先日、ウズベキスタンで行われたAFC U20アジアカップ。若き日本代表は決勝で北朝鮮代表に敗れ、準優勝となりました。それでも、8月末から始まるFIFA U-20女子ワールドカップの出場権を獲得し、世界の頂への挑戦が始まります。

WEリーグ・アルビレックス新潟レディースからは白沢百合恵(しらさわ・ゆりえ)選手(20)がメンバーに選ばれ、試合に出場しました。なかなか出場機会がなく悔しさを感じたという白沢選手は終盤戦を迎えるWEリーグでの活躍を誓います。

ウズベキスタンで感じた“アジアの壁”

3月に行われたAFC U20アジアカップで、アルビレディースから選出された白沢百合恵選手は3試合に出場。初戦のベトナム戦ではゴールを決めました。チームは決勝戦で北朝鮮代表に1対2で敗れたものの準優勝となり、8月31日から南米のコロンビアで行われるFIFA U-20女子ワールドカップの出場権を獲得しました。

白沢選手は「一番の目標はワールドカップの出場権獲得だったので、まずはチームとしても個人としても、すごくうれしかった」と話す一方、悔しさをにじませました。

「出場はグループステージの3戦だけで、最後の決勝戦(北朝鮮戦)は、後半頭から『交代で出るかもしれないから動いていて』と言われていました。ただ、自分の名前は呼ばれませんでした。本当にチームが優勝できなかったのが悔しかったし、自分が勝利に貢献する機会をもらえなかったというのが一番悔しかった」

豊富な運動量で“世界”と対峙

白沢選手は新潟市出身。小学生のころ、兄2人の影響でサッカーを始めました。小学生のころプレーしたクラブチーム『club F3』では当時、女子選手が少なかったそうで…

白沢百合恵選手(20)
「私がやっている時でも、女の子は1つ下に田中聖愛選手(現:アルビレディース)が入ってくるまでは、上に1人いるだけで本当に少なかったので…最初の頃は男の子も仲良かったんですけど、思春期になるとハイタッチもしてもらえなくなったりとか…ちょっと孤独感がありました」

その後、新潟でサッカーを続けたいとアルビレディースの下部組織に入り、プレーしてきた白沢選手。昨季、トップチームに昇格すると、今季は豊富な運動量をいかし、ボランチからサイドバックへとポジションを変え活躍しています。

「運動量は自分自身でも豊富だとは思っているので、ボランチでは攻守に関わって走る部分というのがひとつの特徴だと思っています。今季はサイドバックとしてプレーしていますが、橋川和晃監督から『自由にやっていい』と言われているので、ボランチみたいにに中に入っていってもいいし、サイドを駆け上がってもいいというところで、柔軟なポジション取りが自分の持ち味のひとつだと思っています」

一方で、課題も口にします。

「本当に一瞬のスピード、アジリティは本当にまだまだだと思っているので、そういう部分でも走力を上げていきたいと思います」

AFC U20アジアカップなど年代別の代表で、“世界”と戦ってきた白沢選手。
今後、“世界”と戦うことを見据えて「大きな選手やスピードがある選手、“強さがある”選手が多いと思いますが、私はそこまで足が速くないので、予測や準備という部分でもう一段レベルアップしていかないと」と決意を新たにします。
その思いの裏には、“憧れの選手”とのプレーが影響しているのです。

憧れの“ピッチ内外お姉さん”

白沢選手がインタビューの際、何度も口にした言葉があります。
「ユウリさんを目標に…」
「ユウリさんのように…」

彼女の憧れの存在、それは同じチームでプレーする新潟市出身の川村優理(かわむら・ゆうり)選手(34)です。

新潟市出身の川村優理選手

白沢百合恵選手(20)
「お姉さん的な存在で、ピッチの外でもすごく明るくて気さくにしゃべってくれるし、ピッチ内では本当にいてくれたら安心するようなプレーをしてくれて…“ピッチ内外お姉さん”って感じです」

新潟出身で2015年の女子ワールドカップに出場し、アメリカのチームでもプレーした経験を持つ川村選手。“世界”と戦う一方で、度重なる膝のけがも経験しています。白沢選手が中学生の頃にけがをした際、同じタイミングで川村選手がリハビリをしていたそうで、早くプレーに復帰したいという川村選手の気持ちが痛いほどわかったと言います。だからこそ、強い憧れとなっているのかもしれません。

「優理さんは、攻撃だったら顔出してほしいところに常にいてくれるし、守備だったら『そこ危ないよな』というところにもいてくれたりとか…ポジションは違うんですけど、優理さんのような選手になりたい」

今、川村選手と同じチームでプレー出来ていることを「本当に楽しい」と話す白沢選手。
川村選手以外にも、“世界”と戦った経験のある選手とプレーすることで、白沢選手のプレーがさらに洗練されていきそうです。

『ゴール』という結果とセンターバックをカバーできる守備力を

今季から就任した橋川和晃監督が「本気でトップ3を目指す」と明言し、始まった2023‐24シーズン。アルビレディースはリーグ戦3位につけています(4月13日現在)。
白沢選手は、今季は川澄奈穂美選手や杉田亜未選手といった経験豊富な選手も加わり、「チームの雰囲気が変わった」と話します。

白沢百合恵選手(20)
「ナホさん(川澄奈穂美選手)やメグさん(上尾野辺めぐみ選手)、優理さん(川村選手)もコミュニケーションを取りやすい雰囲気を作ってくれるので、よりいろんな選手と『どうしたらいいだろう』などといった共有が出来ているのかなと思います。あとは失敗しても『次、次』とか、チーム全体ですごく“良い声”をかけられていると思いますね」

リーグ戦は最終盤をむかえ、白沢選手も14試合中10試合に出場し、右サイドバックを主戦場に活躍しています。今後の目標を聞いてみると…

白沢百合恵選手(20)
「個人としては、今年はゴールをひとつの目標に掲げているので、チャンスがあったら攻撃参加をして、『ゴール』という目に見える結果にこだわっていきたいです。守備の部分はサツさん(三浦紗津紀選手)やリコさん(浦川理子選手)などセンターバックの選手に本当に助けられていることが多いので、センターバックの選手をカバーできるくらいの守備力を、残りの試合で見せていきたいなと思います」

そしてリーグ戦の先に、U-20ワールドカップという“世界への扉”が開かれようとしています。

「まずはメンバーに選ばれることが必要ですが、メンバーに入るだけではなくて試合に出て勝利に貢献するということが目標で、“世界一”に向けて、どれだけ試合に出て貢献できるかというところにこだわっていきたいです。そして、優理さん(川村優理選手)みたいに考えて走る、そういうプレースタイルを続けていきたいですし、世界でも戦える選手になりたいと思います」

新潟から世界へ―
20歳の挑戦は続きます。

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