学生時代に部活動をがんばったという方、多いかと思います。兵庫県神戸市が公立中学校の部活動を終了させる方針を明らかにしました。狙いは一体何なんでしょうか?

■神戸市の公立中学校「部活動終了」へ 市民からは賛否の声

神戸市教育委員会 教育長
「子どもたちの放課後・休日の新たな過ごし方。2026年の夏をめどに、部活動を一旦終了」

今週、神戸市が発表した公立中学校での部活動終了。

高校1年生
「学校で部活ができないとなると、活動するハードルが上がってしまうかな」

中学3年生
「気楽にできるから、いいかなと思いました」
「顧問の先生とかの“圧”とかもなく、がんばれるかなと思います」

市民からは賛否の声が…、一体、どういうことなのでしょうか?
                 
近年、中学校の部活動を取り巻く環境は、大きく変化しています。「教員の負担」に「少子化問題」、全国的に学校単位で運営することが、難しくなってきているのが実情です。

さらに、子どもたちが選択する部活動にも変化が…

神戸市が今年、小学生に行った『やってみたい部活動』のアンケート。「サッカー」「バレーボール」「バスケットボール」など上位の人気スポーツは健在ですが、「野球」を抜いて人気だったのは…「ダンス」です。

いまや若者に人気となったダンス。今年のパリオリンピック™では、新競技として「ブレイキン」が採用。日本人が初の金メダルを獲得するなど、身近なスポーツとなっています。

さらに文化活動で最も人気だったのは「料理」と、これまでなかった部活動に、注目が集まっているといいます。

そこで、神戸市では、2026年度からすべての公立中学校で部活動を終了し、学校単位の活動から地域でのクラブ活動に、平日も含め全面移行する方針です。

神戸市民は…

神戸市民
「自分の学校にやりたい部活がない子にしたらいいかなと思うんだけど」
「専門性が強くなって、いまより深く学べたりするかもしれない」

一方で、こんな悩みも…

高1年生
「友達関係はやっぱり学校の部活があってこそかなと思います」

部活動は、学校の枠を超えて、自由に選ぶことが出来る時代に。今後、どのように変わっていくのでしょうか?

■少子化で廃部相次ぐ、生徒側の考えに変化も

良原安美キャスター:
神戸市の教育委員会が公立中学校での部活動を終了すると明らかにしました。

現在、休日の部活動を地域のクラブや指導者へ段階的に移行しているそうですが、2026年8月までに平日も含めて全面移行するということです。

神戸市だけではなく、全国的にもこの動きが出てきています。スポーツ庁は公立中学校の部活動改革として、2026年度から平日の部活動の地域展開(移行)を推進するとしています。

背景には一体どんなことがあるのか見ていきます。

まず、背景の一つ目として、少子化があるようです。神戸市の資料によりますと、生徒数が2008年度は3万5851人でしたが、2023年度は3万3885人と約2000人減っています。これに伴って、部活動数も70部減っているんです。

さらに、今後10年で生徒が約1万人減少するという試算があることや、少子化で部員が不足してチーム競技が成立しなくなってしまい、部活動維持が困難になって廃部になる部活もあるといいます。

さらに、生徒側の考えにも変化があるようです。

「入りたい人気の部活は?」という調査のランキングです。

1位 帰宅部
2位 バスケットボール部
3位 サッカー部
4位 吹奏楽部
5位 テニス部

1位が帰宅部なんですが、理由としては…

「早く帰れるし、勉強とか一生懸命取り組める」
「部活よりも趣味とかを優先したい」
「部活がそこまで盛んではなく、私も帰宅部」

こんな声がありました。

部活に入らずに地域のクラブに所属している子どもも多いようで、実際に全国中学校大会にも変化が起こっていて、2023年度からクラブチームにも参加資格が与えられているんです。

ただその一方で、2027年度からは水泳など9競技がとりやめになるそうです。

井上貴博キャスター:
運動部や文化部など、子どもたちの選択肢が広がればいいなと思います。

弁護士 萩谷麻衣子さん:
だから民間委託するところも増えてきていますが、費用をどうするかという問題はありますよね。でも、選択肢が広がるならいいと思います。

■過酷な教員の働き方改革でも“トラブル対応”などに不安

良原キャスター:
そして、もう一つの背景としては、教員の働き方改革があります。

神戸市の部活顧問の1週間のスケジュールを伺いました。3年前まで、神戸市の中学校で吹奏楽部の顧問をしていた教員の方は「やりがいはあるが…休みは実質、週1回でした」と振り返っています。

1週間のスケジュールですが、朝6時半に出勤し、授業・生徒指導などをした後、平日は週4日部活動(1時間20分)があります。

部活後、午後5時からは翌日の授業準備などをして、帰宅してからも少し残業し、また次の日朝6時半に出社するということでした。

そして、土曜日も吹奏楽部は部活動(3時間)があったので、休みは日曜日のみだったということなんです。

この先生に部活の地域移行について伺うと、「不安を感じている」と答えていました。

なぜかというと、「“部活が生きがい”という生徒も多いので、学校に来なくなってしまう可能性もあるのでは」と心配していました。

また、生徒のけが対応や生徒間のトラブル対応は部活の中で起こった場合は教員が対応できますが、地域のクラブだとどうするのかという点にも不安を感じるということです。

これに対して神戸市は、▼体罰・ハラスメント防止の研修を義務付ける、また、▼けがのリスクに備えて生徒に「保険加入」の義務をつける、こういったことを挙げていました。

井上キャスター:
クラブへの移行は個人的には大賛成ですが、場所や指導者の確保をどうするのかなど、仕組み作りが必要なのと、未だに部活動しか出られない全国大会が結構あるので、もっと門戸を広げて、クラブチームでも大会に出られるようにしていかないといけないのかなと思います。

萩谷さん:
でも、部活顧問の1週間のスケジュールを見ると、やはり先生は限界ですね。しかも日曜日に試合や発表会があると日曜日も埋まってしまう。

私の知り合いは茶道をしたことがないのに茶道部の顧問になったので、休みの日に茶道の教室に通っていると話していました。

ですが、そこまでしないといけないのは少し無理があるだろうなと思います。

ホラン千秋キャスター:
良くも悪くも本当にいろんな意識の子がいるので、「強豪校に行って部活をしっかりやりたい」という子もいれば、「何となくそこが自分の居場所だから行く」ぐらいの子もいる中で、部活がなくなってしまうと、本気でやる子はクラブチームなどに月謝を払って入るということはできるかもしれないですし、子どもは楽しいことを見つけるのが得意だと思うので、なんだかんだ楽しいことがあるとは思いますが、居場所が1つなくなるということをどう捉えるかというのは重要かなと思います。

萩谷さん:
先生としても(顧問を)やりたいという人もいるでしょうから。

■外部委託で会費の負担増加 生徒間で“格差”も?

良原キャスター:
実は、既に地域移行している学校があります。茨城県つくば市のみどりの学園義務教育学校です。2024年度から部活動を完全地域移行しました。平日3日、土日1日の活動です。

子どものメリットとしては、全17種目あり、外部指導者が指導することで、技術向上やスキルアップに繋がるという面があるそうです。

ただ一方で、費用面については、部活だと部活動費はほぼかからないですが、クラブ(2024年度)になると、月謝3850円+年会費6600円がかかるということなんです。

そうなると、「費用がかかるのなら参加しない」という保護者も出てきているということでした。

井上キャスター:
経済的な負担はありますが、クラブ活動にすることで学校以外の友人が増えるというメリットもあると思います。

ですが今、地域ごとに差が出ているじゃないですか。これを「良し」ととるのか、「差が出るのは良くない」ととるのかですよね。国で一律にするというのは違うと思いますし。

萩谷さん:
公立の場合、費用については自治体が補助していかなきゃいけないでしょうし、そうじゃないと子ども間の格差が出てしまうので、地域ごとの格差をどうするかという点は、走り出してみないと難しいんじゃないかなと思うんですよね。

ホランキャスター:
仮に月謝が払えたとしても、地域的にクラブチームが栄えていなかったとき、才能があるのにそれを伸ばせる場所がないということも、才能が埋もれてしまってもったいないなと思ってしまいます。

萩谷さん:
その受け皿を学校でできるかというのは少し難しいかもしれないし、子どものために色々試行錯誤してやってみるということが大事かもしれないですね。

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<プロフィール>
萩谷麻衣子さん
弁護士
結婚・遺産相続などの一般民事や、企業法務を数多く担当

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