SBC佐々木一朗アナウンサー:
「いま上信越自動車道の上り線を走っております。碓氷軽井沢インターチェンジを過ぎました」

長野から東京方面へと向かう途中で見えてきたのは…

佐々木アナ:
「クレーンが見えてきて、うおーすごい!足場が組まれてるんですかね。山の中の要塞みたいですね」

それはまるで『要塞』。

長野と群馬の県境に位置する上信越道の北野牧(きたのまき)トンネルの上にそびえ立ちます。

この「要塞」の正体は?

NEXCO東日本長野工事事務所所長・小暮英雄さん:
「トンネルの直上に、75度くらいの角度でそびえたっている岩山があるんですね。その高さがだいたい70メートルありまして、それを取り除くということになっております」

北野牧トンネルの上にある、高さ70メートル、およそ9万5000立方メートルという巨大な岩の塊。

『要塞』の正体は、それを覆う34段もの足場でした。

巨大な岩の塊を取り除くため、工事は7年前から始まり、去年からはついに掘削作業に着手しました。

Q・岩の塊をなぜ取り除くのですか?
小暮さん「将来の落石のリスクが取り除かれることになります」

岩の塊の掘削は、万が一の落石対策のためで、開通している高速道路のトンネルの上で大規模に行われる工事は、かつて類を見ないといいます。

小暮英雄所長:
「今から1年くらい掘削作業進んでまいりましたが約20メートルくらい下がってまして高さにして50メートルになっています」

「要塞」の頂上がまさに掘削の現場です。



Q・岩の塊をどうやって取り除くのですか?
小暮英雄所長「一番最初に穴をあけるためにクローラドリル(削岩機)があります。だいたい80センチ間隔で穴をあけていきます。それを終わりましたらビッガー(割岩機)というもので差し込みます。ひび割れを入れていきます。そしたら右手のブレーカーで山を崩しています。(手前から細かく?)そうです。細かく砕いたものがこちらにありますので、これをバックホーで積み込んでダンプに載せます」

一般に山岳トンネル工事などでは、火薬を使ったいわゆる『発破工法』で岩盤を砕くといいますが、今回は採用しませんでした。

なぜならそれは、工事現場のすぐ下に高速道路が走っているから。

一つの落石も許されないため、時間をかけてでも安全に着実に岩盤を砕く工法を選択したといいます。

NEXCO東日本長野工事事務所所長・小暮英雄所長:
「『要塞』の足場を設置するにあたって、こういった高強度の金網をセットして、落石を掘削時に高速側へ落とさないということで、全面的に覆っているんです」

金網のほかにも、長さ3~6メートルの鉄筋のボルトを1200本、巨大な岩の塊に直接打ち込み、岩盤を支えることで落石を防いでいます。

さらに、高速道路上を覆う屋根『ロックシェッド』も設置。

小暮英雄所長:
「いま高速道路上にいます。シェッドの上ですね。ちょっと乗ってると、やわらかい感じがすると思うんですよね。(そうですね少しクッションのような)実はこれです。これ土木用の発泡スチロールです」

こうした発砲スチロールが、万が一の落石の際にクッションとなるよう、およそ2メートルの高さに積み重ねてあります。

佐々木一朗アナウンサー:
「万が一落ちてきたとしても、ここからまた落ちるということははいですか?」
小暮英雄所長:
「そこはないように。本当に万全を期して」

過去に例がないとされる大規模な掘削工事。



落石対策以外にも特徴として挙げられるのが、自然環境への配慮です。

小暮英雄所長:
「これダンプで上がるとなると、かなり岩肌を崩さないといけないんですね。こんな自然豊かなところですから、なるべく地山の改変現地盤の改変はしたくないということで」

今回採用されたのが『インクライン』と呼ばれる工事用のエレベーターです。

25度の傾斜地をおよそ150メートル移動することができます。

掘削工事で砕いた岩は大型ダンプトラックに積み込まれ、インクラインで効率よく安全に運ばれます。

佐々木アナ:
「本当によくこの山の中に、これだけの大きなものを設置されたなというのが、正直な感想ですね」

環境に配慮した乗り物は実はもう一つ、それが…

小暮英雄所長「これがモノレールです。(この緑色の車体がモノレール?)そうです。(トロッコ列車みたいな)そうなんです」

資材や作業員の運搬に利用される大型モノレール。

近くで見るとかなりの急斜面です。

小暮所長「最初ガクンとします」
佐々木アナ「少し衝撃とともに動き出し始めましたけれども、けっこうレール見てみると急ですね」
小暮所長「急です。これからご案内するところに、38度という勾配があります。38度といいますと、白馬のジャンプ台が37.5度。それより若干キツイくらいですね」

高低差は130メートル400メートルの道のりを15分かけてゆっくり移動します。

安全第一、そして自然環境へも配慮した高速道路上の『要塞』。

その内部ではいまも掘削工事が行われています。

大林組上信越北野牧工事事務所所長・下村哲雄さん:
「(こうした工事っていうのはよくあることなんですか?)高速道路すぐ近くで山を取り壊すなんていう工事はまずないです。走ってるお客様は最優先ですので、我々はまずそこは絶対に石でもなんでも落とさない。いろいろな工夫をしながら進めております」

工事の完了は2029年春の予定です。

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