「死刑執行を執行当日に告知するのは憲法違反だ」などとして、確定死刑囚2人が国を訴えている裁判の判決が、4月15日に大阪地裁で言い渡されます。
死刑の「告知のあり方」を問う裁判は日本では初めてで、死刑制度の運用をめぐる議論に一石を投じるか注目されます。
日本の死刑執行は「当日告知」 ただし法律上の明文規定はない
現在、日本での死刑執行は、執行当日の1~2時間前に死刑囚本人に告知されています。家族などへの事前告知もありません。
この「当日告知」は法律で規定されているわけではなく、あくまで法務省による行政運用です。
昭和の某時期までは、前日以前の告知=「事前告知」が行われた例があり、国もその事実は認めていますが、具体的にいつから・どのような理由で「当日告知」一択になったかは明らかにしていません。
国は当日告知の理由について、これまでの国会答弁や法相の会見などでは、“死刑囚の心情の安定を害さないようにするため” としています。
死刑囚側「当日告知は憲法や自由権規約に違反」「人間の尊厳を損なっている」
確定死刑囚2人は、死刑執行の差し止めを求めるわけではないとしたうえで、▽当日告知は違憲・違法であり、それに基づく死刑執行を受忍する義務がないことの確認 ▽精神的苦痛に対する慰謝料2200万円の支払い を求めて2021年に大阪地裁に提訴しました。
死刑囚側は、具体的に次のように主張しています。
▽当日告知では、刑事訴訟法に定められた「刑罰執行への異議申し立ての権利」などを行使できないので、憲法31条の「適正手続の保障」に反している
▽当日告知は、日本も批准している国際人権規約「自由権規約」にも反していて、条約の実施機構である「自由権規約委員会」からも繰り返し改善を勧告されている
▽アメリカ合衆国では、死刑制度を維持している全ての州で、遅くとも執行数日前の「事前告知」が行われている。
▽そもそも当日告知では、「人間らしく死までどのように過ごすか」「どのように死と向き合うか」を考えて実行する機会が保障されず、「人間の尊厳」を損なっている
国は裁判で “即刻、刑場に連れていく運用でも問題はない”
一方の国側は裁判で、請求を退けるよう求めた上で、「1~2時間前の告知も必要ない=執行当日に即刻、刑場に連れていく運用でも問題はない」という姿勢を示しました。
アメリカでは「事前告知」がスタンダード 1カ月前に告知の州も
判決言い渡しを前に、生命倫理やアメリカ合衆国の死刑制度に詳しい、龍谷大学法学部・古川原明子教授に見解を聞きました。
古川原教授によりますと、アメリカでは、連邦政府が死刑を執行する場合、遅くとも20日前に執行を告知することが規定されているということです。
また州政府が死刑を執行する場合も、遅くても数日前に死刑囚への告知が行われ、約1カ月前に告知する州も多いということです。死刑制度を廃止、または執行停止中の州も増えているといいます。
詳細な執行手続きをホームページで閲覧できる州も
さらに執行に至るプロセスを市民も詳しく知ることができるのが特徴で、たとえばオクラホマ州では、「死刑確定者の執行手続」が州政府のホームページで公開されています。
それによれば、35日前に死刑囚に執行を告知し、「35日前通知書セット」を渡します。そこには ▽前日に面会する人 ▽執行に立ち会う人 ▽最後の食事(上限25ドル) の希望を記入する用紙が含まれていて、死刑囚が執行30日前までに提出することになっています。
また、全米の死刑執行に関する情報を網羅的に収集しホームページで公開している、「死刑情報センター」というNPOもあります。
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