違法に社債購入を勧誘したとされる金融商品取引法違反の疑いで、社長や元社員が逮捕された資産運用会社「ザ・グランシールド」(東京都中央区)は、都内などで運営する歯科医院「デンタルオフィスX」でも歯科矯正モニターを巡るトラブルを抱える。患者たちは昨年1月、集団訴訟に踏み切った。原告の1人、東京都江戸川区のパート女性(40)は「歯並びが悪化した上に、お金も失ってしまった」と悔しさを語る。(小倉貞俊)

◆親から154万円借りてモニターに

歯列矯正の治療が中断され、8本の歯が抜かれたままの状況が続く女性

 女性は4年前、グランシールドの事業であるマウスピースを使った歯科矯正モニターへの応募を、知人から誘われた。「最初にまとめて契約料を払えば、毎月モニターとして報酬が支払われ、医院で受ける歯列矯正治療が実質無料になる」とのうたい文句だった。  歯並びを気にしていた女性は、契約料154万円を親に借りて同社と一括契約。同社運営の歯科医院に通い、2年間の計画で矯正治療を始めた。報酬は約40回の分割払いで、毎月4万円ずつ戻るはずだった。

◆治療は目視だけ…「おかしい」

 ところが2022年3月、20回目の報酬から支払いが止まった。同社からは「ウクライナ情勢が悪化し、海外の預金が引き出せない」との釈明のメールが来た。治療は毎回、医師ではなく歯科衛生士が目視するだけ。歯並びは改善しておらず「何かおかしい」と感じたが、その後、治療も中断した。

女性がザ・グランシールドと交わした契約書(左)と、報酬の支払いについて記された文書。「154万円」と記載がある

 原告の弁護団などによると、同社は同様の手口で、全国1700人から27億円を集めたとみられる。警視庁に被害の相談も寄せられており、同庁は今後、運営実態を調べる方針。  女性は借りた金をようやく親に返済できたが、治療に充てる資金はもうない。矯正のために歯を8本抜いたままだ。「治療前より悪い状態になって恥ずかしく、つらい。お金も返ってこず、心が折れそうです」 

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