那覇空港の西側、かつて漁業が盛んだった那覇市大嶺地区。今も、伝統の追い込み漁が受け継がれています。次の世代に残そうとベテラン漁師や地域の若者が一緒になって行った漁にRBCのカメラが密着しました。(取材:大城譲カメラマン)
浅瀬で網の中に捕らえられたたくさんの魚たち。
刺し網を使った漁法は、那覇市大嶺に昔から伝わる追い込み漁です。
かつて漁業で栄えた大嶺地区は、現在では那覇空港となっている場所にありました。しかし戦中戦後にかけ、飛行場建設のために土地を追われた歴史があります。この一帯の西側には、今でも豊かな漁場が広がっています。
6月8日、浜に集まったのは大嶺地区の男性たち20人ほど。初めて参加する青年やベテランの漁師もいます。そして漁を取り仕切るのは漁師歴50年の赤嶺正次郎さん(78)。伝統の追い込み漁を誰よりも知っているベテランの漁師です。
ーーー追い込み漁の前日
ー今日の気持ちはどうですか?眠れましたか?
▽赤嶺正次郎さん
「眠れない。睡眠不足になっている。人数が多いって聞いているから」
「先輩たちから、ニーセーター(若者たち)に教えないといかんよと言われたから止めることができなくなっているんですよ」
▽追い込み漁に初めて参加する青年
「先輩たちから代々継いできて、こういうのを絶やさずに守っていければ」
「こういう漁があることを全く知らなかったものですから参加しました」
集まった日は、県内で旧暦の5月4日「ユッカヌヒー」と呼ばれ、漁の安全や豊漁を祝う日の「前日」です。
ユッカヌヒーには各地で「ハーリー(競漕行事)」が行われ、大嶺地区でも、那覇市の指定無形民俗文化財にもなっている「地バーリー(地上で行うハーリー)」がに執り行われます。追い込み漁は、その前日に行うのです。
追い込み漁でとってきた魚で、「地バーリー」にやって来る人たちをもてなすためで、古くからの慣わしだそうです。豊漁を願う行事の前日に漁をするというのも、面白いものです。
瀬長島の舟溜まりを出発してから漁場へと出発。赤嶺さんの誘導で15分ほどで漁場に到着します。
魚に警戒されないようにエンジンがない小舟に乗り移り、網がねじれがないように慎重に降ろしていきます。
そして赤嶺さんが海に飛び込みました。
海中にはところ狭しとサンゴが広がっています。
▽赤嶺正次郎さん
「サンゴよ。ものすごく綺麗さ」
サンゴを傷つけないように丁寧に網を張っていきます。魚はより深いほうへと逃げる習性があるため、海底にしっかりと這わせます。
今回初参加のメンバーも海に飛び込みます。網を縮めて魚を追い込む作業はチームワークが大切です。
最後には網を結んで魚を閉じ込めます。
網の中には多くの色とりどりの魚が入っています。大漁!かと思っていましたが…
【舟に網を引き揚げる】
「せーの」「少ない!」
「さんご礁の中に入るのに、獲れるか」
▽赤嶺正次郎さん
「入ってなかった、入ってはいたけどサンゴの中に魚がいったら、どうしても出しきれん」
「シマ(集落・地域)の伝統行事は守っていかないと、「無くなったら付き合いが無くなるさ。人間の付き合いが。自分が元気なあいだは、子どもたちを連れて、させてみたいと思っている。だから跡継ぎが出てくるのを待っておかないといけない」
ー今日みんなで行けてどうどう思います?
「最高!とっても良かった」
古くから伝わる漁法は集落の絆を繋いできました。かつての景色が変わった今も海の男たちのたくましさとその精神は確実に受け継がれています。
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