全国に約1万人の患者がいるといわれるALS(筋萎縮性側索硬化症)。静岡県富士宮市に住む女性は、この病気と闘いながら、患者が安心して暮らせるグループホームを自ら立ち上げました。笑って生きる一生を選んだ彼女の生き方を追いました。

<スタッフ>
「拘縮してる。足が硬くなっちゃった」
<患者の母親>
「力入れちゃうとまた痛くなっちゃうから、力抜いて。リラックスリラックス」

富士宮市に3年前にオープンした「ケアサポート志保」。医療的ケアに特化した24時間体制のグループホームです。

立ち上げたのは、清しお子さん。8年前、呼吸や手足に必要な筋肉が徐々に痩せ、力がなくなっていく、難病・ALSと診断されました。

ALSは、気管切開をして人工呼吸器をつけなければ、2年から5年で死亡するといわれています。しかし、呼吸器をつける人は全体のおよそ2割。残る8割の多くは、経済的な理由や24時間介護が必要なことから呼吸器をつけずに亡くなるといいます。

<清しお子さん>
「諦めて死んじゃったらもったいない。いつか、この病気は治る病気になると信じてる。だから、頑張れる」

病気と闘う傍ら、自ら、患者や家族が安心できる「居場所」をつくりました。

<清しお子さん>
「これが成功すれば、必ず誰かがどこかで同じような施設をつくってくれる。それが私の一番の願い」

静岡県沼津市から来た一杉京さん。筋肉がこわばり、筋力が低下していく難病、筋強直性ジストロフィーの患者です。知的障害がありますが、入居する4か月前までは、話すことも歩くこともできていたといいます。

<京さんの両親>
「もともと話が好きで、けらけら笑う子で、散歩とか、歌ったりとか、そういう風に過ごしていたんですけどね」
「こういう施設はなかなかない」
「断られたところもある」
「いい施設に巡り合えてよかったと思っています」

安心して自分らしい暮らしができるように、患者であるしお子さんがつくった施設を選びました。

<スタッフ>
「気持ちいい?みやちゃん。頑張ろうね」
<京さんの母親>
「痛いね。でも、みやこ、足が動くようになるから」

週2回のリハビリ。寝たきりの状態から、車いすに乗って出かけることが目標です。

しお子さんは、心だけは病に侵されないようにと、患者を励まし続けてきました。

<ALS患者の入居者>
(筆談で)「気力、体力が弱くなり情けないです」
<清しお子さん>
「ご主人とかお姉様、ご家族様のことを考えられたから、ここにいらっしゃったんですよね。つまり、人を思いやるという気力は十分あるということですよ。私はね、泣いて生きるも一生、笑って生きるも一生。それだったら、笑って生きようと決めたのね」

「志保」の評判を聞きつけ、同じような施設をつくりたいと、見学に訪れる人が増えてきました。

<伊豆の国市に住む看護師>
「いま、障害者病棟で働いている看護師なんですけど、最終的にはこういうアットホームなグループホームで利用者さんを見てあげたい」

<清しお子さん>
「まばたきすらできなくなる。そういうときもちょっとしたところで、少しでも動くところがあったら、そこを見逃さないように読み取るのがとても大事。ぜひ、頑張ってもらいたいです」

スタッフが、部屋を巡回しているときのことでした。

<スタッフ>
「すごい、みやちゃんが座っている!みやちゃんが座っている!」
<清しお子さん>
「みやちゃ~ん!すごい」

入居して7か月。寝たきりの状態だった京さんが、座れるようになりました。

<京さんの母親>
「もうびっくりしちゃって。ちょっとでも外に連れて行ったり、桜の季節に桜を見せてあげたいなと思う。ありがとうございます。先が見えてきたというか」
<清しお子さん>
「よかったね。京さんすごい」

しお子さんへの吉報は続きました。2024年5月、京都大学の研究チームが、白血病の治療薬を使った治験において、投与した患者の半数以上で病気の進行を抑えることができたと発表したのです。

<清しお子さん>
「とても明るいニュースよね。うれしく思います。信じて生きてきてよかったかも。今ここに入居されている人もすごく待ち望んでいると思います」

希望を持ち、生き続けます。

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