骨や軟骨を作る遺伝子の変異が原因で身長が伸びない病気「脊椎骨端異形成症」。非常にまれな難病で、生まれながら病気と闘っている小学生が大分市にいます。

根本的な治療法なく…呼吸機能に影響

大分市に住む小学3年生の是永橙吾くん。背骨をまっすぐにする側弯症の治療のため、半年に1回、福岡市の病院で手術を受けています。

母・菜絵さん
「筆圧が強くなった。鉛筆をギュッと持てなくて薄かったんですけど、だいぶ書けるようになった」

橙吾くんは身長が伸びない病気「脊椎骨端異形成症」で、生まれた時の身長は40センチ、体重は2860グラムでした。現在の身長はおよそ85センチです。

母 菜絵さん:
「臨月に入った時、妊娠中にわかった。『思うように身長が伸びてないので大きい病院で診てもらってください』と言われ、もうなるようにしかならないかなという感じでした」

「脊椎骨端異形成症」は、2型コラーゲン異常症(患者数は全国で約1500人と推定も厳密には不明確)の病気の一つで、脊椎の変形により呼吸器障害や筋力低下などが生じることがあり、根本的な治療法はないとされています。

福岡市立こども病院整形・脊椎外科 柳田晴久医師
「橙吾くんの側弯症は早い時期から起きていて、なおかつどんどん進行するタイプなので、呼吸機能に影響し肺活量がおちることがある。10代後半になると、背中の痛みも出てきます」

小学1年生から半年に一度の手術

手術当日の朝、橙吾くんは前日から入院していましたが、風邪の症状があったため、急きょ延期も検討されました。

母・菜絵さん
「『肺炎になる可能性がなきにしもあらずなんですが、どうしますか?』と言われて。家が近かったら『延期します』とすぐ決断できるんですけど…」

悩んだ結果、母親の菜絵さんは手術を受け入れました。以前は手術前に「怖い」と泣いていた橙吾くん。5回目となる手術を前に、「不安は最初はこれぐらい。今はこれぐらい」と手を使って示し、ずいぶん不安が小さくなったことを明かしてくれました。

橙吾くんが小学1年の時から受けている手術は、脊椎の成長を妨げずに側弯を矯正する「グローイングロッド法」と呼ばれる治療法です。脊椎にインプラントを設置し、それを2本のロッドで連結。このロッドは延長できるようになっていて、これを半年に1回程度伸ばしていく方法です。手術は全身麻酔をして処置が行われます。

柳田晴久医師
「1回につき5ミリから1センチぐらい伸ばす治療を行い、成長が頭打ちになったあたりでがっちり固めてしまう手術をする。いま8歳なので、4・5年は少なくとも伸ばしていきたい」

手術時間はおよそ2時間。今回は背中のロッドを6ミリ伸ばしたということです。

母・菜絵さん「お疲れ様がんばったな」
橙吾くん「うん」

術後の橙吾くん

手術後2日間は安静にして、その後は経過を診るため1週間程度入院します。

母・菜絵さん
「順調でよかったです。術前・術後の説明も丁寧にしてくださるので安心しています」

なんでちっちゃいの?

手術によって姿勢は改善され、体力もついてきました。退院後は、元気に学校生活を過ごしています。

橙吾くん
「学校の友だちから『久しぶり』と言ってくれた。先生は『どんぐらい伸びた?』とか興味津々やった」

しかし、3年生になって身長およそ85センチの橙吾くんは、学校で不快な思いをすることがあるといいます。

母・菜絵さん
「1年生からしたら自分より上のお兄ちゃんが自分より小さいのが気になるみたいで、『なんでちっちゃいの?』と言ってじっーと見てくるらしい。メンタル面で壁にぶちあたっている」

橙吾くんの病気が含まれる2型コラーゲン異常症の患者・家族の会の代表は次のように説明します。

毛利環代表
「色んな人がいるんだよと子どもに説明することが大切。学校で一緒に過ごしていくと自然にお互い支えあって過ごせると思っている」

菜絵さんは学校や病院、全国の仲間の支えを感じながら難病のわが子とともに生きる決意を強くしています。

母・菜絵さん
「この8年間で何とかなるなとすごく思えるようになった。支えてくれる人も多いですし、医療も発達してサポートもあることがわかった。みんなといろいろできるようにやっていきたい」

難病に向きあいながら前向きに生きる親子の姿は、病気への理解を広げることにつながっています。

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