ハクチョウの飛来地として知られる新潟市西区の佐潟。
1996年には水鳥の生息地として、国際的に重要な湿地を守るラムサール条約に登録されています。
そんな佐潟が今、生態系の危機に瀕しています。その大きな原因となっているのは『外来種のカメ』。新潟市や地元の関係者たちが動き始めています。

佐潟の近くで生まれ育ち、長年にわたって水鳥を狙いカメラを構え『佐潟の姿』をカメラに収め続けてきた飯田重行さん(76)は、これまであったものが今の佐潟には無くなってしまったと言います。
「7月、8月と一面に咲くハスの花。もう5~6年前からプッツリとなくなった…」

飯田さんが10年前に撮影した佐潟の写真を見てみると、一面にビッシリとハスがあるのが分かります。

しかし現在の佐潟には、ハスは全くありません。

佐潟を管理する新潟市によりますと、2018年ごろからハスが見られなくなり、今では完全に消滅してしまいました。

一体、何が起きたのか…
佐潟クリーン大作戦の会の副代表を務める中務謙吾さんは、その原因を指摘します。

中務謙吾さん
「これが全部食われたやつですね。これ、カメがパクっと食べちゃう、パクっと…もうハスだらけだったんですよ。今はこれですよ、見ての通り…」

原因は、ミシシッピアカミミガメ=通称 ミドリガメによる食害です。
ミドリガメは、ペットとして飼育されていたものが自然に放たれるなどした外来種で、全国で生態系への影響が出ています。

国は去年6月から、ミドリガメを池や川に放すことを禁じる条件付きの特定外来生物に位置づけて被害を食い止めようとしています。

このミドリガメ、柔らかい若いハスの葉などが好物で次々と食べてしまい、佐潟で大繁殖しているのです。新潟市は、およそ44ヘクタールの湖に少なくとも1万匹がいると見ています。

ハスなどの水草が無くなった佐潟では、さらなる問題も起きていました。

中務謙吾さん
「今(水の色が)茶色なんですけど、これが今度、緑になるので… すさまじい緑です」

ハスなどの水草は、水が汚れる原因となる窒素やリンを吸収します。ハスが無くなったことにより水質が悪化したのです。

湖や海などの水の汚れの度合を示す指標=CODの値で比較してみます。

CODは値が高いほど水が汚れていることになるのですが、新潟市の調査によりますと、佐潟の過去3年の平均値は27.8。一方、新潟市中央区にある鳥屋野潟の過去3年の平均値は、6.48となっていて、佐潟がかなり高いことが分かります。

ハスは佐潟のシンボルとして長年、地域に愛されてきました。消滅したことにより佐潟の景観は大きく変わり、水質も悪化。新潟市は今年度、カメの捕獲なども行うラムサール条約の関連事業として、およそ3600万円を予算に盛り込みました。

カメの被害を食い止め、ハスの復活を目指して、新潟市では罠を仕掛けて生息数の把握などを始めています。今年度の捕獲目標は約1000匹です。

新潟市役所 環境政策課 佐藤貴光 課長補佐
「カメを減らしていきながら、ハスが自生して昔の、かつての佐潟の姿になるようなところを目標にやっていきたい。多分2~3年では終われないと思うので、10年スパンでの取り組みになってくるかなと思います」

中務謙吾さん
「みなさん、おはようございます。まず1点目は、カメの捕獲をみなさんに手伝ってもらいます」

中務さんら佐潟クリーン大作戦の会は、佐潟周辺の環境保全のために、去年からカメの捕獲を進めてきました。中務さんはこの日、地元の小学生たちに佐潟周辺の現状を知ってもらい、取り組みを次世代へつなごうと、総合学習の講師を務めました。

佐潟の隣にあり、同じ状況となっている御手洗潟で子どもたちが罠を引き上げると…

児童
「うわ、めっちゃいる!おー!」

中務謙吾さん
「いっぱい入っているね。11匹だね」

罠には大量のミドリガメが!
獲ったミドリガメは自然界に放つことが法律で禁じられているため、多くは駆除していますが…

中務謙吾さん
「循環型エネルギーといって、カメを捕るのはいいけれど、じゃあ、何に使うんだということで、私たちが考えたのは 『堆肥』。肥料にして野菜を育てみようと」

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