31日、公式確認から59年を迎えた「新潟水俣病」。
“マイクオフ”で問題となった被害者団体と環境省との懇談会が新潟で9年ぶりに開かれました。環境省側からは最終解決へ向けた具体的な政策は示されず、団体からは怒りの声が上がりました。

「新潟水俣病」の公式確認から31日で59年。
新潟市 北区の「県立環境と人間のふれあい館」では歴史と教訓を後世に伝えようと県主催の式典が開かれ、新潟水俣病 阿賀野患者会など4つの被害者団体のほか、花角知事や環境省の国定勇人政務官らが出席しました。

新潟水俣病阿賀野患者会 曽我浩 会長代行
「水俣病のような公害を二度と起こさないように声を大にするものです。そして私はこの場でまだ水俣病は終わっていない。どう語り継いでいくか、高齢化した被害者にとって大きな問題です。きょうのつどいを機にぜひ検討していただきたい」

花角知事
「歴史を知り、教訓を考える事が大切だと考えています」

この後、被害者団体は実に9年ぶりになる環境省との懇談会に臨みました。

関係者が懇談会開催への思いをひと際強くしたのが5月1日、熊本県で開かれた伊藤信太朗環境大臣と関係者との懇談会でした。

水俣病患者連合 松崎重光 会長
「私はいつも家内と話していました」

環境省の職員
「申し訳ございません。話をおまとめください」

水俣病患者連合 松崎重光会長
「…」

団体側が発言する際、持ち時間の3分を過ぎたことを理由に環境省側がマイクの音を絞り、懸命の訴えを遮ったのです。

県内の被害者団体はこれに抗議するとともに、新潟での懇談会の開催と伊藤大臣の参加を求めるよう県に要望しました。

しかし…
31日の懇談会に伊藤大臣の姿はありませんでした。

代表して出席した国定勇人環境大臣政務官は冒頭、熊本県でのマイク遮断問題を謝罪し、伊藤大臣との懇談の場を作ると約束しました。

国定勇人 環境大臣政務官
「決して許されてはならない行為によってその思いを踏みにじってしまったことに、改めて環境省を代表致しまして心からお詫びを申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。大臣は必ず皆さま方との意見交換の場を近いうちに設けます。それは私が責任を持って、その橋渡しをさせていただきます」

4月の新潟水俣病第5次訴訟の判決で、水俣病と認められた皆川栄一原告団長は、長年苦しんできた自らの症状や認定を求めてきた思いを訴えました。

新潟水俣病第5次訴訟 皆川栄一原告団長
「頭の中でセミが何匹も泣いているような感覚で、もはや時間はありません。本当に1日でも早い解決をと望んでいるのが私たちの現状であります。私たちの切実なるこの思いを、どうか環境大臣に伝えて届けていただきたいと」

中村周而 弁護団長は9年前の2015年に新潟で開かれた懇談会の際にも、環境省側が予定の時刻を過ぎたとして懇談を打ち切ろうしたことに触れました。

新潟水俣病第5次訴訟 中村周而弁護団長
「前からそういった時間制限というのは行われていたわけなんですよ。ではなぜ、それがまた同じような形で繰り返されたのかと。『これから真摯に被害者の皆さんの話を真摯に聞きます』と言ってもですね、本当に信用できません」

これに対して国定政務官は…

国定勇人 環境大臣政務官
「なかなか皆さま方からの信頼を、きょうこの時点ですぐに回復できるとは全く思っていません。水俣病という存在を環境省として、組織として軽んじていたのではないかという指摘に対して『そんなことはありません』と胸を張って言える状況にはありません。大切なことは皆さま方とこれから先の関係をどのように築き上げていくのか、ここがやはり大事なんじゃないかと思っています」

ただ、被害者団体からは、環境省が14日に設立した「タスクフォース」について、「何を目指しているのか分からない」という声も上がりました。

新潟水俣病阿賀野患者会 酢山省三 事務局長
「まだ救済されていない患者さんの一番の願いは『自分を水俣病患者として認めてください』と医師の診断内容がきちっとしているわけですから、被害者救済の道筋をいろいろ考えていくことがタクスフォースの役割として位置づけられているのかどうか?」

国定勇人 環境大臣政務官
「タスクフォースという1つのエンジンルームが設置されたわけですから、懇談という場が願わくば信頼回復に向けた大いなる機会になることを期待しておりますし、皆さま方の共通の願いをなんとかゴールに結び付ける、その高らかな一歩になっていければと」

水俣病の認定制度の変革など最終解決に向けた具体的な道筋を議論したかった今回の懇談会でしたが、国定政務官からは最終解決に向けた具体的な言及はなく、「被害者団体と”対話”を繰り返すことで、解決に向けた道筋を探っていく」と述べるにとどめました。

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