クマ対策に向き合ううちに新たな魅力を発見。かつてクマに悩まされた札幌市の滝野すずらん公園が逆転の発想で前に進んでいます。

滝野管理センター 今井健太さん
「トンボ発見です」

この森には、800種類以上の昆虫がいます。野生動物も、20種類以上。

滝野管理センター 今井健太さん
「今これ目の前に実ができている。オニグルミですね。リスはこれを半分に割って中をかじる。ネズミは横に穴を空けてかじる。食べたあとで何の動物かわかる」

 札幌市の滝野すずらん丘陵公園。市民や観光客でにぎわいます。

 「森」のゾーンは、隠れた人気スポットです。安全に楽しんでもらうため、力を尽くしているのが、クマ対策です。

学生
「クマがどれくらい出ているのかと具体的な対策について聞けたらなと思っています」

札幌藻岩高校の生徒が、クマ対策を学びに来ました。

 滝野管理センター 今井健太さん
「母親が(外に)出ようとして子どもが見ている。何か音がして2頭とも振り返る」

公園には、過去に何度かクマが侵入しています。最初は「恐怖でしかなかった」という今井さんですが「知る」ことで、冷静に対処できるようになったといいます。

 滝野管理センター 今井健太さん
「見てるだけじゃだめだと。調査に参加させてくださいと専門家について行かせてもらった。一概に『クマだから危ない怖い』ではなくてシチュエーションごとに判断が変わると知った」

どうしても公園に入りたい、「クマ側の事情」も知りました。繁殖期のオスは、メスが連れた子どもを攻撃することがあります。

2019年、専門家は、母親が子どもを守るために公園を「駆け込み寺のように利用した」と指摘しました。

 滝野管理センター 今井健太さん
「あれがクマ柵」

出没のたびに原因を調べ、対策を強化してきました。

滝野管理センター 今井健太さん
「電気柵が上の針金みたいなやつ」

フェンスに沿うように、公園のまわりに、電気柵を設置。総距離は24キロにも及びます。

さらに、木を登って乗り越えられないよう、鉄板を巻いたり、下から地面を掘られないように、鉄のピンを刺したり。

積み重ねの成果で、この4年間は、クマの侵入はありません。

 学生
「自分が思っているより徹底的に、いろいろなことに取り組んでいると知りました」
「安心できるなと思いました」

 万が一の侵入に備え、センサーカメラも設置。その数、419台。

このカメラ、思わぬ「宝物」をもたらしました。

クマ対策のために設置したカメラが、魅力発見の機会にもなりました。

たくさんの野生動物の、なかなか見られない姿が写っていたのです。

滝野管理センター 今井健太さん
「知らない発見がたくさんあったので面白いなと」

 まんまる?おしりの主は、エゾタヌキ。

エゾリスはキノコを発見!ぽきっ!持って帰りました。

ユキウサギって、こんなに足が伸びるんだ~!そんな発見を、SNSで公開したり、公園で展示したりしています。

発信は、「魅力」と「クマ対策」がセットです。

滝野管理センター 今井健太さん
「(公園の外に)クマがいるからダメとは思わない。それだけ自然が豊かな象徴。だけどぼくたちにとっての線がある。線を超えてきたものに対する対策はしなくてはいけない。クマのトラブルを抱えているところだからこそ発信できること、説得力があることがある。逆に発信しなくてはいけない」

自然に向き合うと、知らなかった面白さに、次々出会えます。

滝野管理センター 今井健太さん
「あそこにカタツムリがいる。サッポロマイマイというカタツムリ。天敵が地面にいる虫なので(木の)上まで登って逃げている。もう1個エゾマイマイっていて殻をふりまわして敵を追い払う。戦うカタツムリと逃げるカタツムリがいるんです」

たくさんの命を育む、豊かな自然を、どう安全に楽しむか。

クマ対策は、そのための一つのステップです。

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