▽特別授業
「洋服を着た状態で ”泳ぐ” のではなくて、助けが来るまで ”浮いて待つ”。みなさんに今日おぼえてもらうのは、浮いて待つこと」

水難事故による犠牲を減らそうと、対処法を子どもたちに教えるボランティア団体が沖縄県内で活動している。その名も「UITEMATE」。どういうことなのか。この団体の特別授業を取材した。

那覇市の小学校で開かれた水泳の授業。子どもたちは水着ではなく、洋服を着ていた。

服を着たまま泳ぐ「着衣泳」を教えるのは、仲村翔さん。消防士でもある仲村さんは、11年前にボランティア団体を立ち上げ、県内の小中学校などを回り、水難事故を防ぐための特別授業を行っている。

▽UITEMATE沖縄・仲村翔代表
「沖縄県では過去5年、交通事故の死亡者数よりも水難事故の死亡者数が圧倒的に多くて、水難事故防止教育というのはすごく大事なことだと思っています」

近年、県内で増加傾向にある水難事故。2023年は、過去最も多い169人が事故にあい、死者は59人にのぼった。

水難事故を少しでも減らすためには、服を着たまま溺れてしまったときの対処法を知っておくことが大切だ。仲村さんは、水に浮きながら助けを待つ方法を教えている。

▽UITEMATE沖縄・仲村翔代表
「体は2%しか浮きません(水面から上に出ない)。その2%を口と鼻だけにもってきて、口と鼻だけを水面から上に出して呼吸を確保する。あとは全身、ほかのところ、手足は全部水面の中に入れるという方法で教えています」

体の2%というと、全身のうち、両手の手のひらほどしかない。溺れてしまい、慌てて助けを呼ぼうとして手を上げると…たちまち体は水の中に沈んでしまう。


溺れないためには、全身の力を抜き、鼻と口を水面から出すための姿勢を取る必要があるという。実際にやってみると、ペットボトルの力を借りても、最初はなかなかうまくできない。

練習を重ねると、子どもたちは徐々にコツをつかんできた。

▽UITEMATE沖縄・仲村翔代表
「浮いて
まて、という言葉を思い出して、講習会の内容を思い出して、実際もし水難事故にあった場合、落ち着いて慌てずに行動するよう伝えています」

しかし、「浮いてまて」は、安全装備もなしに溺れてしまった時に生き残るための最後の手段。授業では、溺れないための備えとして、ライフジャケットをつけることの大切さも伝えている。

▽参加した児童
「ライフジャケットを着ることで、本当に浮けるってことが実感できてよかった」

「着けるとより安全に浮くことができることがわかりました。いろんな人に水難事故にあった時の対処法を伝えていきたいと思いました」

▽UITEMATE沖縄・仲村翔代表
「大人はこれからのシーズン、小さい子ども、中高生から目を離さないというのが大事。備えとしては必ずライフジャケットをつけて遊びに行く。海や川、釣りに行く。そのことを大人が伝えるのは責務だと思っていますので、子どもにしっかりと伝えていくっていうことが大事じゃないかなと思っています」


海や川で遊ぶ機会が増えるこれからの季節。安全に、安心して楽しむためにも、備えが必要だ。仲村さんは、なにより大事なのは溺れないための備えをだとして次の3点を挙げている。

・ライフジャケットを着ずに海や川に入らない=必ずライフジャケットを着る
・管理されていない海や川で泳がない=管理された場所で泳ぐ
・海や川では子どもだけで遊ばない=大人が目を離さない

そして、もし溺れている人を見つけたときは次の3つを心掛けてほしいという。

・大人の助けを呼ぶ
・溺れている人を励ます
・浮くものを投げる


水難事故の犠牲を出さないためにも、これらの注意事項を1人ひとりが心にとめ、安全に海・川のレジャーを楽しんでほしい。
(取材:山田耕平)

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