東京高裁判決後の記者会見で「最高裁に向けてあきらめない」と英語で話すジョンソンさん(左)=東京都内で(加藤豊大撮影)
◆在留外国人は対象外、最高裁の判例を踏襲
松井英隆裁判長は判決理由で「政治判断により、限られた財源の下で自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許容される」と述べ、在留外国人を生活保護法の適用外とする最高裁判例を踏襲。「生活保護法が一定の範囲の外国人に適用される根拠はない」と指摘した。 原告側は控訴審で「少なくとも住民票を有するなどの一定の外国人には保護を認めるべきだ」と主張したが、判決は「外国人を公的扶助の対象とするかは立法府の幅広い裁量に委ねられる」と退けた。◆重病による在留資格変更で就労禁止、生活保護も却下
判決後に記者会見したジョンソンさんは英語で「とても悲しいニュース。最後まで闘い続ける」と述べ、上告する方針を示した。 ジョンソンさんは2015年に来日し、19年に重度の腎不全に。在留資格が療養目的の「特定活動」に変わり就労が禁止されたため、21年に千葉市に生活保護申請したが、却下された。 「今は何と言っていいか分からない」。ジョンソンさんは、会見で落胆をあらわにした。判決後、会見する(左から)奥貫教授、及川弁護士、ジョンソンさんら=東京都内で(加藤豊大撮影)
◆人工透析が欠かせず不安の日々
週3回の人工透析が欠かせず、医療や社会保障が不十分な母国には戻れない。1月の一審判決後も支援団体のサポートを受けながら千葉市のアパートで1人暮らしを続ける。体調不安は消えず、5月には肺炎で1カ月間入院した。 救済を司法に求めて訴訟に踏み切ったが、1審に続いて2審の東京高裁からも生活保護の対象外と判断された。「支援者の皆さんに感謝しています。(最高裁に向け)あきらめることはない」と声を振り絞った。 代理人の及川智志弁護士は「命が懸かった問題なのに(高裁は)悩んだ形跡がない。機械的にこれまでの判例を踏襲した冷酷な判決だ」と厳しく非難。「ジョンソンさんは長く日本で暮らし、住民票もあり国民健康保険にも加入している。私たちの隣人が命の危機にひんしているのに、なぜ見捨てるのか」と憤った。◆生活保護法に国籍による線引きは「特殊」
訴訟で在留外国人を生活保護の対象とするよう求める意見書を出した昭和女子大の奥貫妃文(おくぬきひふみ)教授(社会保障法)も「他国と比べ、生活保護法に国籍の線引きがある日本はかなり特殊だ。日本が批准し、社会保障における国民と在留外国人の平等をうたう難民条約とも矛盾する」と批判した。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。