宮城県石巻市に去年、漫画やイラスト制作を体験できる施設がオープンしました。オープンから半年余り、子どもたちをはじめ市民の間で人気の施設となっています。創作体験だけではない魅力がありました。

「では、スタートです!」

合図と共に真剣に絵を描き始める子どもたち。視線の先にいるのはコスプレ衣装に身を包んだモデルです。この日は、短い時間で人や物を描く「クロッキー」と呼ばれる作画の体験イベントが開かれていました。

参加した小学生:
「コスプレイヤーさんの服のデザインとかを描くのが好きで楽しかったです」
参加した中学生:
「気になるイベントがあるときとか、暇なときに来ています」

「いしのまきMANGAlab.ヒトコマ」は、去年10月にオープンしたばかりですがイベントの予約が埋まるなど好評を博しています。

ヒトコマ運営担当 三浦悠さん:
「石巻から新しいクリエイターを生み出したいという思いからスタートしました」

石ノ森章太郎さんの「マンガランド構想」

石巻市は、マンガを活かしたまちづくりに取り組んでいます。およそ30年前、宮城県出身の漫画家、石ノ森章太郎さんが市と共に「マンガランド基本構想」を発表したのがきっかけです。

「仮面ライダー」や「サイボーグ009」など数々の人気作で知られる宮城県登米市出身の漫画家、石ノ森章太郎さん。学生時代、自転車で3時間かけて石巻市の映画館まで通い映画を見ていたと言います。

1995年、当時の石巻市長との対談の中で、シャッター街となっている中心市街地を漫画を通して活性化させようと「マンガランド構想」が持ち上がりました。

中心的な役割を担っているのは石ノ森萬画館ですが、運営会社では、漫画やアニメ制作をより身近に感じてもらいたいとヒトコマをオープンさせました。この施設、体験だけが魅力ではありません。

プロの漫画家と…

石巻市の「ヒトコマ」では、イベントがない日でも塗り絵や缶バッチ作りなどを行えますが、創作体験だけが魅力ではありません。

石垣綾香記者:
「こちらのコピックを使って色の塗り方の基本を漫画家の先生から、無料で教わることができるんです」

絵の初心者だけでなくクリエイターも集い交流しながら漫画やアニメに親しむことができるのです。

漫画家 采花さん:
「くるくるくるって離さないで、くるくるくると箱の中を塗ってもらって」

スタッフとして働く石巻市出身の漫画家、采花さん。少女コミックに読み切り作品が掲載されたこともあります。小学生の頃から漫画家を目指していましたが絵を本格的に学んだのは、高校を卒業してからでした。

漫画家 采花さん(石巻市出身):
Q子どもの時に「ヒトコマ」のような施設があったらどうでしたか
「めっちゃ通い詰めていたと思います。楽しいという気持ちを忘れずに描いて自分が目指すものになってほしいなと思います」

ヒトコマの建物はもともと、東日本大震災について情報発信する展示施設でした。

震災伝承からマンガ制作の拠点へ

「ヒトコマ」の建物は、もともと石巻市が東日本大震災の被害状況や復興の歩みを紹介しようと建設した展示施設でした。その役目を終え創作拠点として再利用されることになったのです。

ヒトコマ運営担当 三浦悠さん:
「皆さんの初めのヒトコマになりたいという意味があって、ここ石巻でも自分の夢が叶えられるんだよということを知ってもらいたいと思っています」

石ノ森章太郎さんは、マンガランド構想を発表する際、こんなことを語っていました。

漫画家・石ノ森章太郎さん(1995年)
「僕らが関わっている漫画というメディアがどういう風に一般の皆さんの生活の中に溶け込んでいけるか実験の場にもなります」

「漫画が生活の中に溶け込む」ヒトコマはまさに、マンガランド構想を象徴する施設となっています。

漫画家 采花さん:
「自分で紙とペンを持ってきて作品作りができる環境なので、作品作りに集中したいときぜひ来てほしいと思います」

石巻市にできた創作拠点。マンガの街に新たなヒトコマを生み出しています。

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