電子書籍やネット通販の普及などにより全国で書店が次々に姿を消しています。
そうした中、生き残りをかけて生まれ変わった老舗書店を取材しました。


古畑キャスター:
「長野市の大門町にあります老舗書店がこの度、本を読みながらコーヒーや軽食が頂けるブックカフェとしてリニューアルオープンしました」

5月21日、再出発の日を迎えたのは、創業365年、長野市の善光寺のおひざ元にある「長野西澤書店」です。


リニューアルオープンの初日から大勢の人が足を運びました。

客:
「すごく楽しみにしてました。入りやすいかなという」
「とてもおしゃれだし新しいですよね」
「空間がゆったりしていていいですね」

歴史ある書店が、新たな形で再出発した訳とは?

長野西澤書店・西澤基喜社長:
「このまま町の本屋さん、それでやっているといつかはね、うちも厳しくなって経営も続かなくなってしまうのかなと」

善光寺門前の老舗書店を守るという強い思いを持っての決断です。

「長野西澤書店」の歴史は365年に及びます。

始まりは江戸時代の初期、「松葉軒(しょうようけん)」という屋号で創業。

善光寺の参拝客向けに案内図を販売していました。


明治時代には、教科書や、官報を取り扱うようになり、大正時代に書籍や雑誌の販売を始めました。

長野西澤書店・西澤基喜社長:
「お店の前に学生さんたちの自転車がずっと並んでいて、色々な所で立ち読みされたり、中を周回されたり、そういう方が本当たくさんいらしゃたんですけど」

ずっと「町の本屋さん」として親しまれてきました。

しかし厳しい時代が待ち受けていました。

長野西澤書店・西澤基喜社長:
「この町にも、うちみたいな本屋さんいっぱいあったんですよね、中央通りに。でもそれがやっぱり、年々一軒一軒減っていて、本当今は数える程度しか本屋さんがないと思うんですけど」

地域の文化の拠点でもある町の本屋さん。

しかし、電子書籍や、ネット販売の普及を背景に、全国で書店の数は減少しています。



2013年には1万5600ほどあった書店ですが、2023年には1万店余りに。


10年間で4600以上が、姿を消しました。

そして書店が一つもないという自治体は、全国1700余りの市区町村のうち500近くに上り、全体の27.7パーセントに。

長野県はおよそ52%の自治体に書店がなく、都道府県別の割合では沖縄に次いで2番目に高くなっています。

長野西澤書店・西澤基喜社長:
「置いといて売れていたものが、なかなか同じように売れなくなってしまったという時代が確実に本当きちゃってるんで」

長野西澤書店では、学校への教科書販売などが、収益の支えになっています。

とはいえ、書店に並ぶ本の売り上げは減り続け、今では全体の10分の1ほどに。


長野西澤書店・西澤基喜社長:
「いつかはね、うちも厳しくなって経営も続かなくなってしまうのかなと」

歴史ある書店を守りたい。

そこで取り組んだのが、カフェと書店を組み合わせた店へのリニューアルです。

長野西澤書店・西澤基喜社長:
「我々は本というものでずっとここまで継続できたという本への感謝の気持ちもありますし、そういう中で新しく飲食と繋げて新しい本の売り方ができればなと」

改装など準備期間は、9か月を要しました。

コーヒーのブレンドにもこだわります。

スタッフの入れ方によって味が変わらない様、何度もドリップや試飲を繰り返します。

スタッフ:
「シロップもオーガニックなんですよ、だからそんな感じの甘みになるかなという感じで、普通のガムシロとの違いを(みている)」

軽食は、サンドイッチの専門店から牛乳パンなど3種類を取り寄せ、提供することにしました。

店の奥には10人ほどが食事と本を楽しめる机。

気軽に腰掛けられる長椅子や3段の階段も設置しました。


カフェでは、購入していない本も読むことができます。

また、地元の人はもちろん、観光客にも立ち寄って欲しいと、善光寺などに関する本を揃えました。

目立つ場所に150種類以上の御朱印帳も並びます。

そしてもう1つの特徴が。



長野西澤書店・西澤基喜社長:
「じゃあ懐かしいもの置いて、他の本屋さんにはないものを並べみようかなと」


昔懐かしい「マンガ」です。

長野西澤書店・西澤基喜社長:
「多分今の人たちは知らないのいっぱいあると思うんですよ、私も知らないし、読んだことないのいっぱいあるんですよ。ドラマ化されたり昔の名作だけど、これも本との出会いがやっぱりここで作れると思うんで、これからも続けられればなと思います」

そして迎えたオープン日。

早速、御朱印帳を購入する観光客も。

兵庫県から:
「あまり見たことない(御朱印帳が)あったので、ちょと悩みましたけどえいやーと買いました。(店が)ちょっとおもしろい感じですね」

そして、オープンを心待ちにしていた地元の人もやってきました。

市内から:
「高校時代まで(長野西澤書店を)使っていました。学生時代は東京に行ってたけど、今戻ってきてますけど、昔のイメージと全く変わりましたよね。うちの近くですから、いい本があればここで買いたいと思っています」


市内から:
「私の知ってる本屋さんと違う新しい感じなので、食べるところがあったりとか、どれでも読んでもいいとか、割と昔は立ち読み禁止とかいって、はたきで叩かれるみたいなイメージがありましたけど、読んでもよくて、どれでもいいとおっしゃていたので、そういうのも新しいなと」

今の時代、そしてこの街に合った書店としてこれからも歴史を紡いでいきます。

長野西澤書店・西澤基喜社長:
「お祭り的にこの店を作ったわけではないので、今まで本屋さんとして堅くやってきたので、長く皆さんから愛されるお店作りを目指して頑張らせて頂ければなと思っています」

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