20日に告示された東京都知事選で、都選挙管理委員会の想定を上回る56人が立候補し、都内約1万4000カ所に設置されているポスター掲示板の掲示区画が足りなくなった。都選管は同日、一部の候補者自らに掲示スペースを継ぎ足してもらうことを決め、「候補者に手間をかけて申し訳ない」と謝罪した。告示日当日に掲示板を増設するのは全国でも異例。候補者や掲示板を管理する区市町村選管に困惑が広がった。(原田遼、三宅千智)

◆49番目以降は「自分で継ぎ足して」

 掲示板は届け出順でポスターを張る場所が指定されている。今回は4年前の前回選挙よりも18人分多い48人分を用意していた。

掲示板にクリアファイルなどを使って追加されたポスター(右)

 都選管は、届け出順で49番目以降の候補者に対して、既存の掲示板の外周に隣接する形で、選管が提供するアルミ合金板やクリアファイルなどを活用してポスターを張るよう求めた。

◆ベニヤ板なら億単位、「簡易版」は数千万円

 都選管によると、通常のベニヤ板の掲示板を増設する場合、「億単位」の追加費用が発生。クリアファイルなどを使えば8人分で数千万円に収まるという。  選管側で増設をしなかったことについて、織田祐輔・選挙課長は「候補者のポスターをしっかりと掲示することが法の趣旨。われわれができる精いっぱいの対応だった」と話した。  ◇  ◇

◆クリアファイルに挟んで画びょうで…

 「いつ取れてもおかしくない。不公平に感じる」。都選管に提供された用具で、自身のポスターを掲示板に取り付けた男性候補者は困惑気味に話した。  届け出順は50番目。掲示板には48人分しかスペースがない。20日午後4時ごろ、都庁近くの掲示板で作業を始めた。まずクリアファイルを2枚重ね、中にポスターを収納。掲示板の右端にファイルの左側を合わせて、画びょうで留めた。だが右側は固定できない。風が吹くと、揺れた。

◆「48人分で足りる?」指摘されてたのに

 それにファイルは完全な透明ではなく、やや白っぽい。「(図案が)ぼけちゃうから、そのまま張る方がいい」。2カ所目では、ファイルなしでポスターを直接、取り付けた。やはり「できれば、板を設置してほしい」と声が漏れた。

拡張用のクリアファイルの説明をする職員

 複数の区選管によると、3月から4月にかけ、都選管から「48人分の掲示板を用意するように」と指示を受けた。ある区の選管担当者は、政治団体「NHKから国民を守る党」が大量擁立の方針を示していたことから「48人分で足りるのか、という声はあったのに。公平性の面でも課題があるのでは」と首をかしげる。  別の区選管担当者は「事前審査は50人を超えていたが、告示当日まで実際に何人になるか見極められず、増設を指示できなかったのだろう」とおもんぱかりつつも「最初から60人分で用意しろと指示があれば…」とぼやいた。

◆スペースを用意していた区もあったが

 世田谷区選管では、候補者が48人を超える事態を見越して、掲示板の脚を通常より長めにし、下部に継ぎ足せるスペースを確保していた。ところが、都選管はクリアファイルを支給する方策を取った。区選管事務局の織田健一次長は「風で飛ぶなど、安全面は大丈夫なのか。候補者に増設させるなんて、聞いたことがない」。委託業者の見回り時に、異常がないか確認することも検討している。  「ポスターが風に飛ばされたら…」という心配は他の区でも。ある区選管の担当者は、都選管に対応を確認するために電話をかけ続けたが、午後4時時点でつながらない。「(風の影響なども)考えた上での今回の対応なのか」と不満をあらわにした。(原田遼、須藤英治、小形佳奈、奥野斐) 

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