◆単純な粉飾じゃない、悪意を持った巧妙手口
堀正工業の債権者らへの取材によると、同社は三菱UFJとみずほの両メガバンク、全国の地銀、信金など幅広い金融機関から借り入れがあった。粉飾決算で受けた融資を、別の粉飾決算による融資で返済する「自転車操業」を長年続ける中、「粉飾の手口も巧妙になっていった」(捜査関係者)とみられる。 取引先の企業から紹介され、堀正と取引を始めたというある銀行は、数年前から「在庫を増やしたい」という名目で融資を申し込まれるようになった。決算書には、借入先としてメガバンクなど3、4行だけが記載され、勘定科目にも「明らかに不自然な箇所はなかった」という。 堀正に融資した別の地銀の担当者も、「特定の勘定をいじった単純な粉飾ではなく、銀行をだまそうと巧妙に作った決算だった」と振り返る。地方経済の停滞で融資先が見つからない地銀にとって、在京企業の申し込みはまたとない好機。「悪意を持って本気で作り込まれたら、また同じことが起きるかもしれない」と危機感を募らせる。 捜査関係者によると、堀正は資産の水増しや負債の圧縮など、緻密な調整で決算書を整えていたとみられ、ノウハウを蓄積した「手引」もあった。融資金は、堀容疑者が始めた農業や飲食業などの関連会社の運転資金に充てられたほか、遊興費や高級外車の購入に使われたという。(佐藤航) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。