県が打ち出した中学校の給食費の無償化政策をめぐる論争は、急速に議論が活発になっています。以下、取材した平良優果記者が解説します。(放送で使用した図解は写真からご覧いただけます)
(平良記者)
まず、学校給食の費用負担について学校給食法では、給食を実施・設置するのは市町村で、設備費や調理にかかる人件費は市町村が負担し、食材費は保護者が負担すると定められています。
各家庭が負担している「給食費」といわれる部分はこの食材費にあたります。
2023年度、県内の中学生1人あたりの給食費は年間に約5万円、小学生は約4万4000円となっていて、県の調査では、保護者のおよそ4割が「給食費の負担を感じている」と回答しています。
無償化済みの市町村と「一部助成」の市町村が県内に混在
現在、県内ではすでに17市町村が小中学校の給食費を無償化していて、18市町村が一部助成を行っていますが住む自治体によって保護者の負担額には差があります。
特に子どもの貧困が課題となっている沖縄では公的支援を必要としている家庭は少なくありません。こうしたなか玉城知事は、2025年度から中学生の給食費を無償化する市町村に、その費用の半分を補助する計画を発表しました。
県が補助するのは、「家庭が負担する食材費の半分」です。自治体は元々、人件費などを負担していますが、玉城知事が発表した無償化政策に対応しようとすると、これに食材費の半分を市町村が負担しなければなりません。
市町村が取り組めば家庭の負担はなくなりますが、県が半分負担するとはいえ、現行案では各自治体の財政規模や財政状況に左右され、地域差が解消されないという懸念があります。
この計画には各市町村から様々な意見が出ています。
▽石嶺傳實 読谷村長
「我々は現状、給食費を無償化してないものですから、県からこのように2分の1、お金が出るということについては非常に喜んでいる」
▽渡久地政志 北谷町長
「もちろん全額補助していただければとても助かるが、そもそも私たちにも責任がありますので、そこはやはり2分の1の負担というのは妥当なのかなとも考えています」
市長会は一斉に反発「給食費無償化は知事公約」「さらに格差生じる」
一方、知事に「全額県負担による給食費無償化」を要請した市長会の市長たちは次のように反応しています。
▽桑江朝千夫 沖縄市長
「知事の唐突な県案を撤回せよということにつきます」
▽松本哲治 浦添市長
「そもそも給食費完全無償化は知事の選挙時の公約なんです。なぜ、ああいう(自治体が半額負担の)発表をしたんですかというところです」
▽徳元次人 豊見城市長
「(知事の)一番の矛盾はさらに格差を生じさせるということではないか」
こうした声について玉城知事はー
▽玉城知事
「できるだけ早い時期から(無償化を)始めていくためには、早いタイミングからの県の考え方をお示しをして、そこで意見交換をどんどん詰めていくというやり方も必要だと思います」
「誰ひとり取り残さない社会を築く、これは私の命題であります。そのために市町村の意見もしっかり聞いて、できる限り公平な制度となるように全力で頑張っていきたいと思います」
(平良記者)
知事の政策発表や市長たちの素早い反応は、明日7日から始まる県議会議員選挙を前にしたものでもあるということも無視できません。大切なことは、今後継続的な財源が必要になる給食費の無償化をどう実現するのか。子どもたちが住む場所に影響されず、同じような支援が受けられるような対応が求められるということです。
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