﨑暁(あかさき あきら)選手(26)のモットーは楽しむこと。

楽しむために強くなる。それを教えてくれたのは父でした。

「マラソン界の父」に続く “100年ぶり代表”

去年10月に行われたMGC=マラソングランドチャンピオンシップ。上位2人がパリオリンピック代表となるレースで2位で切符を掴んだのは、熊本市の開新高校出身、赤﨑暁選手(26)でした。

熊本県勢としては、日本マラソン界の父といわれ世界記録を3回更新している金栗四三(かなくり しそう)以来、100年ぶりのマラソン代表です。

この100年という数字には本人もピンと来ていない様子。

九電工 赤﨑暁選手(26)「100年ぶりと最初聞いた時はちょっと分からなかったですけど、本当にすごく光栄なことだとは思っています」

そんな赤﨑選手、いまや日本のトップ選手ですが、本格的に陸上競技を始めたのは高校からでした。

高校時代の恩師が語る「赤﨑暁

赤﨑選手は中学時代まではバレーボールをしていましたが、熊本市の開新高校の恩師・木村龍聖(きむら りゅうせい)監督に声をかけられ、3年間競技に打ち込みました。

赤﨑選手「いま思うと競技面だけではなく人間性もしっかり成長できたと思うので、高校3年間陸上をしっかりやってよかったなと思います」

木村監督は赤﨑選手の強さについてこう分析します。

開新高校陸上部 木村龍聖 監督「本当に勝気な性格で負けず嫌いな所がありますので、それが今、マラソンの結果にもつながっているのだと思います」

開新高校陸上部 木村龍聖 監督

社会人として更なる成長へ

高校卒業後、東京の拓殖大学では4年連続で箱根駅伝を走った赤﨑選手。九電工に入ってからは競技への意識が変わりました。

赤﨑選手「社会人になって一人の大人としてしっかりと自分で考えたうえで行動しなければいけない責任がついてくるので、自分のやり方を見つけた上で着々としっかり力はついてきたのかなと思います」

その九電工の綾部健二(あやべ けんじ)総監督は、持ち味のスピードにより磨きをかけた赤﨑選手に期待を寄せます。

九電工 綾部健二 男子部総監督「スピードタイプの選手がしっかりスタミナもつけてきた。今後良いタイムを出すんじゃないかなと」

モットーは父親譲り?

赤﨑選手の地元、熊本県大津町からも大きな声援が送られます。

大津町民「100年ぶりの県勢でマラソン代表でみんな大喝采ですよ」
「金栗さんが出来なかったことをぜひ達成してほしい」
子ども達「赤﨑選手 オリンピック頑張ってください」

その期待に応えたい赤﨑選手のモットーは“レースでも楽しむことを大切にする”こと。その原点は、現役の市民ランナーでもある父・俊文(としふみ)さんです。

小学生時代一緒に走った思い出のランニングコースで話を聞きました。

父 俊文さん「この直線がラストスパートの練習。高架を越えたらゴール。『高架を越えるまでは気を抜くな、手を抜くな』とわざと同じ速度で並走して、最後は勝たせる」
――最後に勝たせる意味は?
俊文さん「勝ちを味わわせること。絶対に負けないという気持ちを持たせるために、わざとぎりぎりまで競って最後に追い抜けと」

このインタビューを聞いた赤﨑選手は?

赤﨑選手「わざと負けているとは正直知らなかった」

そんな父・俊文さんのモットーもやっぱり「楽しむことが一番」。

赤﨑選手「楽しむためには強くならなきゃいけない、勝つことは嬉しくて楽しいと思えるので、父なりのアドバイスが強くしてくれた」

息子への愛が詰まった実家の光景

父の教えがあったからMGCで2位になれた――。

赤﨑選手の実家には、息子のパリ五輪出場を報じた新聞記事がずらりと並びます。

――MGCは何回くらい見た?
俊文さん「20回くらいは見た」

母・貴子さん(左)と父・俊文さん(右) 

親にとっては、何度でも見たいあのレース。俊文さん夫婦は再びMGCの録画を見返しました。国立競技場に帰ってきた息子に声援を送るレース終盤の様子です。

(実況)『川内と大迫が赤﨑暁の背中を追いかけています。大迫追いかける!赤﨑が逃げる!』
(解説)『赤﨑選手もラストスパートが非常に強い自信を持った選手ですから』
・・・
(実況)『2位で入ってきたのは九電工の赤﨑 赤﨑も夢を叶えた パリ五輪内定――』

ゴールの瞬間、母・貴子さんは画面を見ながら涙を浮かべていました。

父・俊文さん(左)と 母・貴子さん(右)

“楽しみながら”五輪の舞台へ

息子は初めての海外旅行もプレゼントしてくれました。

貴子さん「一生に一度かなと思っている。海外なんて一生いかなかっただろうし、良い経験をさせてもらおうと思う」
俊文さん「五輪の代表権ももらったのだから、せっかく出るからには本人がモットーとしている“楽しむ”、楽しんでベストを出してほしい」

両親の思いも力に変え、いざパリへ!

赤﨑選手「いろんな方々のサポートや後押しで夢を叶えてこの場所に立っているので、楽しみながら走っているところを皆さんに観てもらえたらいいのかなと」

パリ五輪男子マラソンは、日本時間のきょう(8月10日)午後3時に本番を迎える予定です。

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