山口県山陽小野田市の山口東京理科大学に、県内では唯一、全国的にも珍しい部活動があります。狩猟部です。イノシシやシカなど野生動物による農産物への被害が増えるとともにジビエへの注目度も高まっています。そうした中、活動する大学「狩猟部」に密着しました。

免許取得し、わなの設置も

箱わなを設置するメンバーたち
「そこに入れたら…そうそう、あんまりかけちゃいけないわけね、かけすぎると反応が悪くなる…」

山口県宇部市の山間部。イノシシ用の箱わなを設置しているのは、山陽小野田市にある山口東京理科大学・狩猟部のメンバーです。狩猟部は2021年にサークルとして誕生し、1年後に正式に部となりました。部員は女性5人を含む24人。部長の義岡士門さんを中心に活動をしています。

狩猟やジビエへの理解を深めてもらおうと、イベントなどに積極的に参加してきました。部員7人は、くくりわなや箱わななどの免許を取得し、実際に狩猟にも取り組んできました。

狩猟部を創部した田村新之助元部長
「狩猟って大人の人が多いイメージですよね。高齢者の方とか…若い世代がなかなかなじみのない世界なので、せっかく自分が興味をもって狩猟やるんだったら周りも引き込んで一緒にやりたいなと思って狩猟部を作りました」

背景に深刻な農業被害

野生動物による被害は深刻です。山口県内では2022年度、イノシシが1万9400頭、シカが9757頭捕獲されました。鳥獣被害はおよそ3億7400万円にのぼります。被害額は2010年度のおよそ8億100万円以降減少傾向ですが、被害は農業従事者の生産意欲の低下や耕作放棄にもつながります。

3月、イノシシやシカなどで栗林が被害を受けているという宇部市内の農家から依頼を受けて、わなを設置しました。狩猟部を指導するのは、山陽小野田市でジビエの販売を手がける猟師の仲村真哉さん。仕掛けるのはくくりわなと箱わなです。

狩猟部を指導する西日本ジビエファーム猟師 仲村真哉さん
「見たらわかるけど、山をこちらからこの位置で下りてきて、ここを通って川の中を渡って…」

くくりわなを仕掛ける場所は、シカやイノシシが通る「けものみち」。動物の足跡、掘り返しの跡、立木へのこすり跡などの「フィールドサイン」を見つけて判断します。獲物が足でわなを踏み抜くとワイヤーが獣の足をくくって捕獲する仕組みです。

箱わなは狩猟部の手作りです。獲物が入り、トリガーに触れると入口が閉じ、閉じ込められる仕組みです。

山口東京理科大学 薬学部2年狩猟部 中川心さん
「元々、地元が田舎の方で狩猟というのが身近な存在だったので、興味深くて入りました。罠を仕掛けたりするのがあって普段は経験できないようなこと、たくさんできるんで楽しいです」

無駄のない処理方法も学ぶ

捕まえた動物の処理方法も学びます。仲村さんから無駄を出さない、丁寧な処理の仕方を教わります。

仲村さん
「理科大生の狩猟部のみんなは新しいこと、例えば皮をなめしてみるのでも違うなめし方を試してみようとか、チャレンジ精神が豊富で、見てて面白いですね。やっぱり今、新しく猟を始める方でも年配の方ってすごい増えていて若い力っていうのはどうしても減りがちになってきているんで若い人たちが狩猟の世界にどんどん入ってくるきっかけ、ひとつの契機になればいいなと思ってます」

「動物が好き」はく製作りも

狩猟部の部室に面白いものを見つけました。アライグマやカルガモ、ホシハジロの剥製です。作っているのは副部長の河合拓海さん。この日はシカの剥製を作る作業をしていました。

山口東京理科大学 工学部3年狩猟部副部長 河合拓海さん
「今はこの元々耳に入っていた軟骨を取った状態なんで軟骨に変わる芯を入れて形を作っている感じで…」

もともと大の動物好きだったという河合さん。それが高じて剥製づくりを学ぶまでになりました。毛皮の材料として輸入されて野生化したヌートリアの毛皮や皮製品も作っています。

河合さん
「自分としては動物が好きなのでその動物たちを形に残せるものを作れるというのがいいところだなと思ってます。せっかくもらった命なのでいろんな活用法があって、その中のひとつとして剥製があることを伝えていければいいなと思っています」

大学の強み生かし研究・商品開発へ

山口東京理科大学にある狩猟部ならではの活動も展開しようとしています。工学・薬学の知識を生かした研究や商品開発です。

山口東京理科大学 工学部2年狩猟部部長 義岡士門さん
「わなの巡回が大変で毎日、車で回ったりとか原付で回ったりとか…せっかくだからカメラとかセンサーとかそういうのを作って、巡回しなくても携帯ですぐにチェックできるみたいなそういうのを作れたら一番いいなと思ってますね」

4月、14人の新入部員が入りました。被害を減らすための活動はさらに広がりそうです。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。