かつてお笑い芸人だったという異色の経歴を持つ農家の男性が、福岡県宗像市にいます。テレビ番組の取材を通じて無農薬で取り組む農業を知り、挑戦を始めています。

ちょっとすべって園児と田植え

金田尚大(なおひろ)さん
「お米の種を、皆さんで植えていただいたんです。だいたい1か月たち、立派な苗ができています。みなさん拍手をお願いします!」


金田尚大(なおひろ)さん「僕の名前、覚えてますか?なんですか?」
子供たち「…かねちゃーん」
金田尚大さん「おい、ちょっと少ないな!」

子供たちの前で、軽くすべっているのは金田尚大さん(31歳)。
元お笑い芸人です。

7月6日、宗像市の認定こども園「いちごいちえん」の園児や保護者と一緒に、金田さんは田んぼに入りました。

金田尚大さん「みんな泥だらけになって楽しいです」

園児たちにとっては初めての田植えです。

子供「米好き」

「めちゃくちゃ食べますね。うちは米で育っているようなもので。なかなか泥に入る環境もないので、すごくいいと思います」

いちごいちえん 宮部哲 理事長
「4月から金田さんの米を入れていて、おいしくなったとまず大人が感じることが多くて」

テレビ番組で農業の魅力を知って

録画映像を見る金田尚大さん
「昔の私です。『TEEN!TEEN!』という番組で」

大学在学中に芸人(芸名「フーシャオ飯店」)としての活動をスタートさせた金田さん。とある密着取材で感銘を受けました。

金田尚大さん
「自給自足している仙人がいるというので、私が密着取材するという番組だったのですけど、その時農業がすごく楽しく感じたんですよ」

当時プロポーズしようとしていた金田さんは、「芸人を続けるか」「農業を始めるか」迷った時期もありました。

金田尚大さん「(芸人を)辞めたら捨てられるという恐怖感もあり、何回も嫁さんに確認した節はある」
妻の佳奈枝さん(29)「元々好きなことしか出来ないタイプで、私が言ったところでできないのは分かっているので、『やりたいようにやるしかないよね』『付いて行くしかないよね』って感じでした」
金田尚大さん「キザな言い方をすると、遅れてきた青春みたいな…」

元芸人とは思えないトーク力も、魅力の一つなのかもしれません。

農薬の効果、無農薬の大変さ

RKB 高木吾朗 カメラマン「お金かかります?」
金田尚大さん「お金かかりますね。1台が200万近くするので」

5年間続けた芸人を辞め、農薬や肥料を使わない農業をする会社に就職。6月に独立しました。

金田尚大さん
「知り合いの農家に種まきの手伝いに行ったら、樽に真っ白い液体があって『これなんですか?』と聞いたら、『種にかける農薬よ』と言われ…。私は農薬や肥料を使わない栽培しよう、と決めました」

田植えを終えた2週間後に田んぼが増水し、活発になったタニシにかじられて稲が全滅するなど、その大変さを痛感しています。

金田尚大さん
「日々、ジャンボタニシの食害から守る対策をしています。その分だけ手間がかかるので大変ですけど、みなさんに安心してお米を食べていただきたいなと」

金田さんは農薬を使うことに批判的なわけではありません。「農薬肥料などうまく使い分けながら農業をしていく便利さももちろんある」と話します。

『農業って楽しいよ』田んぼで遊ぶ子供たち

金田さんは、一口1万5000円で田んぼのオーナーになれる制度を始めました。農薬や肥料を使わずに育てた安心のお米が、収穫後にオーナーに15キロ届く仕組みです(1口1万5000円、発送料込み)。白米か玄米かを選べます。私(RKB高木吾朗カメラマン)も、オーナーに申し込んでみました。

RKB 高木吾朗「よろしくお願いします。ぼくが田んぼに行っても行かなくても、管理していただける」
金田尚大さん「もちろん、私たちが責任を持って管理します」

苗や田んぼの状況は、インスタグラムで毎日配信しています。田んぼオーナー制度の参加者も徐々に増えてきました。

参加者「今まで自分たちが食べるものなのに意識していなかったが、子供ができて、『子供が食べるもの』と考えたらすごく大事だと。しかも体験もできるのでお得だなと」

「(稲に)愛着が持てる。今後の生長も見守っていきたい」

芸人時代と同じように「みんなの笑顔を見たい」と話す金田さん。

金田尚大さん
「子供たちに『農業って楽しいよ』と伝えていきたいと思っていて、それが実現できてすごくうれしいです。農薬や肥料を使ってないので安心して食べて、元気いっぱい遊んでもらえたら」

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