最新のリハビリ治療の現場を取材しました。仮想現実、バーチャルの医療機器が登場するなど、ここ10年で変わってきているようです。

JR下関駅から歩いて5分程度、山口県下関市の中心市街地にある下関リハビリテーション病院。病院から紹介を受けた入院や通院患者が、日々リハビリに取り組んでいます。スタッフは、およそ150人。患者1人1人にあったメニューをつくって、サポートしながらリハビリを行っています。

最新のリハビリ機器を導入

その現場をみると、よく見るリハビリ器具の他に、パソコンのモニターがところどころに置いてあります。ここでは、最新の医療機器を導入しているそうです。

下関リハビリテーション病院・林研二院長
「ひとえにこの地域の皆様に、ほんとうによりよい新しいリハビリを提供する。これにつきますね」

中国地方で初めて導入した腕の訓練用ロボットです。3次元でモニターにうつる赤い目標点に向けてレバーを動かします。

セラピスト
「はい、今度は前の方ほうへグーと。矢印が力の入れている方向になります」

麻痺したひじから肩の機能改善に使われています。

作業療法士・森重龍夫さん
「17種類の軌道の異なる設定もできますし、患者様の状態に応じて5段階の介助度のモードの設定もできますし、とても幅広い訓練内容を提供できます」

ドライビングシミュレーターも

セラピスト
「もしよろしければここを押したらスタートできます。はいじゃ前の車についていきましょう」

ゲームセンターにそのままあるような、ドライビングシミュレーター。脳卒中などの患者が安心して、車の運転を再開したい人の訓練に使われます。走行検査など4つの項目があり、速度や車間距離などの走行結果が瞬時にわかるようになっています。

この機器で訓練した患者は、病院が提携する自動車教習所で実際に運転した評価も受けられ、より安全に再開できるシステムをつくっています。

最新のVR機器で患者をサポート

こうしたモニター画面を利用した機器のなかでも最新の医療機器が、「mediVR カグラ」です。一見、ゲーム機のようですがリハビリテーション機器として特許を取得しています。県内では2つの病院にあり、下関リハビリテーション病院は去年6月に導入しました。

リハビリテーション課長・波多野崇さん
「セラピストである私たちの手技を使って患者様と一緒に行ってきたんですけど、最近はその効果をさらにあげていくための機器が本当にさまざまなものが開発されてきてます」

座った患者に、専用のゴーグルを装着します。

セラピスト
「はい 目にあわせます。しばりますね」

仮想現実の世界でターゲットを狙って、前、左右、ななめに体を動かしながら手をのばしていくことが基本動作です。

セラピスト
「今度は左、同じように体と手をゆっくりあてにいきます、そうです。そうです。いいですね」

ゲームは5種類あります。画面のターゲットに背景をつけたりなくしたりすることができます。背景をつけると視覚的な負担が増して、より注意力が必要になり、難易度が高くなります。的の中心にあたると「あっぱれ」と、患者を褒めることも忘れません。それぞれの患者にあわせてゲーム内容を選択します。

波多野さん
「自分の体が見えないなかで、どういうふうにバランスをとっていったらいいのかといったところをかなり強烈に脳に刺激を違うかたちであたえていくので、それは従来のリハビリとは違うものかなと考えています」

導入1年、効果実感する人も

セラピスト
「はい じゃ足下ろしますね」

この患者さんは、まひした左半身を回復させようと、ことし5月から週3回、この機器でリハビリを行っています。

患者さん
「前は、右側だけじゃったんじゃけど、左にも目がいくようになって全部見渡せるようになった」

導入して1年。100人以上の患者がこの機器を利用したということです。

理学療法士・千原隆昌さん
「患者さんのほぼ100%に近いようなかたちでVRを体験したことがないので、やっぱり最初、機械にできるかなあどうかなあと不安がある患者さんが多かったんですけども、年齢問わず実施できるリハビリテーション機器になってますので、導入して大変よかったかなと思っております」

よりきめ細かく患者に寄り添う
新しい機器の登場により、それぞれの患者の状態にあわせてよりきめ細かい訓練の設定ができるようになりました。リハビリ医療の世界は、AIを活用した機器などの開発が日進月歩で進んでいると言います。

林院長
「ロボットの導入というのはもっともっと進んでいくと思います。遠い将来はいろいろなリハビリ機器がはいってそれを縦横に駆使するというふうな時代がくるかも知れません。でも基本的なことはリハビリの心なんですね、それが一番大事だと自分は思っています」

これからも新しい医療機器が次々と登場しリハビリの現場は変わっていきます。ただ、変わらないことはスタッフが患者に寄り添いながら一緒にリハビリに取り組むという姿なのかもしれません。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。