今がシーズンのアサリ。ただ、国内のアサリの漁獲量は、年々減っています。県内一のアサリの産地廿日市市大野地区を訪ねました。

廿日市市大野町にあるイタリア料理店リストランテトーマスです。作られているのは、地元ブランド「大野あさり」をふんだんに使った人気のボンゴレビアンコです。

記者
「アサリの味がしっかりついていて、おいしいです」

リストランテトーマス 増本年治 オーナーシェフ
「ちょっとの量のアサリでもすごくダシがでて、パスタの味がすごく濃厚で他のものを何も入れなくてもすごくおいしいものができるような、特別なおいしさがある貝」

かつては、当たり前のように食卓にのぼっていた地元産のアサリ…。しかし、増本シェフは食べる機会が減ってきていると話します。

リストランテトーマス 増本年治 オーナーシェフ
「特別感をもって提供する料理に変わってきているのが、私のイメージ」

濱本水産 濱本 恵津生 社長
「これが大野あさりのサイズの一番大きいやつ」

大野あさりを扱う濱本水産です。ほかにも、カキやムール貝などの卸し、加工、販売もしています。

濱本水産 濱本 恵津生 社長
「(今年のアサリのできは?)例年100パーセントとすると98ぐらいですね」

アサリの減少については、様々な要因が指摘されていますが、濱本水産は、大野あさり増産のために対策をおこなっています。近年の下水処理が進んだことで窒素やリンの排出が減り、それらをエサとするプランクトンも少なくなり、魚や貝が住みにくい海になったと言われています。そのため、5年前からMOFU(モフ)と呼ばれる有機肥料を使って干潟の改善に取り組んでいます。その結果、貝の身入りがよくなり、収穫量も増えてきているといいます。また、エイや魚などに小さなアサリが食べられてしまう食害の対策として、2ミから10ミリの稚貝を山口県から一定数調達しています。さらに、対策があります。

濱本水産 濱本 恵津生 社長
「被覆ネットを張っています。それに海藻がついて汚れる。そのままほっておくとアサリ窒息死してしまう。掃除をすることも必要」

問題は、自然相手ばかりではありません。収穫や干潟の管理を担う従業員の高齢化による人手不足も課題です。

濱本水産 濱本 恵津生 社長
「安定供給できるアサリ漁場にしていきたい。誰でもできるわけではない本気でやる人が後継者として来てくれればいい」

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青山高治 キャスター
こちらは、県内のアサリの生産量の推移です。30年前は698トンもあったのですが、2022年は50トンまで減っています。「大野あさり」という名前は、「夕張メロン」や「神戸ビーフ」などのように、地域に育まれてきた「知的財産」として、アサリでは国内で唯一農林水産省に登録されています。地元の人たちも「守っていきたい」という思いを強く持っているようです。濱本水産の社長によると、酒蒸しやバター焼きだけでなく、茹でただけでもじゅうぶんおいしいそうです。

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