7日に始まる全国高校野球選手権大会。会場の甲子園球場は1日で開場100年を迎える。しかし、近年は酷暑の中の試合が続き、「ドーム会場論」もたびたび浮上。実現可能性はあるのか。会場を変えれば解決する問題なのか。大会を前に考えた。(宮畑譲)

水分補給や体を冷やすため、5回終了時に設けられた「クーリングタイム」=昨年8月、甲子園球場で

 「高校野球は早くドーム球場開催に」「全国持ち回りでドーム球場でやればいい」。ネット上では、こんな声が散見される。現にここ数年、甲子園では「激しい運動や不要不急の外出は避ける」よう呼びかけられる「危険な暑さ」の日でも、試合が行われてきた。

◆10分の「冷却時間」、午前と夕方2部制導入も…

 暑さ対策として、日本高野連は昨年、五回終了後に10分間の「クーリングタイム」を設けた。今大会からは、一部の日程で試合を午前と夕方に分ける「2部制」を導入。準決勝、決勝の試合開始時刻も繰り上げる。試合前日に「熱中症特別警戒アラート」が発令された場合、翌日の試合を中止すべきか協議する。

◆ナイターでプロ選手も熱中症に

 それでも、今やプロ野球選手がナイトゲームで熱中症になるケースも。いっそのこと「甲子園をドーム化しては」という意見もある。ただ、甲子園の周囲は住宅地。近隣に移設するのは歴史的経緯からも現実的ではない。同じ場所でドーム化するにも、工期や敷地の狭さの問題があり、簡単ではない。

大阪市の京セラドーム大阪

 他のドーム球場での開催も、使用料の問題が発生するとみられ、難しそうだ。  高校野球に詳しいスポーツライターの中島大輔氏は「選手に聞くと、みんな『甲子園でやりたい』と言う。高校野球の『聖地』であり象徴。甲子園でやらせてあげたいという気持ちはある」と話す。一方で、「地方大会でも、熱中症で途中交代する選手が続出している。日本の夏はもはやスポーツをやる気候ではなくなっている。選手の健康を考えれば、ドームのほうがよい」と、「ドーム開催」を肯定する。

◆北海道でリーグ戦開催案

 開場1世紀を迎えた甲子園には、高校野球の数々の歴史が刻まれてきた。ただ、優勝旗を手にするのは毎年1チームのみ。他の多くの球児は地方大会で負けた時点で事実上、部活動を終える。  そんな状況を変えようと、今年8月、夏の甲子園に届かなかった高校3年生を対象に、北海道でリーグ戦を行う「リーガ・サマーキャンプ」が開かれる。一般社団法人「ジャパン・ベースボール・イノベーション」(大阪府)が主催。最終日には、プロ野球日本ハムファイターズが本拠地とするエスコンフィールド北海道で試合を行う。

北海道北広島市のエスコンフィールド

 中島氏は「甲子園の素晴らしさ、そこへのこだわりも理解できるが、今後もっと暑くなった時にどうするのか。他の場所でやってみたらすてきな大会だった、となる可能性はあるのでは」と期待する。  開催地の問題もあるが、会期を変更しては、という意見もある。  中学生の硬式野球チームの監督を務めたことがあるスポーツライターの小林信也氏は「今や9、10月が日本の野球シーズン。高校野球はあまりにも夏にピークが集中し過ぎている。秋にかけてリーグ戦を行うことがあってもよいはずだ」と指摘する。

◆「夏で終了」問われる部活のあり方

 小林氏も、夏に終わる高校野球の「トーナメント方式」に疑義を唱える一人だ。「サッカーなど他のスポーツでは冬に最後の大会を行う部活もあるのに、大半の野球部員は夏休み前に部活が終わる。それが高校生のためになるのか。卒業近くまでスポーツと勉強をバランス良く取り組むことが高校生活の理想のはずだ」  議論百出の「ドーム会場論」。高校生の部活のあり方を考える論点も含んでいると言えそうだ。


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