山口県長門市の自然に囲まれた場所にある「がっこう」があります。「かえるのがっこう」というすこし変わった名前には「本来の自分にかえる」という学校のテーマが込められています。いったいどんな学校なのでしょうか。
海と山に囲まれた自然体験教室
子ども
「自由に遊べてみんなで楽しくできて料理もできるし、いろんなこともできるからすごい場所だと思ってる」
長門市、向津具半島の突端。長門市街地から車で30分ほどの所にあるのが…。海と山に囲まれた自然体験教室「かえるのがっこう」です。「がっこう」と名付けられていますが、いわゆる学校ではありません。
授業のプログラムはほとんどありません。絵を描いたり、寝袋で寝たり。何をしてもいい。何もしなくてもいい。自由に、自分の選択で遊ぶことができる場所です。
堀之内健さん「元気ですかー?」
子どもたち「はーい!」
かえるのがっこうの発起人「けんちゃん」。奈良県出身の堀之内健さん(42)です。スタッフは家族を含めて4人。自由に楽しむことが子どもたちの成長につながると考えます。
堀之内さん
「その子がその子らしく過ごせるやりたいことをやりたいタイミングでなるべくできるっていうのがその子自身の本当の喜びになるので、こういうことをしているって感じですね」
自然の中で「何がやりたいのか」考える
「かえるのがっこう」は小学生の子どもたちが月に2回程度、週末を中心にキャンプでとことん自然を満喫します。自然の中で自分が何をやりたいのかを考える。子どもたちにとっては貴重な経験です。
子ども「あんまりしたことがないからいい感じ」
別の子ども「自分の思いを自由にできるところがいいと思います」
子どもを信じ危険を伝える
堀之内さん
「ここがとんがってるやろ、これさ魚だけやなくてさ服とか手に引っかかったらどうなると思う?血が出るし取れにくくなるんよそういうものを使うって覚えて」
かえるのがっこうでは針や刃物も扱います。
堀之内さん
「危ないことって楽しいんですよ、経験あると思うんですけど。だから全部危険を伝えてます。危険なことを伝えた上でそれは気をつけやって言って気をつけられると信じてます。信じてくれる人の存在って大事だなと思っていて、そういう人になりたいと思っていますし」
子ども
「もうちょっと力入れて、よしそう!」
かまどに薪をくべる子どもたち。釜から出る湯気をうちわで扇ぎ、蓋を取ると米が炊けていました。カレーも出来上がり、歓声が上がります。
堀之内さん「家のカレーと比べてどう?」
子ども「同じ!」
6月下旬、1泊2日のキャンプに参加したのは県内の小学生12人。8人が初参加ですが…1日ですっかり打ち解けました。
設立から10年、立ち上げの理由とは?
けんちゃんが、かえるのがっこうを立ち上げて10年になります。
堀之内さん
「大学卒業して東京で会社員をしていたんですよ。IT企業でSEとして働いていまして」
広島大学時代、アメフトにも打ち込みました。実業団のXリーグ1部の強豪チームから勧誘され、大学を卒業後、大手IT企業に就職。平日は仕事、週末はアメフトに明け暮れました。しかし、どちらも思うような成果があげられず、楽しさは感じられませんでした。「やりたいことではなくやらされていること」そんなふうにも思い始めるほどでした。
堀之内さん
「アメフトも仕事も全然楽しくなくてそれで1回人生諦めてるんですよ。おいらの人生こんなもんでいいやと今世はこれでいいやと諦めたんです」
満たされない思いを抱えたまま、4年務めました。
堀之内さん
「めっちゃなにしてんねんやろなと思って。今世諦めたと思ってたけど今世も楽しみたいなと思って」
世界一周の旅が人生の転機に
今を楽しむために…。休職して世界1周の旅に出ます。
堀之内さん
「世界一周ってすごいんですよほんまに、発展途上国を中心に行ってたんですけど、明らかに日本より貧しいだろうなってぱっと見でわかるんですよ、でもめちゃくちゃ幸せそうなんすよ。お金はもちろん大事だしすばらしいものだけど幸せはお金だけで計れるものじゃないということも感じて。会社を辞めても死にはしないと」
世界の子どもたちの笑顔に心を動かされたけんちゃんは帰国後に会社を辞めました。日本の子どもたちにも笑顔のすばらしさを伝えたい。たどりついたのが「がっこう」でした。
堀之内さん
「子どもが好きだ、子どもに関する仕事がしたいって思ったときに、既存の学校で働くことはしたくなくて、どういう場所がいいかなと思ったときに、自由な感じのところがいいなと」
自然のなかで自由に楽しめる場所を探し、友人に連れられて目にとまったのが長門市の今の場所。「なんとなく気に入った」そうで、「何かの縁」だと移住を決めました。
知名度低く苦労も「やりたいこと」貫く
「かえるのがっこう」設立当初は、農家の仕事を手伝いながら不定期に教室を開催。当然知名度は低く、参加してくれる子どももあまりいません。生活のためにはアルバイトが必要でした。
堀之内さん
「バイトするためにここにきたんって自問するんですよ、違うやろ自分のやりたいことをやれよって」
「かえるのがっこう」を知ってもらおうと小学校の校長に話をしにいったり教育委員会に頼んで講演させてもらったり。思いはしだいに広がり、少しずつに参加人数が増えていきました。「どんなときも自分のやりたいことをする」。それを徹底したからこそ、今の「かえるのがっこう」があります。
堀之内さん
「意味のあることしかやったらいけない風潮ってある気がしていて、そうじゃないと思うんですよ、くだらないことも楽しいことも自分の将来につながることがあったりするんじゃないかなと思っていて。自分がやりたいことをして過ごせることがなにより大事かなと思っていて・・・あれいま何聞かれたんでしたっけ(笑)」
自由にのびのび過ごす時間を大切に
2日間の教室で子どもたちは「自由」を体感しました。
堀之内さん
「またね~!またおいで~!バイバイ~!」
堀之内さん
「家族の元に笑顔で返すことがミッションやと思ってるんで。今の子どもらって余計大人の目が厳しくなっている気がして。のびのび過ごせるってすごいことやと思うんですよ。その時間を過ごせば過ごすほどどの子どもも自分に返っていくし、自分らしくなるし自分で自分の道を切り開いていけるようになると思うんですよ」
自分が何をしたいのかー。それは「自然が教えてくれる」。けんちゃんが出した答えです。
堀之内さん
「情報とかが抜けた状態になるほど自分って何が好きかなとか自分ってなにがやりたいんかなってことを思い出せると思うし、そういうことを感じてやっていけば行くほど本当の自分になっていくと思うし、より気持ちのいい心地よい人生を生きられるんじゃないかなって思っています」
「かえるのがっこう」は「自然にかえる、初心にかえる、自分にかえる」場所です。
堀之内さん
「1日5分でも3分でも3秒でも10秒でもいいので自分の好きなことをする時間を取ることを許可してあげるいいんじゃないかと思っていて、自分自身もそういった所から始めていったのでそういうことかなと思います」
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