塩漬けした骨付きの豚肉を、ツワブキや大根などと豪快に炊き合わせた郷土料理をはじめ、奄美では、豚を使った料理が食文化として根付いています。一方で、かつて奄美で盛んだった養豚は衰退し、生産農家の数は激減。こうした中、島で豚を育てる文化を守ろうと、奮闘している人がいます。

(元雅亮さん)「ちょうど今8頭が生まれて、まだ雄雌も確認していない」

奄美市の元雅亮さん(72)。60頭の豚を育てています。

もともとは大島紬の卸売業をしていた元さんですが、5年前に畜産農家に転身しました。そのわけは…

(元雅亮さん)「鶏飯とは違う豚の文化がもっといっぱいあった、豚の文化をなくしてはいけない、島で生まれ育つ豚を作らないといけない」

奄美の豚は、14世紀末に中国から沖縄を経て伝来したとされ、古くから島の貴重なタンパク源となっていました。

県によりますと、およそ50年前、奄美群島でおよそ1万1400戸の農家が、2万6000頭を飼育していました。

しかし、豚舎から出る排水の処理基準が厳しくなり、エサの価格も50年前に比べ2倍に上昇。こうした背景から、養豚農家の数は2022年、15戸に激減し、豚の数も1790頭に減りました。

島で豚を飼育することが難しくなった今、元さんはエサに、奄美ならではの素材、中でも廃棄されていたものを活用することで、エサのコストを下げ、付加価値も高めようとしています。

(元雅亮さん)「奄美にしかないものを使いたい、サトウキビのバカス(繊維)と、(大豆の)おから、(黒糖焼酎の)廃液を10倍に濃縮したものに海水を混ぜて、サイロでだいたい20~28時間くらい置いて、発酵させる」

また、豚はできるだけ放し飼いにしてストレスを減らすことで、甘みのある味わいの豚になるといいます。

奄美の豚=「あま豚」のブランド名でインターネットで全国に出荷し、5年前は3頭だった豚は今は60頭に増えました。

(元雅亮さん)「2次、3次加工したりして本土に出荷することができれば、世界に出荷できる豚まで作りたい」

奄美の豚を島外にも広めようと、元さんたちは去年、およそ7500万円をかけて豚肉の加工施設を作りました。

(記者)「こちらで加工された豚のジャーキーを食べてみます。豚の甘みと香ばしい香りが口の中に広がります」

作っているのは、元さんの娘・寿好さん(40)です。

去年、豚肉に合う商品として、島でとれたたんかんや胡椒などで作った調味料を発売しました。

(元寿好さん)「豚の薬味作りがメイン。あま豚にあう薬味を作っていく思いで繋げている」

加工の中で出た食材の切れ端などは、余すことなく、豚のエサに活用しています。

(元寿好さん)「農産加工だけじゃない、食肉加工だけじゃない奄美で生まれ育った豚をつくるところにある、豚に返して豚がおいしくなってまたみなさんのところに届いていく」

寿好さんが作った商品のラベルの文字は今、10歳と8歳になる寿好さんの2人の娘が書きました。そこには、10年後、2人にとって誇れるような商品に育ってほしいという願いが込められています。

(元雅亮さん)「奄美は宝の島。どうしたらもっと宝になれるのか。世界自然遺産になっている奄美大島だからできる豚を目指したい」

「島に再び養豚業を根づかせたい」。元さんたちのチャレンジは続きます。

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