観光列車「かんぱち・いちろく完成までの軌跡200日に密着4月26日にデビューしたJR九州の新たな観光列車「かんぱち・いちろく」、博多と別府の間で週に3往復運行しています。
車両の名前の由来など、完成までの200日に密着取材しました。
定員60人JR博多駅~由布院・別府駅を結ぶ旅
4月26日に運行を開始した観光列車「かんぱち・いちろく」。
JR博多駅と由布院・別府駅を、週に3往復、片道約5時間かけて結びます。
艶やかに輝く黒い車体は3両編成で、定員はわずか60人。
JR九州スタッフ「こちらが日田杉を使用した二段重でございまして、中のタイルは、福岡県の伝統工芸品、小石原焼でございます」
車内では、九州産の食材をふんだんに使った、イタリアン、フレンチ、和食の弁当が日替わりで提供されています。
こだわり抜いた車両とサービスが完成するまでには、様々な人の努力がありました。
去年10月プロジェクトチーム始動
JR九州で、新観光列車のプロジェクトチームが、本格的に動き出したのは去年10月。
チームを率いるのは、営業部で入社16年目の松本拓也さんです。
JR九州松本拓也さん「気持ちも奮い立ちましたし、ただ進んでいくにつれてプレッシャーは感じていたんですけどもとにかく、やるしかないってことで」
最大の挑戦はデザイナーの起用
「かんぱち・いちろく」で、最大の挑戦となったのが、新しいデザイナーの起用。
これまでJR九州の多くの観光列車を手掛けてきた工業デザイナーの水戸岡鋭治さんではなく、鹿児島市のデザイン会社IFOOが起用されました。
JR九州松本拓也さん「霧島神宮駅をリニューアルするというところで出会いまして、その事業がきっかけで、IFOO様の思いとか、デザインの特徴なんか知ることができて、今回新しい列車のデザインのお願いをした」
「時間の中に埋もれた価値に光を当てる」というデザインの理念が、新観光列車のイメージと合致したためです。
IFOO八幡秀樹社長「久大本線の今までの歴史や風土、文化、そういう事と列車が一体となって表現できる、五感で感じられる様な列車ができないかなと」
ベースとなる車両は、観光列車「いさぶろう・しんぺい」。2020年7月の豪雨で被災した肥薩線の復旧が見込めないため、インバウンド需要が高い博多~由布院・別府間の新たな観光列車として、投入されることになりました。
台風で傷んだ神社の御神木はカウンターに
数十回にも及ぶ会議の末に決まった車両デザイン。
その核となるのが、2号車のカウンターとして取り付けられる、樹齢250年という杉の一枚板です。
台風で傷み、やむなく切り倒された熊本県の神社の御神木からとったもので、長さは約8メートル、重さは230キロにもなります。
機械はいっさい使わず、人力で運び込まれ、傷をつけないよう細心の注意を払って取り付けられました。
IFOO鷹野敦さん「沿線の文化・魅力を体現する要素が、散りばめられていますので、車両全体と窓から見える風景を、同時に楽しんで頂けるとありがたいなと思います」
名前の由来は?
ところで、「かんぱち・いちろく」という列車の名前は、どこからきているのでしょうか。
「かんぱち」は、大分県九重町に本社を置く八鹿酒造の3代目蔵元・麻生観八の名前から。
観八は、交通が不便だった郷土の発展を願い、当時の国鉄久大線の敷設に尽力しました。
麻生益直社長「この地域を開発する為には、まずは鉄道だと。いわゆる九州横断鉄道、久留米と大分を結ばなければ意味がない。という事で働きかけをして、スタートしたのが明治38年と聞いております」
その功績から、JR九州は列車名だけでなく、八鹿酒造の地元の恵良駅を「おもてなし駅」として停車駅にしています。一方、「いちろく」は、所有していた土地を国鉄に無償で譲渡し、由布院の発展に大きく寄与した実業家、衛藤一六の名前から取られました。
由布院盆地を大きく曲がるルートとなったため、そのカーブは今も「一六曲がり」と呼ばれています。
衛藤一六の曾孫衛藤道哉さん「大変名誉なことだと思います。これ以上のものはないし、両親が生きていたら涙ながして喜ぶと思います」
提供する料理にもこだわり
デザイン・設計・技術など、スペシャリスト達によって新車両の完成が近づく中、プロジェクトリーダーの松本さんは、福岡・大分の旬の食材にこだわった料理を提供するため、仕事が終わったあとに様々な店舗に足を運び、打ち合わせを重ねました。
HUCHIGAMI渕上誠剛さん「長いお皿として考えるパターン。もしくは料理が決まってないから何とも言えないけど2つに真地切る。それも面白いと思うんですよね」
そして社長をはじめ、JR九州幹部による試食会も開き、提供する料理の内容を決定しました。
JR九州古宮洋二社長「ボリューム説明して、別にして色合いやな。色合いやな、どうしても茶色系が多くなるからゆふ高原の食材を使って頂いています」
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