死刑執行の運用の一部だけを取り出して今回のような請求をすることは、確定した刑事判決を無意味にするもので許されない」などとして、死刑囚側の訴えを全面的に退けました

【日本の死刑執行は「当日告知」 ただし法律上の明文規定はない】
現在、日本での死刑執行は、執行当日の1~2時間前に死刑囚本人に告知されています。

この「当日告知」は法律上の明文規定はなく、あくまで法務省による行政運用です。

昭和の某時期までは、前日以前の告知=「事前告知」が行われた例があり、国もその事実は認めていますが、具体的にいつ・どのような理由で「当日告知」一択になったかの詳細は明らかにしていません。

国は当日告知の理由について、これまでの国会答弁や法相の会見などでは「死刑囚の心情の安定を害さないようにするため」としています。

【死刑囚側の主張「当日告知は憲法や国際人権規約に違反」「アメリカは事前告知を徹底」】
確定死刑囚2人は2021年、国に対し、死刑執行の差し止めを求めるわけではないとしたうえで、▽当日告知は違憲・違法であり、それに基づく死刑執行を受忍する義務がないことの確認 ▽精神的苦痛に対する慰謝料2200万円の支払い を求めて大阪地裁に提訴しました。

死刑囚側は、具体的に次のように主張しています。

▽当日告知では、刑事訴訟法に定められた「刑罰執行への異議申し立ての権利」などを行使できないので、憲法31条の「適正手続の保障」に反する

▽当日告知は、日本も批准している国際人権規約「自由権規約」にも反していて、条約の実施機構「自由権規約委員会」からも繰り返し改善を勧告されている

▽そもそも当日告知では「人間らしく死までどのように過ごすか」「どのように死と向き合うか」を考えて実行する機会が保障されず、「人間の尊厳」が侵害されている

▽アメリカ合衆国では、死刑制度を維持している全ての州で、遅くとも執行数日前の「事前告知」が行われている。連邦政府が執行する場合も、遅くとも20日前に告知される

【国は裁判で “即刻、刑場に連れていく運用でも問題はない”】
一方の国側は裁判で、請求を退けるよう求めた上で、「1~2時間前の告知も必要ない=執行当日に即刻、刑場に連れていく運用でも問題はない」という姿勢を示していました。

【判決は全面的に訴えを退ける】
大阪地裁は4月15日の判決で、「死刑執行の運用の一部だけを取り出して今回のような請求をすることは、確定した刑事判決を無意味にするもので許されない」「当日告知に基づく執行を受忍する義務がない法的地位にあるとは認められない」として、▽受忍義務がない旨の確認の請求については「却下」▽慰謝料2200万円の賠償請求は「棄却」しました。

結果的に死刑囚側の訴えを全面的に退け、「当日告知」は合憲という判断を下しました。

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