知人の女と共謀して姉を殺害し通帳などを奪ったとして強盗殺人などの罪に問われているホームレスの妹、辻和美被告(52)。18日の裁判で和美被告は、姉の自宅に向かう日をいつにするか、事前に知人の女・岡村恵美被告(47)と相談していたことを証言した。

なぜ、岡村被告に?法廷で裁判官はたたみかけた。”事件の全体像が明らかになるかもしれない”裁判官の質問に、法廷の空気が張り詰めた。

「身長は?」から始まった裁判官の質問

和美本人に対する2日目の被告人質問。裁判官が最初に尋ねたのは、和美被告の”体格”についてだった。

裁判官 去年6月2日の事件当時の身長は?
辻和美被告 ―168センチだと思います

裁判官 体重は?
辻和美被告 ―分かりません

裁判官 今よりも太っていましたか、痩せていましたか
辻和美被告 ―今が68キロですけど、それよりも下です

5日の初公判で初めて和美被告が入って来た時、横につきそう男性刑務官とさほど変わらず、身長の高さが印象に残っていた。

亡くなった姉のつぐみさん(当時52)を司法解剖した医師によると、つぐみさんの身長は、153センチ。(8日医師への証人尋問)

妹の和美被告とは15センチほど差がある。

この日の裁判官の質問で、改めて、亡くなった姉のつぐみさんとの体格の違いを意識した。

知人の女と共謀し姉を殺害し通帳など奪ったとされる、辻和美被告(52)

起訴状などによると、辻和美被告(52)は去年6月2日、知人の岡村恵美被告(47)と共謀して、福岡県水巻町の町営住宅で姉の辻つぐみさん(当時52)の首を圧迫して殺害し、通帳3冊と印鑑を奪った強盗殺人などの罪に問われている。

これまでの裁判で、和美被告は、岡村恵美被告との共謀と姉の殺害を否認。単独で行った「強盗事件」だと主張している。

路上生活と売春ビルの非常階段や踊り場が寝床だった

18日、16日に続き証言台に立った和美被告。裁判官は、路上生活や岡村被告への送金について細かく質問していった。

裁判官 ホームレスになった理由は
辻和美被告 ―(うつむいて)ギャンブルで借金ばかりこさえてどうしようもなく家を出た所からホームレスになりました

裁判官 なぜ家を出ないといけないのですか
辻和美被告 ―元旦那にしても子供にしても迷惑かかると思いました

2008年10月、パチンコによる借金から、子供2人を置いて家を出た和美被告。最初は、インターネットカフェで寝ていたが、身分証を紛失してからは、主にビルの非常階段やその踊り場を寝床にしていたという。当初は北九州市一の歓楽街がある小倉北区周辺だったが、2014年警察から一時保護されたことを機に、その後は、第二の都市・八幡西区黒崎に移動した。黒崎にも駅前に歓楽街が広がっている。

荷物はふたつ。リュックと肩にかけるバッグ。共犯とされる岡村被告から渡されていた携帯電話、いわゆるガラケーも一緒に持ち歩いていた。

借金があると思ったのは「ベランダから子供に食料を入れてくれたから」

ガラケーで客を探し売春をしながらその稼ぎのほとんどを岡村被告と2人の子供に送金している。これまでの裁判で和美被告は、送金の理由について「借金の返済」だと繰り返し述べたが、本当に借金があったのか、あったとしたらいくらなのか、和美被告本人も「分からない」と答えるばかりで判然としていなかった。

裁判官 岡村被告にこれまで5800万円を送金していますが、何で送金したのですか
辻和美被告 ―岡村被告から金を借りているということで、返済ということで入金していました

裁判官 借りた覚えはありませんか
辻和美被告 ―はい

裁判官 なぜずっと送金していたんですか
辻和美被告 ―子どもが2人いたもので、家を出たあと、子供たちに、(子供たちが住んでいる)団地のベランダから食料を入れてくれていて岡村被告の2人の子供のいずれかが入れていたみたいですその金が(借金として)ついたのかなと思いました

裁判官 それを確かめましたか
辻和美被告 ―結構な量の水や食料があったと聞きました、嘘ではないと思っていて、それがかさんだと思っていました

裁判官 それでも多いと思いますが
辻和美被告 ―それ以外もあったのかなと、だから貸してるということかなと思っていました

裁判官「犯行を6月2日にした理由はありますか」

質問は、犯行日当日にも及んだ。

裁判官 6月2日にした理由はありますか
辻和美被告 ―前日が生活保護費の支給日、売春の客が多いもので次の日にしました保護費をもらう日だから、その日ではないとだめという客がいる 1日は無理という話をしました

裁判官 5月でない理由はありますか
辻和美被告 ―ないです1日は無理という話をして

裁判官 (話を)誰としましたか
辻和美被告 ―岡村被告の方に、1日は保護があるけん客がおる、と

裁判官 岡村被告は関係ないですよね
辻和美被告 ―はい

法廷の空気が一瞬、張り詰めた。犯行に及ぶ日を、ふたりで決めたということなのか。

裁判官 なぜ岡村被告とその話になったのですか
辻和美被告 ―催涙スプレーを買いに連れて行ってもらわないといけないと思っていた

その後も、犯行当日の言動について細かな質問が続き、裁判官は、和美被告の2人の子供たちについて尋ねた。

家を出て以来、一度も会っていないという。

裁判官 子供に思うことはありますか
辻和美被告 ―それは色々あります寂しい思いをさせた、私が借金したことで子供に嫌な思いをさせた色々な意味でかわいそうなことをしたと思います

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