ことし3月、名古屋市内にオープンしたこちらのおむすび屋さん。ここには、おむすびを食べる子どもたちを笑顔にするある「思いやりの仕組み」があります。

(小学3年生)
「いただきます。おいしい! 元気になる」

名古屋市中区栄のホテルの1階に、ことし3月にオープンしたおむすび屋「まんまる村」。お母さんと一緒に店を訪れた男の子。おむすびを買うときに使ったのは、店の壁に貼られたその名も「お互いさまチケット」。チケットには1枚1枚、メッセージが書かれた付せんが貼られています。

(店員)
「『召し上がれ』と書いてある」

この「お互いさまチケット」、一体どういうものなのか聞いてみると。

(まんまる村 伊藤麻美代表)
「子どもたちにおいしいご飯を食べてほしいと思う大人たちが『お互いさまチケット』を買い、子どもたちが使って、自由に食べてもらうという仕組み」

店を訪れた人が、誰かの代わりに500円か1000円のチケットを購入し、大学生までの子どもはそのチケットを使って、「無料」でおむすびを食べることができるんです。おむすびを食べた男の子のお母さんは。

(男の子の母親)
「本当に助かる。シングルマザーで働いていて忙しくて、どうしてもご飯が遅くなるときに『助けて』と言える環境がすごく幸せ」

発祥は福島県 東日本大震災で寄せられた支援に感謝して始まる

おむすびを食べ終えた男の子は、店にあるノートに、チケットを購入してくれた「誰か」に向けてメッセージを残します。

(小学3年生)
「おにぎりがとっても美味しくて感謝です」

この「お互いさまチケット」の仕組みは、元々、東日本大震災で寄せられた支援に感謝して福島県で始まりました。

その後、全国に広がり、愛知県ではこちらの店が初めて。オープンから2か月で約50人の子どもが「お互いさまチケット」でおむすびを食べて「笑顔」になりました。

この日、おむすびと一緒にチケットを購入するお客さんが…

(客60代)
「『たくさん食べて元気になってね』と(書いた)。『美味しかった』『元気出たよ』と受け取ってもらえたら」

(客50代)
「『お腹いっぱい食べてね』と(書いた)。すてきな取り組みだなと思ってぜひ協力したいと」

『お互いさまチケット』はいま、壁にびっしりと貼ってあります。

(まんまる村 伊藤麻美代表)
「貼りきれなくて。『善意の渋滞』と呼んでいる」

購入済みでお店にある「お互いさまチケット」は現在150枚ほど。店に来る子どもの数より、チケットを購入する大人の数が上回り、店では最近、このチケットを使って学童保育施設や子ども食堂などにおむすびを渡しています。

(自立援助ホームいっぽ 青木佑磨さん)
「こんにちは」

愛知県春日井市にある「自立援助ホームいっぽ」の代表、青木佑磨さん。青木さんの施設は、何らかの事情で親とは暮らせなくなった少年たちの自立を助ける場所で、この日は施設で生活する高校生にメッセージとともにおむすびを渡すために店を訪れました。

(自立援助ホームいっぽ 青木佑磨さん)
「心を込めておにぎりを握ってくれているので、それを渡したいと思った」

国のデータでは17歳以下の子どもの8.7人に1人が「一般的な世帯の半分以下の所得で暮らす」、いわゆる貧困状態にあたります。さらに「ひとり親世帯の子ども」に限ると、実に2.2人に1人が貧困状態となっているんです。

(まんまる村 伊藤麻美代表)
「子どもの時期が一番体や脳を作る。この地域の皆さんがどんどん取り組んでもらえれば」

「お互いさまチケット」という名のこの思いやりの仕組み。さらに広がって、子どもたちの笑顔が増えていくといいですね。

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