おととし、広島市の保育園で園児が行方不明になり、その後亡くなった事故で、男の子の両親が18日、会見を開きその胸の内を語りました。両親は保育園を運営する広島市に対して、損害賠償を求める訴えを起こしています。

この事故はおととし4月、広島市西区の市立保育園で5歳の男の子の行方が分からなくなり、その後、近くの川で見つかり、死亡が確認されたものです。

18日、遺族は会見を開き「同じような悲しみを二度と作ってほしくない」と、その想いを語りました。

▼記者との一問一答

(母)「2歳から通っていたので安心して預けていた。突然いなくなって、たくさん探したが、最後には助けることができなかったので、とても悲しい」

(父)急にいなくなって悲しいですが、娘もいるので、とにかく返してほしいです。

Q市に訴えたいことは

(母)やはり、息子がいなくなってから1時間後に通報だったので、あまりにも遅すぎる。警察に連絡するまでの時間が遅すぎた。マニュアル通りとは聞いたが、おかしいのではないかと家族で話をしている。

Q亡くなったあとの精神的負担について

(母)妹がいるので、なるべく暗い表情は出さないようにしている。心の中でつらい思いをしているのだろうと。三人で頑張って生活をしている。

Q市は検証委員会で再発防止策について

(母)いまさらされてもという気持ち。いつも子どもが亡くなるニュースを見るたびに思うが、命がなくなってから改善するのではなくそうなる前にするべき。保護者説明会で子ども未来局の担当者が「亡くなった命はもう戻ってこない、息子が教えてくれた」と言われた。その言葉がでてくる市はおかしい。悲しかった。教えるため、フェンスを変えるために息子は亡くなったのではない。基準を変えるために息子は亡くなったのではない、とても悔しい言葉だった。

Qご両親がいる場で?

(母)はい、その後に何度か担当者と会ったが何度も同じ言葉がでてきたので「そういう言葉を言うのはやめてほしい」と言った。

Qなぜ市はそんな言葉を

(母)どういう気持ちかは私には分からない

Q今後裁判でどのような点を論点に

(母)やはり通報までにかなりの時間がかかったこと、11時20分に息子がいなくなって、通報が12時28分。死亡推定時刻が1時。早く連絡して警察と探したら見つかった可能性があったのでは。

Q保育園にどのような問題があったと考えるか

(母)保育士の人数が足りていないという点。人員には限界がある。人数が足りないのであれば施設をしっかりしてもらう必要がある。

(父)センサーをつけてすぐに分かるようにすれば良いと思う。園児が出たら音が鳴るような。

Q市に求めることは

(母)もう二度とこんなことがないように、同じような悲しみを二度と作ってほしくない。

Q再発防止策への評価は

もっと早くしてほしかった。息子が亡くなってからでは息子は戻ってこない。

Qどんな子どもだった

5歳で言葉もちょっとずつ覚え始めていた。家族みんなに愛される子でした。亡くなる翌年には小学校に上がる予定だった。亡くなる次の週には就学相談に行く予定だった。1年生になるのが家族みんな楽しみだった。ラーメンが好きで、嫌いな食べ物も多かったが、成長が少しずつ見えていた。それを見ることができなくなってしまって。最後には一人で、川の水を飲んで、苦しい思いをして一人さびしく亡くなったのかと思うととても悲しくて。助けてあげられなかったことが本当に申し訳ない。もっと息子の成長が見たかったです。

事故をめぐっては、去年、有識者でつくる検証委員会が報告書をまとめ、男の子がどうやって園外にでたのかは特定できなかったとしながらも、園庭の生垣のすき間などから「園外に出ることができる環境にあった」ことなどを指摘していました。

検証委員会の報告書を受け、市は、去年から生垣だけで敷地を囲っていた10の園などに、高さ150センチ程度のフェンスの設置を順次行っているほか、すべての市立保育園の門に防犯カメラを取りつけが完了したということです。広島市は園児すり抜け防止策の検討は引き続き続けるとしています。

男の子の両親は、保育園が行動を把握すべき注意義務を怠ったほか、園児だけで園外に出ることができる場所が複数あったにも関わらず施設の修繕を怠ったとして、園を運営・管理する市にあわせておよそ8800万円の損害賠償を求めています。

代理人の弁護士によりますと、両親はこれまで広島市と事前に交渉をしましたが、市が支払いを拒否したため提訴したということです。

裁判の提訴について広島市こども未来局は先月提訴があった時点で、「内容を確認して対応したい」としていました。

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