日米の外務防衛閣僚会合で、海兵隊のグアム移転以外に話題にあがったのが、去年から今年にかけて相次いで発生した米兵による女性暴行事件です。一連の事件を受け、米軍側が打ち出した新たな意見交換の場、「フォーラム」の実効性とはー

“フォーラム”に犯罪抑止の実効性はー

事件頻発の米軍側が表明した「建設的な意見交換の場」

相次いだ性的暴行事件の再発防止策として在日米軍司令官のリッキー・ラップ中将が突如、発表した「フォーラム」。

在日米軍は「フォーラム」について、「日本政府と連携し、在日アメリカ軍の指導層、県、地域住民が協力する建設的な意見交換の場」と説明しています。

28日に行われた日米の外務・防衛の閣僚会議「2プラス2」ではー

▽オースティン国防長官 「これは米軍の価値観を反映するようなものではありません。対策を取ってこのようなことが再び発生しないように頑張りたいと思います」

オースティン国防長官



オースティン国防長官は、日本政府との連携の必要性を強調したものの、続発した事件への明確な謝罪の言葉や、フォーラムについての具体的な説明はありませんでした。これに玉城知事は…

▽玉城知事 「従来発表していることとほとんど内容は変わっていませんので、これからも我々としては具体的に透明性・実効性のある取り組みになるかということは注視していきたいと思います」

“フォーラム”の実効性を注視すると述べた玉城知事(29日)



玉城知事は28日朝、取材にこう述べたうえで、“フォーラム”について県への具体的な説明はないことを明らかにしました。

すでに“空手形”懸念する指摘も

新たな枠組みとなる「フォーラム」の創設について、日米関係に詳しい沖縄国際大学の前泊博盛教授はー

▽前泊博盛教授 「ある意味では“空手形”という言葉が浮かぶくらい、実効性が浮かんでこない」「そういうことで沖縄あるいは日本への対応はしのげると思っている、そういう感じがしますね」

米側は“フォーラム設置”でしのげると思っていると指摘する前泊教授



「実行されない約束=空手形」と厳しく批判する前泊教授。こう指摘する背景には米軍内部での性暴力事件の多さがあります。

米国防総省の調査によると、全世界の米軍のなかで発生した性暴力事件は、2011年度以降、増加傾向にあり、2023年度は8500件あまりに上っています。

▽前泊教授 「米軍のなかの性犯罪を抑える手立てもないなかで、日本側の対応だけ議論しているという、本質的な議論が欠落していることがこれでも明らかだと思いますね」

米軍全体の性犯罪が年に8500件 “フォーラム”では日本での再発防止策だけ議論?



前泊教授は、米軍内部で綱紀粛正が徹底されないまま再発防止策を議論しても、根本的な解決にはならないと指摘。このほか、「フォーラム」について▼定期的に開催すること、▼県知事や市町村長が発言する機会を持つことなどが必要だと指摘しました。

実は、米軍関係者による事件事故をめぐっては、すでに「米軍人・軍属等による事件事故防止のための協力ワーキングチーム」という協議の場が2000年10月に発足されています。しかしこれは2017年を最後に開催されていません。

まだその実態が明らかになっていない新たな協議の場「フォーラム」の実効性はどうなるのか。機能し続ける再発防止策や通報体制の構築が求められるなか、形骸化しないか、行方が注目されます。

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