たったひとりでオーケストラのようなドラマチックな音楽を奏でる、5次元キーボードの日本人初の奏者で作曲家の薮井佑介さん。

薮井さんは、岡山市出身。4歳でエレクトーンを始め、高校生で「YAMAHAジュニアエレクトーンコンクール全国大会 2004」でグランプリを獲得しました。

世界初5次元キーボード Seaboard(英国ROLI社開発)を巧みに弾きこなすことのできる世界でも数少ない奏者・作曲家の一人です。

5次元キーボードとは…「指先の感触」で音を自在に操る電子楽器

5次元キーボードとは、米国アカデミー賞6部門を獲得した音楽映画「ラ・ラ・ランド」で主人公が弾き注目された電子楽器で、指先の感触(①押す②押し込む③揺らす④滑らす⑤離す)でさまざまな音の表現ができます。

キーボードを押し込むと深い音になり、その指を揺らすと、音も揺らぎます。また、ボード上で指を左右上下に滑らすと、その力加減やスピードに合わせ音が自在に変化してゆくのです。

さらに、空中に手をかざすと、その動きに合わせて馬のいななきや風の音などさまざまな音が出る「AR楽器」。

薮井さんは、そうした5次元キーボードやAR楽器など10台以上の最先端の電子楽器を、両手両足、膝、全身で弾きこなします。まるで、たったひとりで壮大なオーケストラを演奏しているかのよう。

戦国武将の生涯をドラマチックに表現 アメリカで高く評価された「サムライ・アーティスト」

そんな薮井さんが作曲した「Sengoku Warlord -Like the Wind-(邦題:風の如く ~宇喜多秀家によせて~)【動画】」は、戦国武将の宇喜多秀家の生涯を描くもので、2022年4月、エンターテイメントの国際コンペティション「LIT Talent Awards 2022(アメリカ)」でプラチナ賞・金賞を受賞しました。

モチーフとなった宇喜多秀家は、豊臣秀吉に寵愛され、秀吉の養女・豪姫を正室とし、27歳で豊臣政権の五大老に上り詰めたものの、関ケ原の戦いで敗れ八丈島に流刑となりました。

薮井さんは、歴史を学びながら秀家の生まれた亀山城などゆかりの地に足を運び、時間をかけて作曲したといいます。

曲は、波乱万丈な運命をたどった秀家の喜びや哀しみをドラマチックに描くもので、最新の電子楽器を駆使して、馬のいななきや風の音、刀のぶつかる音、女声のコーラスなどがそれぞれの場面に巧みに配置されています。

筆者は、その演奏を間近に聴きましたが、それらをたったひとりで操る奏法はもちろん、曲の構成の見事さにも驚きました。

なんと、この曲に楽譜はないというのです。薮井さんが求める音をしかるべきタイミングで奏でるため、時間をかけて入念にプログラミングしているといいます。

薮井さんは、2015年頃から「日本の歴史文化を音で綴るプロジェクト」として、これまでに聖徳太子や出雲神話、津山の蘭学者・宇田川と幕末、西大寺観音院の会陽などをテーマに楽曲を制作・演奏しています。

現在は宇喜多秀家に続きその父、直家をテーマとした曲作りのために取材中。今年11月、宇喜多家ゆかりの場所で初披露する予定だということです。

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