石川県では今年8月までの希望者全員の入居を目指し、仮設住宅の建設が急ピッチで進められています。過疎化や高齢化が進む奥能登、「地元で生活再建を図りたい」との思いに応える仮設住宅のあり方が今問われています。

出村愛里さん「私の大事なかわい子ちゃん、全員の支えやった。お外行くか?」

出村愛里さんと愛犬・ぼんてんまる

愛犬「ぼんてんまる」の散歩をする出村愛里さん。出村さんの自宅は輪島市里町で、能登半島地震で孤立集落となった南志見地区にあります。

出村愛里さん「(地震発生当時は)地獄絵図の空間、まさか自分たちが真ん中になるとは思わなかったし」

輪島市里町 屋根にはブルーシートが目立つ

地震で里町の家々も大きな被害を受けました。出村さんの自宅も屋根瓦がずれるなどして一部損壊と認定。さらに断水、停電となったことから祖母と父親の3人で震災後すぐに金沢に避難してきました。

出村愛里さん「同じ境遇で同じ地域で集まっているから一緒に話できるし、同じ地域で集まれたのが良かった」

出村さんがいま生活を送っているのは、金沢市額谷町の額谷ふれあい体育館。南志見地区の住民が集団で避難しています。落ち込む日々も多々あったといいますが、避難者の心を和ませてくれた出来事もあったといいます。

出村さんが避難生活を送る体育館の中の様子

出村愛里さん「いろんな芸能人の方が炊き出しに来てくれて、輪島の人は芸能人大好きなんで気分がすごく上がるしうれしくなったのはあると思う」

最大で143人が身を寄せた体育館での避難生活では、顔見知りの仲ではあるものの集団での生活の難しさも垣間見たそうです。

出村愛里さん「仲良くなりすぎたゆえにずっと一緒におるからこその衝突、チラチラ見ました。しょうがないですよね、集団生活だったら」

週に2、3日は輪島市内へ仕事に出かけるという出村さんですが、避難所に残る高齢者を微笑ましく見守っています。

出村愛里さん「さっきくれたんですよ。みんな手芸とか上手で。祖母もお手玉大量に150個ほど作った。いい時間潰しできたんじゃないかと思いますよね」
祖母・出村チヨ子さん「金沢の人や野々市の人に本当にお世話になりました。ありがたいと思います」

木造長屋型の仮設住宅が、県内で初めて4月30日に完成しました。まとまって多くの世帯が住み続けることができる木造長屋型は、新たなまちを整備することを目的としていて、地域のコミュニティー再生を目指しています。

完成した木造長屋型の仮設住宅

出村愛里さん「おはようございます。すごい街って感じ」

14日、出村さんは4か月半ぶりに故郷に戻ってきました。完成した木造長屋型の仮設住宅に地域の人と一緒に入居できるようになったのです。

出村愛里さん「入り口に洗濯機あるよ」

1DKから車椅子でも生活できる部屋、和室のある部屋など5つのタイプがそろっています。原則2年で退去しなければいけない従来の仮設住宅と違い、この木造長屋型は2年が経過した後は公営住宅に転用され、住み続けることができます。

仮設住宅の中を見る出村さん 納得の様子

出村愛里さん「換気扇もしっかりついとるよ。上の収納もすごいし。普通にいい家やね」「あっち(避難所)の生活も全然悪くなかったんですけど、やっぱりプライベートがない状況、カーテン越しだったので2畳ほどしかないとこにいたので、それを考えたらすごい素晴らしいですよね」

輪島市河井町にある輪島KABULET(カブーレ)。

社会福祉法人の佛子園(ぶっしえん)が経営主体となっているこの施設には、銭湯やレストランのほかデイサービスも併設されていたりと、高齢者から障害のある人まであらゆる人の交流の場となっています。

輪島KABURET(輪島市河井町)

佛子園の代表を務める雄谷良成理事長は、奥能登2市2町で仮設住宅の見守り活動を行う公益社団法人青年海外協力協会の会長も務めています。

2016年に起きた熊本地震では死者は276人でしたが、そのうち災害関連死は226人にも上りました。直接死の4倍もの人が避難生活の中で命を落としました。雄谷会長は、この原因の一つが仮設住宅の入居が抽選で行われたことだと話します。

公益社団法人青年海外協力協会・雄谷良成会長「家も壊れている、親族も被災されて亡くなっているという状況があるときに、相当なストレスを受けながら隣に来た人はどういう人かわからない。まずそこの人間関係を作ることがストレスになる。今回、能登半島全域においては抽選をしないでなるべく地域を大切にしながら移していこうというということが進んできたと思うので、ここが大きな成果だと思います」

公益社団法人青年海外協力協会・雄谷良成会長

仮設住宅に隣接する施設でこの日、入居する住民たちが初めて集まりました。

仮設住宅の入居者「私は4月の終わりに来ているから、先輩方にどういう風にされているか、きょうはそういうことを色々とお伺いしたいなと思って来た」

仮設住宅にはできるだけ地域ごとに入居はしているものの、顔を見たことがある程度の人も多く、住民同士がより知り合える場として集まりが企画されました。

公益社団法人青年海外協力協会・雄谷良成会長「箱だけあってもだめ。そこにはお茶を飲みながらお話ししたりとか、高齢者の場合は仮設のお風呂も非常にかまちが高くて事故になったりしているので、コミュニティセンターの中にあるような大きなお風呂だと事故も起こりにくいし、かつ何よりもいろんな人とお話しできるそうだということが、実を言うと住民間のつながりを強化していくということになるので、何かを受けにいくとかではなく、ふらっと集まってそこにいられる場所が多分必要なんだと思う」
仮設住宅の入居者「今プライバシーとかで難しいかもしれないけども、名前聞いて誰がどこにいるとかそういうのは誰かしてほしい。何か困った時とか聞きたい時とか誰かが知っていないと」「1週間に1回、無理やったら2週間に1回でも集まれればまただんだん自由に集まって座れる場所があれば話しておれる。(仮設住宅の)中で出会っても元気けって言えるしね」

県も災害関連死を防ぐため、6月補正予算案に仮設住宅の敷地内に共同浴場を備えた福祉施設を整備することを盛り込みました。

この施設のイメージについて馳浩知事はこう説明します。

石川県・馳浩知事「近所の人と昼間集まるのか、お風呂があって共同浴場に入ったり。あるいは商店街があれば情報交換もできるし愚痴も言えるし建設的な意見も言い合えるし。高齢化率の高い地域ですから孤立化させないというのが最大の理由」

こうした福祉施設は、今後の災害支援において非常に重要な意味を持つと雄谷会長は語ります。

公益社団法人青年海外協力協会・雄谷良成会長「今回は防災の予算の中にとりあえず初めて福祉の拠点を作るコミュニティセンターを作ることが認められたということは、今後、能登以降に起こる災害の支援においても非常に意味のあることだと思う」

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