あなたは原爆「肯定派」? それとも「否定派」?
アメリカの高校生8人が、原爆肯定派と否定派に分かれてディベートする物語「ある晴れた夏の朝」。
原爆の是非をめぐって、日系、ユダヤ系、中国系、アイルランド系…さまざまな背景をもつ高校生の男女が意見をぶつけ合います。
討論が深まるにつれ、「肯定派」はなぜそう考えるのか。真実は?誰のどんな思惑で?次々に疑問がわき、考えを深めていくことになります。
2018年、偕成社から出版された小手鞠るいさんのこの物語を原作とした舞台が、8月2日、岡山市北区の岡山芸術創造劇場ハレノワで上演されました。
小手鞠さんは、「アメリカの高校生が繰り広げる討論を日本人俳優が日本語が演じる。これは、劇団うりんこが見せてくれる『ある晴れた夏の朝』の奇跡」だとコメントしています。
日本人が「原爆肯定派」を演じる難しさは?
「肯定派」の立場をとるアイルランド系アメリカ人、ノーマン・ブライアンを演じるひろ~みさんです。
ー日本人として、原爆「否定派」でありながら「肯定派」を演じる難しさは?
(ひろ~みさん)
「肯定するのは難しい。肯定するってどういうことなんだろう。そういう考えに至るアメリカ人ってどんな人なんだろうと考えることを積み上げていきました」
「土台にあるキャラクターの背景。僕たち日本人が受けてきた教育とは違う教育を受けてきたアメリカ人を知ることから、『肯定派』を理解し、納得するところまではきました」
「でも、個人としては、肯定はできない。その気持ちを、(演じるときには)なるべく消すように心がけています」
ー理解を深める中で、どんな気づきがありましたか?
(ひろ~みさん)
「太平洋戦争を終わらせたいという気持ちが、当時のアメリカ人の中にあって、原爆投下が戦争を終結に導いたということで『肯定』ということになるんだろうなと」
「戦時中、日本人の中にも『戦争はいつ終わるんだろう』という気持ちはあったと思うけど、情報が統制され、ある意味洗脳のような状態だったのではないかと感じました」
「否定派」…でも、「肯定派」の相手をまず知ることが大切
「否定派」の日系アメリカ人、メイ・ササキ・ブライアンを演じる田中琴弓さんです。
ー日系とはいえ、まったく違う環境で育った女性。どのような役作りを?
(田中琴弓さん)
「原作から得られる情報をもとに、メイのキャラクターを想像して、深めていきました」
「まず、日本にいると原爆って嫌な記憶として残っていると思うんですけど、アメリカには肯定する意見があるということに向き合ったのは、この作品が初めてでした」
「戦争の歴史をいろいろ調べるうちに、アメリカではこういう経緯で『原爆投下』という考えに至るんだなと思うと、今までは日本からの視点でしか考えていなかったので、相手のことを知ることがまず大事なんだと思ったし、そういうことを知ったうえで、自分はどう向き合うのか考えることが大事だと思いました」
自分の国で"マイノリティ"であることに想いを馳せる
「否定派」のアフリカ系アメリカ人、ダリウス・トールマンを演じる南村浩志さんです。
ーまったく違うキャラクターを演じるためにどのようなアプローチを?
(南村浩志さん)
「最初はどうしたらいいんだろうと本当に分からなくて不安だったんですね。でも、原作や台本を読んでみたら、登場人物の中で、一番自分はダリウスに近いんじゃないかと思ったんです」
「ダリウスはとても誠実な人物なんです。ダリウスの性格に近しいところを自分の中に見つけて、それをつなげていく作業。外見ではなく、内面を演じればいいんだと思うと、とても身近に感じることができました」
「アフリカ系アメリカ人について、いろいろ調べましたが、自分の国でマイノリティとして生きるってどういうことなんだろうというのは、日本人の自分が想像することは難しい」
「自分の国に居場所がないということは、本当に辛いと感じるし、ダリウスもそう感じる部分はあるだろうなと想像するんですが、その葛藤も演技で出したいと思っています」
ーこの舞台は、見終わったあとにも気になることを色々調べて、考えを深めたくなりますね。
(南村浩志さん)
「調べれば調べるほど、わからなくなることもある。何が正しくて何が間違っているのか」
「日本人として、原爆肯定というのはなかなか受け入れられないと思うんですけど、アンケートには『考えが揺れた』という感想も結構あるんです。肯定、否定、いろんな意見に触れて、考えを深めていただきたいなと思います」
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