沖縄・奄美地方が梅雨入りし、本州付近も梅雨の時期が近づいてきました。2024年は「梅雨入りが遅く、梅雨明けが平年並み」と言われる一方、西日本の太平洋側では「期間中の降水量は多い」と予想されていて、“短期集中型”の梅雨となりそうです。
今年は全国的に梅雨の期間が短くなる見通し
5月21日、沖縄・奄美地方が梅雨入りしたとみられると発表されました。沖縄地方は平年より11日ほど遅く、統計開始から5番目に遅い梅雨入りとなりました。同じく奄美地方も、平年より9日ほど遅い梅雨入りとなりました。
本州付近の梅雨入りを左右するのは太平洋高気圧ですが、今年は北への張り出しが弱いため、梅雨前線が本州にまで届かず、沖縄や奄美地方と同様に各地方とも梅雨入りは遅くなる見通しで、1週間ほど遅い6月中旬ごろに梅雨入りとなりそうです。
7月になると太平洋高気圧は次第に勢力を取り戻す見込みです。梅雨前線が高気圧に押し出されて日本列島から離れ、梅雨明けとなるのは平年と同じく7月の下旬ごろとなりそうです。そのため「梅雨入りが遅く、梅雨明けが平年並み」となる今年は梅雨の期間が短くなることが予想されます。
梅雨の期間は短くも降水量は多い予想…”短期集中型”の梅雨に
梅雨の期間は短くなりそうですが、気象庁が発表した最新の3か月予報によると、梅雨の時期にあたる6月・7月の降水量は、西日本の太平洋側を中心に降水量が平年よりも多くなる可能性がありそうです。
したがって、今年の梅雨は雨の降り方が強い日が多く、例年と比べると“凝縮された短期集中型の梅雨”になることが考えられます。梅雨の時期は、線状降水帯などの集中豪雨により毎年のように災害が発生しています。今年の梅雨は例年以上に雨への備えをすすめてください。
短期集中型の梅雨となる原因はインド洋にあり?
今年の梅雨はなぜ短期集中型になるのでしょうか。原因ははるか遠くのインド洋にありました。
現在インド洋の熱帯域では、海面水温が平年より高い状態が続いています。海面水温が高い分空気中にたくさんの水蒸気が供給され、対流活動(雲が発生し雨が降ること)が活発になっています。
インド洋で対流活動が活発になり低気圧が発生すると、それに対応して東側のフィリピン付近では高気圧が強まります。高気圧は時計回りに空気を放出する性質があるので、この高気圧がポンプの役割を果たし日本列島に暖かく湿った空気を送り込みます。その結果、梅雨前線の活動が活発になるため降水量が多くなることが考えられます。
またインド洋は梅雨前線の動きに対応する亜熱帯ジェット気流にも影響を及ぼします。対流活動が活発になると北インドから中国大陸を流れる亜熱帯ジェット気流を南へ蛇行させ、チベット高気圧の勢力を弱めます。その結果、前線はなかなか北上せず、日本付近で停滞しやすくなる見通しです。
この状況、過去の梅雨を振り返ると、特に九州で大雨をもたらした、2016年の状況と似ているんです。
近年では九州で大雨となった2016年の梅雨に類似
過去の梅雨を振り返ると、2024年の梅雨は2016年の梅雨と類似点が多くありそうです。2016年も沖縄・奄美地方で梅雨入りが遅れ、インド洋の海面水温が高い状態でした。
また2024年は、台風1号の発生が過去7番目に遅くなっていますが、2016年の台風1号の発生も、過去2番目に遅い、7月3日に発生となりました。
2016年は特に九州で大雨となり、宮崎県では6月19日から30日にかけて1200ミリの雨を観測した地点もありました。今年も西日本の太平洋側を中心に雨量が多くなる予想です。本格的な雨のシーズンに向けて大雨への備えを進めてください。(気象予報士・東杜和)
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