日本生まれではなく、日本育ち。3×3のブロックに区切られた9×9マスの正方形に、1~9の数字を入れる「数独」は、米国の雑誌にあったパズルを日本の出版社が売れっ子に成長させ、今年40周年を迎える。ごくシンプルなルールなのに、少なくとも世界100カ国以上で楽しまれている数独。名前の由来は?なぜこんなに多くの人々を夢中にさせるのか。

数独40周年を伝えるニコリタイムスの号外

◆「今はもう、見たらやらずにはいられない」

完成した数独を手に笑顔を見せる槇太さん=千葉県松戸市で

「見たらやらずにはいられない」と話す山田由美子さん=目黒区で

 「集中しないと解けないのが面白い。行き詰まった時、時間を置くとあっさり解けるところも面白い」と語るのは数独歴13年、千葉県松戸市の会社顧問槙太(まき・ふとし)さん(72)。母親の介護の気分転換に始めた。数字が嫌いで数字のパズルは避けていたが、ルールが簡単な数独は合っていた。  昨年4月に始まった東京新聞朝刊の数独毎日掲載で始めたのは目黒区の主婦山田由美子さん(78)。記憶力に自信がなくなってきたため、脳を鍛えたいと考えたという。「最初はなかなか解けなかったが、埋められるようになってくると楽しい。今はもう、見たらやらずにはいられない」

◆米国の雑誌から「輸入」 名前に込められた遊び心

 数独はパズル本の出版社「ニコリ」(中央区)前社長の鍜治真起(かじ・まき)さん(故人)が1984年、米国の雑誌にあったパズル「ナンバープレイス」を見つけ、自社で発行する書籍に自作の問題を掲載したのが始まり。  英語で1桁の数字を「シングル」と表現することから「シングル=独身」と連想し、当初のパズル名は「数字は独身に限る」だった。「長すぎる」という声が社内で上がり、略して「数独」に。遊び心ある名付けは社名にも現れており、「ニコリ」は鍜治さんが新聞で見つけたイギリスの競走馬の名前から来ている。  2004年に英タイムズ紙が「SUDOKU」を紹介し、世界各地で愛好者が増え始めた。日本では07年ごろにゲームソフトの爆発的ヒットから脳トレブームが起き、数独も広まった。  脳トレの一つとして広まったからか、日本の愛好者は高齢者が多いが、他国では世代を問わず楽しまれ、解く速さを競う世界大会も毎年行われている。昨年10月にカナダで開かれた大会には34カ国から参加があり、団体戦で4年ぶりに日本のチームが7回目の優勝を果たした。

◆「習慣的に解くことで、脳を正しく疲れさせる」

数独について話す「ニコリ」の荒井奈緒さん=中央区で

 「いかこ先生」の愛称で東京新聞のほか多くのメディアに解説役として登場している、ニコリ取締役第一事業部長の荒井奈緒さんは「数独の魅力は達成感を得られること。解けると全てのマスが埋まるのですっきりする」と語る。  実際、数独を毎日解くと、脳にどんな影響があるのか。一般社団法人日本パズル協会特別顧問で理学療法士の川畑智さんは「数独は先を見越しながら埋めていくパズルなので、日常で必要な予測から行動への脳の使い方の練習ができる」「習慣的に解くことで脳を正しく疲れさせられる。脳も筋肉と同じで何度も使うことで活性化する」と話す。    ◇   ◇    

◆9月7日に本社で数独解説講座

 東京新聞は9月7日、千代田区内幸町の本社で数独解説講座を開きます。講師はニコリの荒井奈緒さん。解き方のほか数独の豆知識なども紹介。午前10時半~(入門・初級者向け)と午後1時~(中級者向け)。応募者多数の場合は抽選。応募は住所、氏名、年齢、電話番号、人数、参加希望回を明記して〒100ー8505 東京新聞・新聞開発室「数独」係まで。東京新聞Webの応募フォームでも受け付けます。  ◆文・大島晃平/写真・松崎浩一、由木直子/紙面構成・木戸真穂/取材協力・読者モニター「東京新聞パートナーズ」  ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 

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