現代のビジネス環境は急速に変化しており、特にスタートアップ業界ではそのスピード感が一層顕著となっているため、就職活動に臨む学生や転職希望者も、どんなスキルが求められ、どのようなマインドが必要か、悩みは尽きない。今回は、株式会社WAmazingのCEO加藤史子さんと、株式会社VoicyのCEO緒方憲太郎さんとの対談をもとに、スタートアップ企業で求められる人材とそのマインドセットについて掘り下げた。
スタートアップの現状と学生のギャップ
加藤史子さんが経営するWAmazingでは、まだ新卒採用を大規模には行っていない。その理由について加藤さんはこう語る。
「スタートアップは自分たちが生きるのに必死で、全員が経験者で猛ダッシュで走っています。そうするとひよこたちがピヨピヨと後ろから一生懸命追いかけてこようとしても、もう振り切って走っちゃうんですよね」
全員が生き残りをかけて猛烈な勢いで進んでいくスタートアップでは、未経験者を育てる余裕や体制がまだ整っていない場合が多い。ビジネスマンとしての経験が不足している新卒者がスタートアップのスピードに対応するのは難しいのが現実で、WAmazingではインターンから数名が入社する程度だという。
――加藤さんが以前在籍されていたリクルートさんの場合はいかがですか?
「リクルートは、そのスピードについてこれる猛烈な筋肉を持ったひよこを採るんです。そして3日目くらいから、彼らを千尋の谷に突き落とす。ただあの会社のいいところは突き落として、先輩たちも一応、一緒に谷底に降りてきてくれる。サポートしてくれるけど、猛烈な筋肉は必要です(笑)」
Voicyの緒方さんも新卒採用に対しては消極的なスタンスだ。
「学生は受験の経験から『いい環境に入る』ことが大事という感覚があるので、そのプロセスを仕事でもやったほうがいいと勘違いをしてしまう。そうすると、入った後にどう頑張るかというより、入った場所で成長できる環境を用意してもらうことを求めてしまう。こういう人たちはスタートアップと相性が良くないですよね」
スタートアップの採用の厳しさを語る一方で、こう続ける。
「スタートアップには、自ら課題を見つけて解決する力が求められます。その厳しい環境も理解して、マッチする学生はめちゃくちゃ伸びるので、新卒で入ったメンバーのコミット度と昇給・昇格は非常に高い」
直感を信じて好きなことに飛び込む
――スタートアップ業界を志望する人に必要な意識は何かありますか?
「直感で、自分がいいと思った場所を正解にする力が重要だと思います」
社会が急速に変化していく時代の中で、緒方さんが採用したくなる、勝ち抜いていく人は、“どの場所に行っても自分の幸せを見つけ出せる人”だという。
「恋愛で例えるなら、『いい人』ってどんな人かをロジックで考えていくより、まずは直感で、いいな!と思う人と付き合ってみて、そこで相手から付き合ってよかったなって言われるぐらいのパフォーマンスを出せば、次からもっといい出会いが来る。それで自分に向いていることもわかるって感じなのかな、と思います。そうじゃなく、条件とかで固めて選んでいると、自分の直感力はずっと上げられない状態のままになる」
仕事においても、そうした直観力と、選んだ道を正解にする姿勢と努力が大切だと語る。
加藤さんも直観力を磨く方法についてアドバイスを送る。
「学生時代に学園祭の実行委員会やっていて、それは今、役に立ってるか?って聞かれますけど、そんなことないですから(笑)まずは自分が何をするとイキイキするか、楽しいか、ときめくか、それを大切にしたほうがいいと思います」
そして、こう締めくくる。
「ときめきを大事にしながら打席に立とう」
スタートアップ企業で成功するためには、自己責任と自主性が求められる。自分の直感を信じ、自分が好きなことに飛び込み、その選択を正解にする力を養うことが大切だ。また、まずは行動を起こし、経験を積むことで、自分自身を磨き、成長することが求められる。
Wamazing株式会社 代表取締役CEO加藤史子さん
2002年に株式会社リクルートに入社。在籍中、観光や地域活性化のプロジェクトなどに従事しリーダーシップを発揮。2016年に株式会社WAmazingを設立し、訪日外国人向けの観光プラットフォームを展開。多言語対応の利便性を強みに300人のスタッフを抱える企業へと急成長を遂げ、インバウンド業界で最も注目されているスタートアップ企業の一つとなっている。
株式会社Voicy代表取締役CEO 緒方憲太郎さん
2006年に新日本監査法人で公認会計士としてキャリアをスタート。Ernst & Youngニューヨーク勤務を経て、トーマツベンチャーサポートでスタートアップ支援を行う。2016年に株式会社Voicyを設立し、音声プラットフォームのパイオニアとして業界をリード。著作には『新時代の話す力』や『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』。
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