遺伝子の異常で皮膚が赤くなったり、剥がれ落ちたりする先天性の難病「魚鱗癬(ぎょりんせん)」、国内の患者は200人ほどと言われています。

全国から患者とその家族が集まる交流会に今年、1歳の女の子とその家族が初めて参加しました。

年に一度のこの場所は、孤立することの多い家族に、前向きに生きる勇気を与えています。

先天性の難病「魚鱗癬」

魚鱗癬は遺伝子の異常によって皮膚が赤くなったり、硬くなって剥がれ落ちたりする先天性の難病で、患者は国内に200人ほどいると言われています。



6月22日から2日間、福岡県宗像市で「魚鱗癬の会」交流会が開かれ、全国から、患者とその家族およそ40人が集まりました。

「大阪から来ました。お願いします」

「三重県から来ました、2年生の濱口賀久です」

初めて交流会に参加した千尋ちゃん家族

患者同士の交流を深めながら日々の悩みや体験談を共有してもらおうと25年ほど前に始まったこの交流会。

今年初めて参加した家族がいます。

「満生千尋です。1歳になりました」

満生千尋(みついき・ちひろ)ちゃん(1)とその家族です。

100万人に1人の「KID症候群」皮膚の症状・角膜炎・難聴も

千尋ちゃんは、2日前に歩けるようになったばかり。福岡市内で3歳のお兄ちゃん・珀(はく)くんと両親の家族4人で暮らしています。

千尋ちゃんの母親 満生雛子さん(27)「ちーちゃんは癒やしの存在、家族の間で天使の子って言っている感じで、ちーちゃんがいるだけで、みんな幸せになれている気がします。」

去年3月に生まれた千尋ちゃん。生まれてすぐ、魚鱗癬の症状が疑われ、生後9か月のころ、魚鱗癬の一種である「KID(けーあいでぃー)症候群」と診断されました。

「KID症候群」は皮膚の症状に加え、角膜炎と難聴の症状が出る病気で、発症は100万人に1人と言われています。

現在、治療法は確立されていません。

人にうつることはありません。

「出産後は毎日泣いていた」

千尋ちゃんの母親 満生雛子さん「出産後は別々に入院していました。とにかくちーちゃんのことが気になるけど、病院に行ってちーちゃんに会いに行くのが怖いというのはありましたね」

当時は毎日泣いていたといいます。

千尋ちゃんの母親 満生雛子さん「もちろん大切に育てる気持ちには変わりないけど、難病というのを知っていたので、受け止められるかも怖かった。申し訳ないという気持ちが一番大きくて、やっぱり元気な身体で産んであげたかったので、毎日布団被って泣いて・・・」

保湿ケアと目薬が欠かせない

千尋ちゃんは1日2回の全身の保湿ケアに加え、角膜を保護するため1日6回の目薬が欠かせません。また、体温調節ができないため、外出時は身体に保冷剤を巻くようにしています。

いまだに分からないことが多い難病の「魚鱗癬」。

家族は少しでも情報を集めたいと、交流会への参加を決めました。

初めて出会った同じ病気の患者と家族

おいしいご飯を食べたり他の子供たちと遊んだりして楽しむ千尋ちゃん。

そして両親は、情報を得るために参加者に話を聞いて回ります。交流会には、千尋ちゃんと同じ「KID症候群」の患者も参加していました。

兵庫県に住む田村桜花さん(23)とその家族です。

田村桜花さんの母親「補聴器付けたら耳だれが出て補聴器も付けられなくって・・・」

桜花さんは、徐々に視力と聴力が低下、今は目がほとんど見えず、耳も聞こえません。

桜花さんの母「いずれきこえなくなる可能性があると聞いていたので、言語の勉強は手話で始めたんですよ。子供の訓練学校に紹介してもらって、まず手話を教えてもらいました。そして見えにくくなったので今は、手話の形を手で触って読み取る『触手話』に切り替えてコミュニケーションをとっています」



お互い「KID症候群」の患者に会うのはこれが初めてでした。

薬の話、コミュニケーションの取り方、千尋ちゃんの両親は、多くの情報を共有しました。

偏見とたたかう日々 立ち上げた患者の会

「魚鱗癬の会」を立ち上げた梅本千鶴さんは、息子の遼さんが魚鱗癬です。

いわれのない偏見をなくしたいと奮闘してきました。自身も悩みながら息子を育て、そして多くの家族の声に耳を傾けてきました。

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