神戸市の「甲南医療センター」の26歳医師が、2年前に過労自殺した問題をめぐり、遺族が病院側に損害賠償を求めている裁判。初弁論で遺族は、改めて医師の労働環境改善を訴えました。


《時間外労働200時間以上、100日休日なし》

 2022年5月、神戸市東灘区の「甲南医療センター」の消化器内科の専攻医だった高島晨伍さん(当時26)は、自宅で自ら命を絶ちました。

 西宮労働基準監督署の調査では、晨伍さんは、▽自殺までの1カ月の時間外労働が200時間を超えていたほか、▽自殺した当日まで休日なしの100日連続勤務だったことが判明。

西宮労基署は過重労働が自殺の原因だったとして、労災と認定しました。

《初弁論母親が悲痛な陳述》

 晨伍さんの両親は今年2月、甲南医療センターの運営法人「甲南会」と、具英成院長に対し、過重労働を認識していたのに是正措置をとらなかったとして、約2億3400万円の損害賠償を求め提訴。

 4月22日に大阪地裁で行われた第1回口頭弁論で、母の淳子さんが、時に涙をこらえながら意見陳述を行いました。


母・淳子さんの意見陳述
「晨伍が命を絶った令和4年5月17日、警察が撤収し深夜に残された家族3人、私たちは床に膝と手をつき呆然とするばかりでした。専攻医になり職責に邁進していた晨伍が、26歳で過労死被害者になるとは思いもよりませんでした」

「晨伍は生前、『優しい優しい上級医になりたい』とあえて優しいを二回繰り返しました。それを聞いて喜んだ母親の私に見せた、晨伍の照れた笑顔とその幸せなひとときが忘れられません」

「今まで当事者の医師らが気づきながらも見ることを避けてきた医師の労働環境改善は、直ちに行わなければならない問題で、これ以上放置することは、新たな医師の過労死の犠牲者を増やし続けます」

「晨伍が身を賭して投げかけた医師の労働環境の改善のために、この裁判が確固たるマイルストーンになることを切に願います」


《「在院時間=労働時間という前提は成り立たない」甲南会側は反論》

 一方、「甲南会」側は答弁書で、
▽晨伍さんに課した業務は、専攻医1年目として標準的な量かそれ以下である。
▽専攻医については在院時間=労働時間という前提は成り立たない。在院時間には、『専門医』になるための研修プログラムに取り組む時間が含まれる。
▽100日連続出勤も晨伍さんの自由意志に基づくもの。などと主張。

「自殺を予見することは不可能だった。むしろ、予見可能だったのは原告らのみだった」などとして、訴えを退けるよう求めました。

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