安倍元総理が銃撃され世を去ってから2年が過ぎた。アベノミクスの弊害や旧安倍派をはじめとした政治とカネの問題などなど、長期“一強”政権の中で発生し、未だ何ら解決していない、いわゆる“負の遺産”がいくつもある。
その一つ『森友学園問題』。これに関連して財務省が今年5月、異例の決定を下した。
果たして何があったのか…。そして当事者は番組のインタビューに何を訴えたのか…。
「当たり前のことを当たり前に答えてくれない怖さを感じます」
事の発端は2017年2月。森友学園国有地売却問題について、当時の安倍晋三総理の関与が取り沙汰された時の総理の答弁だった…
安倍総理(当時)
「私や妻が関係していたということになれば、これはまさに私は総理大臣も国会議員も辞めるとはっきり申し上げておきたい」
この発言のあと財務省近畿財務局の職員、赤木俊夫さんは森友学園国有地売却をめぐる決裁文書の改ざんを命じられたとされる。その後改ざん問題が大きく報じられる中、赤木さんは翌年自ら命を絶った。それから3年が過ぎ、事がうやむやになろうとしていたころ、妻・赤木雅子さんは“夫は何故亡くなったのか、本当のことが知りたい”と、財務省が大阪地裁に提出した“改ざん時のことが書かれているであろう文書”(以下、文書)の開示を求め提訴した。
しかし、去年9月になって地裁は赤木さんの訴えを退け、財務省は「地検の捜査に影響する」として文書の存否も明らかにせず不開示を決定。
これを受け、国の第三者機関『情報公開・個人情報保護審査会』は今年3月「文書の存否も明らかにせずに不開示は不当」だと判断し、財務省に対し不開示決定を取り消すよう答申した。ところが今年5月、財務省は答申を退け再び文書の不開示を決定したのだ。
因みに過去、こうした答申に従わなかったケースは、1万5000件の答申に対しわずか0.16%に過ぎないという。つまり極めて異例の判断だったのだ。一体何を見せたくないのだろうか…。
安倍総理が銃撃され命を失って2年。番組では夫を失った妻・赤木雅子さんに改めて話を聞いた。
赤木雅子さん
「財務省の人も、財務局の人も誰も来ませんも。全く何も変化はないと思います。うるさいなぁ…、私のことを“うるさい、また言ってるわ”ぐらいで何にも響いてないと思います。響いてたら手を合わせに来てくれる…」
安倍元総理がいなくなっても何も状況が変わらない2年。赤木さんの何があったのか知りたいという気持ちも何一つ変わっていない。
赤木雅子さん
「もう知りたいっていうだけで、夫が本当苦しんでたんですね。もう今、夫のことは思い出したいんだけど、苦しんでる夫をとにかく思い出したくなくって。もう苦しんでる夫を思い出すともう本当悲しくなっちゃって。もう昨日一昨日かな、電車乗っててもやっぱ涙が出てくるんですね。なんであんな苦しまないといけなかったかっていうと、やっぱり改ざんしたことが原因なんです。改ざんはどういうふうにすることになったのか、夫はもう休日に呼び出されてまで改ざんしてますので、もう間違いなく指示されてるんですけど、やってしまったので、自分は犯罪行為をしてしまった犯罪者だっていうふうにすごい苦しんでいたので、なんでそんな苦しまなきゃいけなかったのか」
公文書を改ざんするという犯罪を指示された側は亡くなり、遺族は今も苦しみという変わらない構図。しかし財務省だけでなく裁判所も政府も何も答えてくれていない。
赤木雅子さん
「裁判もですし、なんか日本語しゃべる人とは思えないロボットみたいな感じで…。何があったのか知りたいって言ってるだけなのに一切拒否されてて…、国は人間じゃないんだろうなって感じます…。怖い…。当たり前のことを当たり前に答えてくれない怖さを感じます。何があったのか教えてほしい、ただそれだけなのになんか厄介者扱いされて…。人間扱いしてもらえてない感じ…、対話ができないところがとても怖い」
それでも財務省の第三者機関が、財務省の行動にNOを突き付ける答申を出した時は嬉しかったという。
赤木雅子さん
「もちろん(答申を)見た瞬間は大喜びですよね。これまでに頑なに出さない、あるともないとも言わないで出さなかったものが出て来る…でもぬか喜びだったみたいです。メンツがあるんじゃないですか、誰のメンツかわかりませんけど…。国の人たちは…恥ずかしいことしちゃったっていう心苦しさがあるから出すわけにはいかないんだろうなとは思います。夫は生きたかったんです。仕事も大事だったし国家公務員として働いていることに誇りも持っていたし…。いろんな人から聞いたんですけど、真面目にコツコツ一生懸命やってたんです。だから定年まで続けたかったはずです。なのにそれを死ぬことで自分で打ち切っちゃったので…。なんでそうしなきゃいけなかったのか…、それを知りたいだけなんですけど…。国はとことん教えてくれない…」
「岸田総理は何やってんだ」
共同通信・久江雅彦氏は第三者機関の答申を退ける財務省に憤りを隠さない。
共同通信 久江雅彦 特別編集委員
「自分の身近な人に置き換えたら許し難い。というか民主主義国家でこんなことあっていいんだろうかとっていう悲痛な叫びですよね。法治国家の手続きっていうことがあっても…。だって遺書その他見ても明らかに何故自死したかってことはわかるわけですよね。そこに大きな公権力があったかどうか見せてくれ…。これが明らかにならないってことは、日本って大丈夫ですかって、ホントうすら寒い…。安倍さんのみあらず、どこにどんな忖度があったのか…。それがわからなかったら赤木雅子さんも泣くに泣けないじゃないですか。こんなことが今の日本でまかり通るなんてありえないと思う」
民主主義国家としてあり得ないと憤る久江氏。自民党の田村憲久議員は…。
自民党政調会長代行 田村憲久 衆議院議員
「これは大阪地裁が出した判決で、今控訴審…。これは司法の方でしっかり…控訴審で議論していただいて結論を出して…。(政治というより)司法の話…。なんで地裁は開示しないという判決を出したのかということも考えなきゃいけない。裁判には裁判の理由があるわけで…。それも踏まえて控訴審で…、ひっくり返るかもしれませんよ…」
安倍総理の政治を研究してきた政治学者、中北浩爾教授は「聞く力」を謳う岸田総理に触れて、こう怒りをあらわにした。
中央大学 中北浩爾教授
「財務省は全く説得力がない。財務省は赤木さんに改ざんを指示した加害者ですから…。そういう立場で大きな罪を犯しているのに、こうした判断をするというのは信じ難いし、岸田総理は何やってんだと…、財務省に指示すればいいじゃないか。鈴木財務大臣も同じだけれど、政治家が何を判断して、動いてないのか…。人が亡くなった問題ですよ、真面目に働いていた…。この判断は信じ難い…政府は加害者ですからね。被害者の方がこういった状況を知りたいっていうのは当たり前じゃないかと…。こういった声を聞けないっていうのは、私は聞く力が問われるんじゃないかというふうに思えますね」
(BS-TBS『報道1930』7月11日放送より)
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