【ワシントン=浅井俊典】トランプ前米大統領が不倫の口止め料を不正に会計処理した罪に問われている裁判の最終弁論が28日、ニューヨーク州地裁で終了し、結審した。弁護側はあらためてトランプ氏の無罪を主張した。29日から有罪か無罪かを陪審員が話し合う評議に入る。

◆弁護側「いかなる罪も犯していない」

トランプ前米大統領=2022年撮影

 有罪の場合、判事が量刑を後日言い渡す。無罪となれば検察は上訴できず確定。評決の結果次第で、トランプ氏が返り咲きを狙う11月の大統領選に影響を及ぼす可能性がある。  トランプ氏は、2016年の大統領選の直前、過去に不倫関係にあったと主張するポルノ女優に口止め料として13万ドル(約2000万円)を支払い、立て替えた当時の顧問弁護士マイケル・コーエン氏への弁済を「弁護士費用」と偽って帳簿などを改ざんした罪に問われている。  最終弁論で弁護側は「トランプ氏は無罪で、いかなる罪も犯していない。検察側は立証責任を果たしていない」と主張した。

◆検察側「醜聞をもみ消し、有権者を欺こうとした」

 公判ではトランプ氏の腹心だったコーエン氏の証言の信用性が争点となっている。トランプ氏の指示で口止め料を支払ったとするコーエン氏の証言について、弁護側は通話記録に矛盾があり、トランプ氏に復讐(ふくしゅう)する目的で証言したなどとして信用できないと訴えた。  検察側は、コーエン氏は事情を最もよく知る立場にあり、証言は信用できると反論。他の関係者の証言や証拠からもトランプ氏が醜聞をもみ消し、「有権者を欺こうとした」ことが認められると主張した。  米メディアによると、12人の陪審員による評議は早ければ29日に結論が出ることもあるが、話し合いが長引けば数週間かかる可能性もある。有罪になった場合、最高で禁錮4年が科される可能性がある。  トランプ氏はこのほか、21年の議会襲撃事件など三つの事件でも起訴されている。いずれの事件も公判の見通しが立たず、11月の大統領選前に裁判の結果が出るのは不倫口止め事件だけになるとの見方が強まっている。大統領経験者として刑事責任を問われるのは米国史上初めて。トランプ氏は四つの事件全てで無罪を主張し、起訴を「政治的迫害だ」と反発している。 

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