精神的に不安定になり、家族の前から姿を消した女性を発見した警察犬と飼い主に感謝状が贈られました。“タイムリミット”が迫る中、慣れない方法で、初めてのお手柄を挙げた警察犬と飼い主の見事な連携。逆風の中、女性1人の命を救った裏舞台です。

記者に初めて会った際、すぐ、においを確認してきたのが「お手柄警察犬」のフレア(メス・3歳)。警察犬としては2年目の若いジャーマンシェパードです。

飼い主の髙野哲一さん(66)は20年ほど前から犬の訓練を趣味にしていて、13年ほど前に警察犬を扱うようになったといいます。

このペアが大活躍を見せたのは、6月26日。浜松市中央区の住宅から姿を消した50代の女性を探してほしいと、この日の午後に警察からの連絡を受け、現場に向かったそうです。

<髙野哲一さん>
「この信号のあたりで目撃情報があったということで、ここから捜索を始めました」

実はこの捜索、髙野さんとフレアにとって、相性のいいものではありませんでした。捜索をスタートした場所で、女性が家族に目撃されたのは26日の早朝。においを辿るには、かなりの時間が経過していました。さらに…

<髙野哲一さん>
「本当は足跡のにおいを辿るのが得意でして、ちょっと不安があった」

フレアは、警察犬の全国大会で上位30位に入るほどの実力の持ち主ですが、それは足跡のにおいを辿る能力。今回は家族から提供された女性のにおいを覚え、周辺に漂うにおいを感じ取って探すという方法でした。

フレアは約2年間、奈良県内にある訓練所にいて、その際には周辺のにおいをかぎ分けることを学んだはずですが、髙野さんのもとに帰ってきてからは、その訓練は皆無。行方不明の女性は精神的に不安定な状態で家を飛び出ていたため、なんとか日が暮れる前に探し出したいと考えていて、タイムリミットは実質1時間程度でした。

悪条件が揃う中でしたが、ここで能力の高さを見せたのがフレアでした。

「人が座っているように」

<髙野哲一さん>
「においをかいだら、バーッと走り出した。最初から海の方を気にしていました」

捜索を開始した場所は海岸のすぐ近く。しきりに海の方を気にするフレアをうまく誘導しながら、髙野さんたちは防潮堤の上を往復して様子を見たといいます。

その時でした。

<髙野哲一さん>
「ふと、私が気にしたら、人影が見えたんですよね。人が座っているように見えまして」

髙野さんの目が松並木の向こうにいる女性の姿をとらえたのです。同行する警察官と砂浜に降りて、女性のもとに駆け寄った髙野さんとフレア。警察官が身元を確認したところ、行方不明届が出ていた女性であることが判明しました。

<髙野哲一さん>
「見つかって良かったなって安心しました。ホッとしました」

不安を抱えながらの不慣れな捜索でしたが、発見までにかかった時間は約40分。リスクが高まる夜が来る前に発見できたことは、警察犬フレアにとって初めてのお手柄でした。

後日、警察から高野さんには感謝状が、フレアには感謝状と副賞のペットフードが贈られました。

<浜松西警察署 渡辺健太署長>
「よくぞやってくれたということで、日頃から高野さんがを訓練をよくやってくれていると聞いているので、本当にありがたいと感じた」

趣味から始まった警察犬の訓練。高野さんは謙遜しながらこれからもマイペースで捜索活動などに従事したいと話します。

<髙野哲一さん>
「今後も協力できるようにやっていきたいのですが、あくまでも私の趣味の延長線上の話ですから」

警察犬と飼い主の絆が生んだ今回のお手柄。防犯カメラやドライブレコーダーなどデジタル面での捜査が欠かせない現代ですが、犬の嗅覚を頼るという昔ながらの手法の大切さを感じさせる活躍でした。

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