7月12日に発生した松山城の城山での土砂災害。焦点の1つが、松山城の山頂付近に整備された緊急車両用道路と土砂災害との関連です。

土砂災害の原因を解明する検討委員会の初会合が29日、開かれました。提供された資料などを基に、順を追ってみていきます。

山頂付近の緊急車両用道路は、6年前の2018年3月に完成しました。松山市は29日の会議で、実はこの前の年(=2017年)に道路の擁壁に軽微な傾きがあったと明らかにしました。それでも市は「道路の使用に支障はない」と判断。ただ、経過観察は続ける方針だったということです。

そして、4か月後の2018年7月に西日本豪雨が発生し、道路に亀裂ができました。この時は補修を行う一方で、4か月後の11月に擁壁の傾きを計測した際、大きな変化はなかったとして目視による経過観察に変えています。

それから5年後、2023年7月の大雨では道路の一部に損傷が生じます。松山市はこの被害を受けて、文化庁と改良工事の手続きを始めました。当時の判断は「緊急性は高くない」として通常の手続で進められ、今年5月に文化庁からの許可がおり、今年7月1日着工の計画でした。

そして、松山市が着工するため現地に入ったところ、亀裂の拡大と擁壁の傾きを確認したと説明。こちらは「緊急性が高い」として、今年7月2日から9日にかけ応急工事を行い、損傷した道路と傾いた擁壁を撤去しました。

ただ、松山市は7月に確認した道路の亀裂と擁壁の傾きについて「今回の土砂災害を予見できる変化は確認できなかった」と説明しています。

道路の亀裂について松山市は「今月1日になって緊急性を認識した」という説明を繰り返しています。複数の市民からは「6月下旬以降、広がっていった」という証言もあり、真相が気になるところです。

そして緊急車両用道路と今回の土砂災害に関連はあるのか―。検討委員会の委員長を務める愛媛大学の森脇亮教授は、直接的な影響はなかったのではないかと、現時点では分析しています。その上で、道路の傾きやひび割れが土砂災害の前兆だった可能性があると指摘しました。

森脇教授
「緊急輸送道路の擁壁が傾いてひびが入ったり変状が起きたりということ自体が、地盤が少しずつ緩んだり崩れたりすることの前兆現象みたいな形になっていたと思うので、工事そのものが影響していたことはないんじゃないかと思っているが、変状が見られたことは前兆現象としてとらえられるものだったのでは」

また、7月28日に愛媛大学で開かれた報告会では、大学院農学研究科の木村誇助教が、土砂崩れの起点は擁壁周辺ではあるものの「撤去された擁壁の後ろにあった盛り土が崩れたとは考えにくい」と推測しています。

この緊急車両用道路については、整備に伴い水の通り道が変わったことによる影響なども論点となりそうです。会合はあと4回開かれ、土砂災害発生のメカニズムや再発防止策などが話し合われる予定です。

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